昨季途中に引き続き、今季もキャプテンを務める。ゼロックス杯では鮮やかなプレーでチームを勝利に導いた。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 1995年の船出から四半世紀を迎えた今、神戸は大きな変革の渦中にある。長年にわたって受け継がれてきた堅守速攻スタイルから脱却し、自らボールを握るポゼッションサッカーへの移行という挑戦。その中心にいたのは、元スペイン代表のアンドレス・イニエスタである。

 今まで神戸には数々のスーパースターが在籍し、それぞれがひとつの時代を築いてきた。草創期の96年にはデンマークの英雄ミカエル・ラウドルップがレアル・マドリーから移籍加入し、若かりしアンドレス・イニエスタも憧れたドリブルやノールックパスなどの華麗なプレーでクラブをJリーグ昇格へと導いている。

 他にもマルキーニョス、レアンドロ、ペドロ・ジュニオール、ボッティ、ポポ、エステバン、キムナミルなど、神戸の歴史に名を刻む外国籍選手を挙げればキリが無い。ネームバリューで言えば、2002年のワールドカップ日韓大会でブレイクした元トルコ代表のイルハン・マンスズ、元カメルーン代表のパトリック・エムボマ、ローマでプレーしたシンプリシオらも記憶に残る選手だ。

 そして近年では、ダビド・ビジャやルーカス・ポドルスキといった超一流選手も在籍した。神戸のスーパースター列伝はかなり華やかなものと言っていい。

 その中で、イニエスタはやはり別格だ。いや、一線を画す存在といったほうが正しいかもしれない。
 
 なぜなら、ピッチでの異次元なプレーでチームを牽引するだけではなく、チームやクラブの方向性を示すコーディネーター的な側面を有しているからだ。例えるなら、鹿島を常勝軍団へと導いたジーコのような存在かもしれない。

 ジーコとイニエスタを比較すると、いろいろと共通点が浮かび上がってくる。まずは選手としてのキャリアである。

 ジーコはワールドカップに3度出場している。82年大会は、ソクラテス、ファルカン、トニーニョ・セレーゾとともに黄金のカルテットを形成し、「セレソン史上最強」と評されることがあるチームの中心として活躍した。そして母国ブラジルに限らず、世界的に絶大な人気を誇っている。

 鹿島では、93年のJリーグ開幕戦でハットトリックを達成し、同年の天皇杯ではヒールボレーという超絶プレーで日本のファンに強烈なインパクトを残した。
 一方のイニエスタは4度のワールドカップを経験し、10年南アフリカ大会で優勝している。しかもオランダとの決勝戦では自らのゴールで優勝へと導いている。母国スペインにとどまらず、世界での人気を不動のものにした。

 そして神戸では、昨季24節の鳥栖戦で見せた、50メートル以上先の古橋亨梧へのワンタッチボレーパスなどワールドクラスのプレーを連発。しかも、まだ現役バリバリ。まだまだ強烈なインパクトを残してくれることは間違いないだろう。

 次に似ている点を挙げると、人望が厚く、日本に一流選手を呼べる点だ。鹿島にブラジル代表のレオナルドやジョルジーニョといったビッグネームを呼べたのは、ジーコや、その兄エドゥの存在が大きかったと言われている。クオリティの高い選手と一緒にプレーすることで、鹿島の日本人選手の質が向上し、結果としてチームの底上げに成功した。そして、勝ち続けることで勝者のメンタリティのようなものがクラブに根付くことになった。

 神戸ではイニエスタの加入によって、似たような現象が起こっている。ビジャやセルジ・サンペール、ベルギー代表のトーマス・フェルマーレンらスター選手がイニエスタの影響もあって神戸へやってきた。イニエスタ加入の1年前に加わったルーカス・ポドルスキを含め、ワールドクラスの選手たちと練習を繰り返し、試合を重ねることで日本人選手のクオリティはみるみると向上している。ボールを扱うスキルが上がったことで、プレーの判断スピードも高まり、チーム全体として余裕が出てきた。その環境下で、古橋や小川慶治朗、安井拓也といった若い選手が覚醒し、山口蛍、田中順也ら中堅からベテランも新境地を開いている。
 
 20年には元日の天皇杯決勝を制し、2月のゼロックススーパーカップも勝利。タイトルを積み上げることで選手たちにも確固たる自信が芽生えた。まだ途上だが、確実に神戸は常勝軍団へと成長している。

「私個人として、ヴィッセル神戸をJリーグの中でベストなチームにしたいと思っている。だから、日本にやってきた」

 これは、イニエスタが18年の最終節を前に合同記者会見で述べたコメントだ。19年シーズンの神戸は相次ぐ監督交代などで大いに揺れたが、その中で彼はキャプテンに就任し、ベストなチームにしたいという信念を貫いてきた。今は新型コロナウイルスという危機に直面し、プレーができない状況だが、彼のその想いがブレることはないだろう。

取材・文●白井邦彦(フリーライター)

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