好タレント揃いのFC東京。なかでも、この10年で活躍したのは…。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

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 FC東京で、過去10年のベストプレーヤーは誰か。そう訊かれて真っ先に思い浮かぶのは、あのCBだ。

 インパクトだけで選ぶなら、間違いなく武藤嘉紀(現ニューカッスル)。ルーキーイヤーの2014年シーズンに4−3−1−2システムのFWとして大活躍。リーグ戦でチーム最多の13ゴールを挙げてJ公式のベストイレブンに選ばれると、翌シーズンも第1ステージだけで10得点とエース級の働きを披露した。その後(15年夏)ドイツのマインツへ移籍するが、プロとして在籍期間がわずか1年半だったとはいえ、力強さと粘り強さを兼ね備えたドリブルからのフィニッシュワークは今なおFC東京のファン・サポーターの記憶に深く刻まれているに違いない。

 当時の武藤フィーバーはJリーグの中でセンセーショナルな出来事であり、騒がれるだけあって”魅せるプレー“も心得ていた。なにより素晴らしかったのは、14年11月2日の名古屋戦で突き刺した同点弾。田中マルクス闘莉王にフィジカルで競り勝ち、そのままドリブルでペナルティエリアの左サイドのほうに持ち込み、そこから腰をグイッとひねって左足でゴール右隅に突き刺した一撃は、エンターテインメントと言えるものだった。

 そんな武藤に比べると地味だが、長年の貢献という意味ではMFの東慶悟のほうが上だろう。13年に大宮からFC東京に加入すると、ランコ・ポポヴィッチ、マッシモ・フィッカデンティ、城福浩、長谷川健太監督などどの指揮官の下でもリーグ戦で20試合に出場。無尽蔵のスタミナ、正確なパスワークを主武器に中盤を引き締め、18年シーズンと19年シーズンはJ1でいずれもチーム最多の6アシストを決めた。また、昨季、今季と長谷川監督からキャプテンを任されているところからは信頼の厚さが窺える。
 
 同じMFでは橋本拳人の働きも見逃せない。ただ、彼がFC東京で主力として活躍しはじめたのは2016年シーズン以降。この2〜3年の働きぶりは称賛に値するが、「過去10年のベストプレーヤーか」と言われれば強く頷けない。

 東以上に、長く、コンスタントなパフォーマンスを披露しているのはCBの森重真人だ。17年シーズンこそ怪我で長期の負傷離脱を余儀なくされたが、大分からFC東京に加わった2010年から基本的に主力の座を守り続けている。

 Jリーグの公式ベストイレブンの選出回数は実に5回(2013〜16、2019)。年を経るごとにラフプレーが減り、より洗練されたCBに進化している印象すらある。実際、チームメイトの東は森重について、次のような評価をしている。

「どんなスタンスで森重選手が(FC東京の)キャプテンをやっていたいかは本人に訊かないと分からないですが、それなりに苦労したはずです。それが今報われているというか、大きな責任を果たしたからこそ森重選手はプレーヤーとしても人間としても成長できたのではないでしょうか。本当に自分のプレーにすごく集中していて、それが試合での好パフォーマンにつながっていると思います」
 
 30歳を過ぎても一流。それを証明したのが昨季のベストイレブン受賞だ。「練習場に早く来て、身体のメンテナンスをしっかりしています。こういう選手がプロの世界で長く活躍できるということを間近で学ばせてもらっています」と大卒ルーキーの紺野和也が言うように、日々のそうした努力がハイパフォーマンスに繋がっている。

 「森重選手の大人の守備がチームに落ち着きを与えています。すごく上手く守っていますよね」と、今季のパース・グローリー(ACLグループステージ第2戦)後に本人に訊いてみた。すると──。
 
「いや、もう30オーバーだし、動くとすぐ疲れちゃいますから(笑)。上手く味方を動かして、無駄な動きを減らさないといけない。まだまだ闘志は衰えていないし、頑張りますよ」

 充実感が溢れるその言葉を聞くかぎり、まだ当分の間ピッチの上で最高のパフォーマンスを見せてくれそうだ。加入当初はカードコレクターでもあったCBが駆け引きを身に付け、味方を動かす術も熟知。東以上にコンスタントに活躍し、昨季の2位躍進で改めて守備者としての凄さを証明した森重こそ、「過去10年のベストプレーヤー」だろう。

文・白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)