[新型コロナ] 和子牛価格 5年ぶり65万円割れ 需要減で枝肉低迷 繁殖経営 苦境に

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 和牛子牛価格の下落が止まらない。新型コロナウイルスの拡大による枝肉相場不振のあおりで急落した3月に続き、4月も多くの市場で下落。5年ぶりに1頭平均価格が65万円を割り込んだ。産地では、せり場での感染防止対策の徹底による取引の維持や、和牛肉の販促活動などに努めるが、苦しい状況だ。生産現場は先が見えず、和牛生産の基盤が揺らいでいる。

 JA全農がまとめた全国の主要家畜市場の取引結果(21日時点)によると、1頭平均価格は前月比5%、前年同月比21%安の64万2229円。昨年12月以降、5カ月連続で前月を下回っている。前月割れした30市場のうち9市場が50万円台となるなど、落ち込みは深刻だ。

 昨年の1頭当たりの年間平均価格で全国トップとなった兵庫県の但馬家畜市場は、前月比18%、前年同月比43%安の56万7857円と大きく下げた。枝肉価格の急落に加え、政府の緊急事態宣言発令翌日の開催となったことなどが影響したという。同市場も、換気や消毒など万全の対策を取った上での開催となった。

 岩手県の全農岩手県本部中央家畜市場は、前月比8%安の56万2983円となった。マスクの装着や手指の消毒を促し、せり場への入場を原則購買者に限るなど、感染防止対策を徹底。購買者の数や上場頭数などに変動はなかったが、枝肉価格の下落が響いた。

 市場関係者は「生産基盤対策が急務となっている中で、この相場が続くと基盤維持に影響が出かねない」と危惧する。

 両県を含め全国の産地では、肥育農家の資金源となる枝肉相場の回復に向け、和牛肉の販促活動に懸命に動いている。ふるさと納税での特別企画や家庭消費向けのキャンペーンなどを展開し、応援消費の輪も広がる。

 ただ、緊急事態宣言の対象範囲が全国拡大するなど、販売環境は悪化。和牛の枝肉相場(A4、去勢)は4月に入っても1キロ当たり2000円割れの状況が続き、上がる兆しは見えない。東日本の産地関係者は「子牛価格も一気に下がっているので、高齢農家はこれを機に離農しかねない。繁殖農家にも追加の支援策が必要になってくる」と訴える。