18年4月の磐田戦でイニエスタがJ初ゴール。まさに魔術のような動きだった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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 いつも試合中は冷静に戦況を眺め、選手に採点をつけていくタイプだ。ゴールが生まれても滅多なことでは表情を変えない。少なくとも自分ではそう思っている。

 しかし、これまで思わず立ち上がったゴールがいくつかある。

 そのうちのひとつが、2018年8月11日、アンドレス・イニエスタのJ初ゴールだ。

 ジュビロ磐田をホームのノエビアスタジアムに迎えた試合。スペインの至宝が輝きを放ったのは15分だった。この日“初共演”となったルーカス・ポドルスキから鋭いスルーパスを受けたイニエスタは、ため息の出るような鮮やかなターンでDFを振り切ると、巧みなタッチで飛び出てきたGKもかわし、冷静に右足のシュートでネットを揺らすのだ。

 魔術でも見せられているかのようだった。その一連の動きは、まったく無駄がなく、まさにワールドクラス。見事なまでのゴールに、満員に近い24,731人が集まったノエビアスタジアムのボルテージは、最高潮になった。

 その瞬間、気づいたら記者席から腰を浮かせて唸っていた。

 試合後、華麗なターンの餌食になった大井健太郎はこう振り返っていた。

「深かったですね……。足が届くかと思いましたけど、やっぱり上手かった。もう少し前目に流れるトラップもあるけど、しっかりと足もとに深めに入って……上手かったって僕が言うのもなんですけど、やっぱり凄かったな」。

 そう語った時の顔は今も鮮明に脳裏に焼き付いている。単純な悔しさやショックだけでなく、驚きや感嘆といった様々な感情が混じり合ったような、なんとも言えない表情だった。
 
 観ていても凄いが、対峙したらなお凄い。

 昨季終盤にサッカーダイジェスト内で行なった「現役Jリーガーが選ぶベストプレーヤー」企画で、イニエスタは3位。1位の仲川輝人、2位のチアゴ・マルチンス、4位のマルコス・ジュニオールと、チャンピオンの横浜勢に割って入った。

 その企画でイニエスタを選んだ理由として多かったのがまさに、実際にマッチアップして改めて凄さを感じたというものだ。

「一緒にピッチに立たないと分からない凄さがある」(小塚和季/大分)

「空間を使うプレーが上手く、4手先くらいを読んで試合を組み立てている。状況の変化にも対応できる」(水沼宏太/当時C大阪、現・横浜)

「日本ではお目にかかれないレベル」(三浦弦太/G大阪)

「絶対にボールを奪われないキープ色が凄い。対戦していて圧巻だった」(広瀬陸斗/当時横浜、現・鹿島)

「マッチアップして凄さが分かる」(岩田智輝/大分)

「次元が違うなと感じた」(大野和成/湘南)

 スタンドにもピッチ上にも魔法にかけてしまうスペインの至宝。そのプレーを日本で観られるのは幸せだ。現在はリーグが延期中で、極上のショーを見られないのは残念だが、再開したら、再びスタジアムに魔法をかけてくれるだろう。

取材・文●多田哲平(サッカーダイジェスト編集部)