感染予防関連商品の旺盛な需要が続いている(写真:masa/PIXTA)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大が止まらない。政府は4月16日夜に開いた対策本部で、東京など7つの都府県以外でも感染が広がっていることから、5月6日までの期間、対象地域を全国に拡大するこを決めた。

恐怖が蔓延する中、マスクや消毒液、ハンドソープといった感染を防ぐ関連商品の需要がより高まっているように感じる。

マスクはいまだに店頭で見かけない

近くのドラッグストアに出向いても、いまだにマスクは陳列されていない。または、陳列されても、すぐさま売り切れている。

筆者は3月上旬に5000万人規模の消費者購買情報を基にした、True Dataのデータベース「ドルフィンアイ」を使って、マスクや消毒液、ハンドソープといったコロナウイルス対策商品の売れ行きを調べた(「マスク、消毒液『実売値』で見る異常な売れ行き」2020年3月4日配信)。

主要な全国のドラッグストアのPOSデータを基にマスク、消毒液、ハンドソープの売れ行きを抽出したところ、今年1月後半以降、これらの商品は異常なほどに販売が膨れ上がったことがわかったが、その後の状況変化についても調べてみた。

直近ここ2年間における、消毒液、マスク、ハンドソープのドラッグストア1店あたり1週間ごとの売り上げ点数をグラフにまとめてみた。

(外部配信先ではグラフを全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

(1)ハンドソープ

まずは、ハンドソープの売り上げ点数を見てみよう。


このところ、インフルエンザ流行時期にも徹底されていなかった手洗いが実施されているように感じる。家族にも、手洗いを徹底するように伝える人たちも多い。また肌感覚として、会社でも、出勤時に手洗いを行う人たちは多い。

ハンドソープの需要も依然として根強い

ハンドソープの販売状況を見てみると、今年1月後半から販売量が増え、2月最終週に需要のピークを迎えている。1店当たりの売り上げ点数をグラフで追うと、昨年同週比4倍程度の売り上げ点数となった。そこから品切れを迎えたのか売り上げ点数はピークアウト。ハンドソープは1つ買ったら、それなりに長く使える。それでも、3月最終週では昨年同時期と比べて2倍程度売れている。需要が落ち着いたと見方もできるが、ドラッグストアでは品切れのところも多く、いまだに供給よりも需要が多い状況が続いている。

(2)殺菌消毒(アルコール消毒等)商品

では、次に殺菌消毒商品はどうだろうか。


筆者の自宅でも、家族が使えるアルコール消毒液はいまだに不足している。ネットで探すと高額な商品のみは買えるようになってきたものの、まだドラッグストアに満足な量があるようには思えない。

この殺菌消毒商品は、1月最終週に販売のピークを迎えている。その後に、需要を完全に満足させられず、品切れが続いている。どの時点と比べるかによって倍率は異なるが、おなじく前年同週比で約6倍。感覚としても、1月最終週に対して、殺菌消毒商品の需要が減ったわけではなく、供給量が少なく、買えない状況が続いている、と思ったほうがよさそうだ。

ところで、殺菌消毒商品が買えなくなってから、ネットでは殺菌消毒用品の自作方法が喧伝されていた。これも、街なかのドラッグストアで買えなくなった事情を反映してのことだろう。

(3)マスク

マスクの状況も同様だ。


これも今年1月下旬に販売量のピークを迎えて、それ以降、旺盛な需要に供給が追いついていない。マスクはそもそも約60億枚の年間需要がある。そのほとんどが中国からの輸入だった。その中国製マスクが入ってきていない。中国が、自国の需要を優先して振り向けたからだ。

現在、国内のマスクメーカーが増産して、異業種からの参入も相次いでいる。さらには、政府が世帯に2枚のマスク配布を決めた。政府は月間6億枚のマスク供給を約束している(なお、この6億枚という数字の厳密さは必要ではない)。

爆発的に増えた需要に対して供給量が全然足らない

それでも、いまだにドラッグストアではマスクの品切れが生じている。概算で、かつて月間5億枚のマスクが必要だったとする(60億枚÷12カ月)。そして現在では、その5倍の需要があるとする。これは2020年1月下旬のマスク販売数が、昨年ピークの約5倍だったことによる。ただし、実際はもっと需要量は多いだろう。あくまで仮定として、控えめな数字を採用した。

需要が5倍とすれば月間25億枚だ。全国民が1カ月に20枚ほど使う計算になる。そうすると、6億枚でも供給量としては足らない。卸売業者の中には通常の10倍を超える需要が発生しているとの見方もあるようだ。実際に、私は今年2月の時点で、4月になってもマスク不足は続くのではないか、とテレビ番組で予想したが、その不幸な予想は当たってしまっている。

とはいえ、日本のドラッグストアを責めるだけではなく、最後に称賛もしておきたい。ドラッグストアの販売単価についてだ。True Dataのデータベース「ドルフィンアイ」を使って調べてみた。グラフ化したのでそれぞれ見てみよう。

<1>ハンドソープ


<2>殺菌消毒(アルコール消毒等)商品


<3>マスク


リアル店舗で過剰な値上げは見られない

結果から言えば、リアル店舗での過剰な値上げは見られない。これは非常事態宣言が発せられてからではなく、以前からの傾向だ。

ハンドソープは平均売価が上がっているが、これは、比較的高額な商品に加え、当カテゴリにも一部含まれるハンドジェル等が売れて全体が上昇していると思われる。殺菌消毒商品は値を戻している。マスクも変わらない(微減しているが、これはたまたま販売されている商品構成が変わったレベルであり、無視できる)。

そう見ると、日本の小売業者はこうした有事、緊急事態にかこつけて便乗値上げはせず、消費者にこれまでと変わらない価格で提供してくれている。これは、大袈裟だが、誇ってもいい事象ではないだろうか。いま、市民が全員で頑張るときだ。そんなときに、必要品の陳列がなかったくらいで店員に怒鳴ったり、詰問したりするのはいただけない。流通側も頑張っている。

必要以上の買い占めはなしにしよう。いまこそ市民生活の倫理が問われている。