昨季は長谷川健太監督の下でスタメンを外される時期もあった。守備を意識しすぎるあまり、持ち前のダイナミックさを欠いてしまったのだ。

それでも、室屋はめげなかった。高校、大学で培った強靭なメンタリティを武器にして前へ、前へと突き進み、気づけばクラブで不動の地位を確立していた。

 17年12月9日の北朝鮮戦(E−1選手権)で初キャップを刻んだ日本代表でも、森保一監督下ではレギュラーではないものメンバーの常連になりつつあるのだ。そんな活躍を受け、神川は目を細める。

「今はユニホームもほとんど引っ張ってないんじゃないかな(笑)。人間的にも好青年だし、これからの成長も楽しみです」
 
 神川と交流がある栗田も言葉を継ぐ。

「室屋のスタイルは長谷川監督のアグレッシブなサッカーにぴったり。明治大の卒業生らしく『強い個』を見せてくれていますし、あのタイミングでプロを選択させて良かったと思います」

 そして、浅利も声を弾ませながらエールを送る。

「日本代表ではこれからどうレギュラー争いに加わっていくか楽しみです。本人はいずれ海外でやりたいとも言っているので、是非、それを実現してもらいたいです」

 何人もの恩師に支えられた室屋は彼らへの感謝の気持ちを忘れない。

「根底にあるのは、楽しむこと。エリートでは決してない自分がここまでサッカーを続けてこられたのはやっぱり楽しいから。だからこそ、いくつもの困難を乗り越えられた。負けず嫌いという性格も重なって、一つひとつ階段を上れたことは、いま冷静に考えてみると凄いことだと思うし、僕に携わってくれた人たちみんなに感謝したい」

 今の自分があるのはみんなのおかげ。ひとりの力ではここまで辿り着けなかったことを誰より理解しているのは、なにより室屋自身である。(了/文中敬称略)

取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)

※『サッカーダイジェスト』2019年8月22日号より転載。一部加筆・修正
【PHOTO】日本の至宝・久保建英の輝き続ける活躍を厳選ギャラリーでお届け!2017〜2020