若者を脅かす「ストーカーアプリ」の実態とは?(EKAKI/PIXTA)

「最近、スマホの充電の減りが異常に早い。買い替えどきかも」と大学生の娘に言われてスマホを確認してみたところ、ストーカーアプリを発見したという話を友人から聞いた。彼女の娘によると、普段からスマホにはロックをかけておらず、「スマホを置きっぱなしにしていたことがある。元カレに入れられたのかもしれない」そうだ。

「ストーカーアプリ(ストーカーウェア)」は思った以上に広く使われている。ストーカーアプリとは、ユーザーの同意なくスマートフォンに勝手にインストールされ、位置情報や通話記録、メッセージなどの情報を外部に送信するアプリのことだ。

アメリカのノートンライフロック社が行った2020年2月の調査によると、アメリカ人の10人に1人が現在のパートナーや元交際相手に対してストーカーアプリを仕込んだことがあるという。一方、若者の間では、SNSなどの一般的なアプリをストーカーアプリとして使う例も多いようだ。

なぜストーカーアプリが若者を中心に普及したのか? ストーカーアプリの利用実態とリスク、対策までを解説していきたい。

もともとは「盗難防止」のためのアプリ

ストーカーアプリは、子どもの見守りや盗難防止のためのツールとして販売されていることが多い。しかし実際は、パートナーや子ども、従業員などを監視するために使われることが多いようだ。

2019年10月、米国連邦取引委員会(FTC)は、Retina-X Studiosが販売する「MobileSpy(モバイルスパイ)」「PhoneSheriff(フォンシェリフ)」「Teen Shield(ティーンシールド)」の3つのアプリケーションの販売禁止を命じたが、これらもストーカーアプリだ。

実は、ユーザーの情報を収集するWeb サービスやアプリは珍しくはない。たとえば位置情報や検索履歴などを収集するGoogleが代表的なものだろう。Googleは収集した位置情報や検索履歴を元に検索機能などの精度向上に努めており、もちろん情報収集にあたっては事前にユーザーの同意を求めている。

一方のストーカーアプリは、基本的にユーザーから同意を得ようとしない。無断で情報を収集し、外部に送信するうえ、なんのメリットももたらさない。

なお、前述のノートンライフロック社の調査によると、ストーカーアプリの利用者は、女性よりも男性が2倍以上多いという。また、大人世代よりも若者世代のほうが、オンラインでストーカー行為することを悪いことととらえない傾向にあり、調査に参加した18〜34歳の45%が無害ととらえていたという。

一般の人であれば、パートナーや子どもの行動が気になっても、直接質問するくらいで、必要以上に詮索はしないだろう。ところが、「子どもやパートナー、従業員を支配したい」「行動をすべて監視したい」という人たちは想像以上にいる。

2011年に話題となった、「カレログ」というAndroidアプリを覚えているだろうか。「彼氏追跡情報サービス」の名目で、スマホ上のメール、SMS、ウェブ閲覧履歴、通話記録、GPSによる位置情報までを取得していたのだ。当時の総務相は、同サービスに対して「総務省が個人情報保護の観点から問題点を検討する」とコメントした。

なぜ若者はストーカーアプリを使用するのか?

カレログは商用アプリだったが、ストーカーアプリと機能はほとんど同じだ。商用アプリやソフトウェアもストーカーアプリになりうる。たとえば、若者の間では「Zenly」が使われることが多い。

位置共有アプリであるZenlyを使って友達同士になれば相手の現在地が正確に把握できるため、行動がほぼ完全に把握できてしまう。高校生などの間で浮気防止のために恋人に無理やり入れさせられるケースは複数耳にしている。

過去に取材したある女子高生からは「友だちが嫉妬深い彼氏に(Zenlyを)入れさせられて、居場所が全部筒抜けになってめんどくさいらしい」と聞いた。同アプリには、居場所をあいまいにしたり、居場所を固定して示す機能もある。

また別の女子高生は、TwitterやInstagramなどの複数のSNSを駆使して、好きな人の情報を集めたという。

「サッカー好きとか肉好きとかの情報をチェックして、自分も同じものを好きとアピールしたことがある。親しい女の子とか元カノの情報を集めて、どういうタイプが好きか調べたこともある」

今はSNSなどで自分の個人情報を明かすのが一般的になってきた。複数のSNSを照らし合わせればかなりの個人情報をつかむことができる。欲求を容易に満たす方法が目の前にあり、簡単に実行できるとしたらどうだろう。若者たちがオンラインストーカーにあまり抵抗がないのは、ある意味当然と言えるのではないか。

ストーカーアプリ被害を防ぐ方法

ストーカーアプリの被害を防ぐためには、いくつかの方法がある。まず、定期的に不審なアプリがインストールされていないか確認することだ。そのほか「バッテリーの消費が早い」「スマホの動作が遅い」「スマホ電源を落とせない」などの兆候も要注意だ。

しかし、それだけでは、スマホ自体の不具合と考えてなかなか気づかない人も多いはず。実は、ストーカーアプリはセキュリティーソフトでは検出されないことが多い。

というのもストーカーアプリは一部の国では合法であり、多くの国ではグレーとされているからだ。そもそも合法に配信されているソフトウェアをセキュリティー製品が「悪意あるソフトウェア」と判定すれば、違法になりかねない。

もしアプリを削除できたとしても、問題が起きる可能性がある。ストーカーアプリを仕込んだ側からは、スマホから削除するとすぐにわかってしまうため、削除をきっかけに暴力行為などにつながるケースも少なくないという。どうしても削除したい場合は警察や信頼できる大人、友人に相談することも考えたほうがいい。

ストーカーアプリは、他人に勝手にインストールされるか、あるいはウェブサイトへの誘導などでインストールされることが多い。このような被害を防ぐためには、一定時間スマホに触れないでいるとロックがかかる機能、スクリーンロックをかけておくといい。同時に、不審なURLなどは安易にタップしないことを推奨する。