1/6土星探査機「カッシーニ」は2015年、赤外線装置を使って土星衛星タイタンの厚い大気を透視し、タイタンの表面を覗き見た。暗い色の領域は、地球や火星にあるのと同じような砂丘だ。そして、明るい色の領域は、岩石物質に囲まれた液体の湖だ。PHOTOGRAPH BY NASA/JPL/UNIVERSITY OF ARIZONA/UNIVERSITY OF IDAHO 2/6カッシーニは17年に、土星の大気のなかで燃え尽きたが、研究者たちはいまでも、カッシーニが送ってきたデータを解析している。NASAは19年11月19日、史上初めて作成されたタイタン表面の地質図を公開した。紫の領域は、前の写真の暗い領域と一致しており、砂丘のある領域だ。青は湖を示している。大部分を占める青緑色の領域は、すべて平坦で開けた平原だ。ILLUSTRATION BY NASA/JPL-CALTECH/ASU 3/6この写真は、「シャングリラ」と呼ばれるタイタンの砂丘地帯をクローズアップしたものだ。1本1本の黒い線が、砂丘ひとつひとつにあたる。この砂丘の線が、まるで虫が這うようにこの地域全体に広がり、木の年輪のような模様を描いている。写真の明るいスポットは、山と崖だ。風が吹くと、砂が舞い上がって渓谷を動きまわり、このような入り組んだ模様ができあがる。PHOTOGRAPH BY NASA/JPL-CALTECH/ASI 4/613年間にわたって土星探査を行ったカッシーニが送ってきた数々の写真は、息をのむほど見事なものだ。ただでさえ美しい土星が、おとぎ話から飛び出した何かのように見えることもある。この写真には、土星とその環の隣に浮かぶタイタンが写っている。真横から見たこの角度のおかげで、土星の大きさだけでなく、環の薄さも実感できる。PHOTOGRAPH BY NASA/JPL-CALTECH/SPACE SCIENCE INSTITUTE 5/6タイタン表面のこの細長い領域は、「ラビリンス」地帯と呼ばれている。ここでは、同名の映画に出演したデヴィッド・ボウイは見つけられないかもしれないが、長い年月のあいだに液体メタンの川に削られた表面の名残を見ることができる。左側の暗い領域は、メタンの雨によって表面がゆっくり変形してできた可能性があると科学者たちは考えている。PHOTOGRAPH BY NASA/JPL-CALTECH/ASI 6/617年9月15日、土星に突入する死の進路に入る前に、カッシーニは最後に1枚、タイタンの写真を撮影した。このクローズアップ写真は、ピントがぼけているわけではない。こんなふうに見えるのは、タイタンの大気がとても厚くて濁っているからだ。探査機カッシーニは、地球とはまったく違う、ワクワクするほど興味深いタイタンの世界を史上初めて垣間見せてくれた。そして、カッシーニの数々の発見は、タイタンに焦点を絞ったミッションでこの衛星を再訪するじゅうぶんな理由になるものだった。PHOTOGRAPH BY NASA/JPL-CALTECH/SPACE SCIENCE INSTITUTE

タイタンは土星の最大にして最も奇妙な衛星だ。むしろ衛星というより、惑星のように見える。タイタンは太陽系では唯一の「大気をもつ衛星」であり、重力の大きさは地球と同じくらいだ。湖や川まである。ただし、タイタンの「水路」は、実際には液体のメタンとエタンでできている(液体なのは、表面が約マイナス179℃と極めて低温だからだ)。

「大気も川も湖もある! 謎と刺激に満ちた土星の衛星「タイタン」の姿:今週の宇宙ギャラリー」の写真・リンク付きの記事はこちら

おそらくタイタンで最も興味をそそられる点は、炭化水素などの有機化合物が存在していることだろう。それはつまり、この衛星には生命の構成材料になる物質があるということだ。しかし、タイタンに何らかの生命体が存在しているとしても、わたしたちの想像とはかけ離れた姿をしている可能性が高いだろう。

この特別な衛星に接近した探査機は、現在までに1基だけだ。米航空宇宙局(NASA)による、その「カッシーニ」ミッションは、2017年9月に終了している。

NASAは24年に「ドラゴンフライ」と呼ばれるミッションで、探査機をタイタンに送り込む計画だ。両側にそれぞれ4枚の回転翼を備えた着陸機がタイタンの表面に下降し、居住可能性の証拠を探して飛び回ることになっている。

あなたの次のミッションは? それはこちらの『WIRED』の宇宙写真コレクションで、ほかの写真をチェックすることだ。