3月頭から開始した臨時休校を受け、我が家は毎日朝から娘を学童へ送り出すこととなった。終日学童となると避けられない毎朝のお弁当作り。

予定では新年度開始の4月上旬まで1ヵ月あまり……と思うと気が遠くなりそうなところ、「そういえば」と本棚の1冊に手を伸ばし、読み返すことにした。


『鬼弁〜強面パンクロッカーの弁当奮闘記〜』(ぴあ)は、ひとりのお父さんがクローズドなSNSで公開していた息子のためのお弁当記録を書籍化したもの。

そのお父さんというのは、パンクバンド、BRAHMANやアコースティックバンドOAUのフロントマンで知られるTOSHI-LOW氏。型破りでユニークで、かつ美味しそうなお弁当の数々と、なかなか知ることができないミュージシャンの素顔が垣間見えるエッセイのバランスが秀逸で、すべての子育て家庭にオススメしたい内容だ。

書籍の発売当時、ご縁があってTOSHI-LOW氏とお話しさせてもらう機会をいただいたのだが、この状況下で改めてインタビューをオファー。お弁当や食事の捉え方から、有事の際の子どもとの向き合い方まで、話題は多方面に広がった。
(※このインタビューは3月23日に行われたものです)

■買ってきたものを入れてもいい。「お弁当はこうあらねば」なんて思わなくていいんじゃない?


――『鬼弁』がきっかけで、我が家も夫がお弁当作りに興味を持ってくれて、今は一日交替で作っているんです。TOSHI-LOWさんにインスパイアされて、麺とかホットドッグを作っているのを見ていると、私も「お弁当ってこれくらい自由でいいんだな」って思えるようになりました。

TOSHI-LOW:「こんな物、お弁当に入れないでしょ」っていうのは大人の価値観であって、子どもは気にしてないと思うんだよね。「こんなお弁当見られたら恥ずかしい」っていうのは大人が思っているだけで。

――ちょうど去年の今頃、お弁当のレシピ本を買い込んでいたんですけど、「お米は夜のうちに洗っておいて、朝炊きましょう」とか「卵を焼いたら金網の上で冷ましましょう」とか「こうあるべき」論が多くて途方に暮れていました。

TOSHI-LOW:そりゃ美味しさを追求したらそうなるんだろうけど、金網とかUFCじゃないんだから、どの家庭にもあるものじゃないでしょ(笑) でも、お弁当とはこうあらねばっていうイメージがあるんだろうね。

――いきなり、格闘技ネタが出た!(※TOSHI-LOW氏は自らキックボクシングの経験もある格闘技好き) 「お弁当」ってひとつの食文化として成り立っているから、自分も含めて構えちゃう人は多い気がします。

TOSHI-LOW:全部自分で手作りしなきゃいけないって思っている人は大変なんじゃないかな。俺は、自分が作る日だって分かってるのに、朝まで飲んでて「やべえ、弁当作らなきゃ!」って急いで帰ったことも何度もあって。で、飲み屋でポテトサラダとかウインナーとかをもらってきて、弁当に入れてた。

今はハンバーグだってなんだって安くて美味しいものがコンビニでも売ってるし、「冷凍食品をうまく活用しましょう」とか言いたいわけじゃなくて、何かひとつ買ってきて、晩ごはんの残りをひとつ入れて、あとは朝に隙間を埋めるものを作るくらいでいいんじゃないって思うけどね。

▼『鬼弁』よりホットドッグ弁当

▼筆者宅のホットドッグ弁当(夫作)

――冷凍食品ってすごいクオリティ高い食品なのに、たまに「お弁当は冷食NG」っていうところもあるんですよね。

TOSHI-LOW:忙しい人たちが時間の余裕を持てるようにって冷凍食品が発展したはずなのに、愛情として認められないとか使っちゃいけないなんてナンセンスだよね。「弁当=お母さんが作ったもの」なんだったら、お父さんが作ったらダメですってことにもなっちゃうし。

むしろ、子どもは冷凍食品なら「やったー!」って思うんじゃないかな。子どもの頃、冷凍のポテトとか買ってもらいたいって思わなかった? なかなか普段買ってもらえないじゃない。

――分かります。私の実家も、あまり惣菜とか買う家じゃなかったから、たまに遠くのスーパーに行ったときだけ買ってもらえたりするのが、すごくスペシャル感ありました。

TOSHI-LOW:そうだよね。俺だって子どもの立場だったら、弁当は毎日石井のミートボールがいいよ。今でもあれが一番美味しいと思ってるし。あれ以外要らないって言うな。

■偏食も少食も、目の前の子どもを見ていれば「そういう時期」って思えるはず


TOSHI-LOW氏(撮影 西槇太一)

――形式に囚われなくていいとは言いつつ、小さいうちは「食べる」と「寝る」で親は一喜一憂しますよね。それしか基準がないってことなのかもしれないけど、周りでも子どもの偏食と少食で困っている親御さんが多いです。

TOSHI-LOW:それはあるかもね。でも、小さいときって食べる日と食べない日でムラがあったり、同じものばっかり食べたがったりするから、お弁当もつまらなくなっちゃうよね。

俺自身も、二十歳過ぎてから味覚が変わったから、それまでは好き嫌いあってもいいと思うし、そもそも1日3食食べなきゃいけないってことが疑わしいと思ってる。もし3食食べなきゃ死ぬんだったら、とっくの昔に人間って絶滅してるはずでしょ? 体ってうまくできていて、本当はお腹へるまで食べなくてもいいはずなのに、食べ物や弁当の決まり事があるだけなんだもん。

この食べ物が体に良いってテレビで言われると、次の日売り切れるようなことがよくあるけど、それも10年経ったら「そんなわけない」みたいな話、ザラにあるじゃない? だから、その決まり事も栄養学とか常識とか、変わっていくものなんだよね。そういうものを全部取っ払った上で、目の前にいる子どもが何を食べたいのかなって見ていれば、「ああ、そりゃこういうのばっかり食べたい時期なんだな」って思えるんじゃない?

子どものときだけが人生じゃないし、生き延びれば人生は大きくフルでひとつだから、たかが一食に対して悩む必要はまったくないよ。そりゃ一個一個の積み重ねだっていうかもしれないけど、そんな一個の弁当で病気になんてならないし。

――でも、その時は「そんな時もあるよ」って言われてもそのループから抜け出せないくらい視野が狭くなっているんですよね。だから自分で伏線を回収していくしかないのかも。

TOSHI-LOW:経験が浅い人は苦労するものだし、何人も育ててきた上の世代の言うこともごもっともだなって事が多いけど、その時代とは常識も科学も変わってるからね。だから今、子育てしている世代も、色んな人と話をして視野を大きく広げていく必要があるけど、煽るようなことが多いよね、なぜなら煽って物を売りたい世の中に住んでるから。
って、お弁当作りから、話が広がってきちゃったけど(笑)

【インタビュー後編】
先行きの見えない今、親が子どもたちに伝えられることって何?

真貝 友香(しんがい ゆか)
ソフトウェア開発職、携帯向け音楽配信事業にて社内SEを経験した後、マーケティング業務に従事。高校生からOLまで女性をターゲットにしたリサーチをメインに調査・分析業務を行う。現在は夫・2012年12月生まれの娘と都内在住。