3歳牡馬クラシック第1弾となるGI皐月賞(中山・芝2000m)が4月19日に行なわれる。


朝日杯FSを完勝したサリオス

 有力候補に挙げられているのは、デビューから無傷の3連勝でGIを勝っている2頭、コントレイル(牡3歳)とサリオス(牡3歳)だ。前者はGIホープフルS(12月28日/中山・芝2000m)を、後者はGI朝日杯フューチュリティS(12月15日/阪神・芝1600m)を制覇。いずれも、他馬を寄せつけない完勝を続けており、ともに皐月賞にはぶっつけで臨むことになるが、「2強」といった前評判を得ている。

 これに続くのが、前哨戦のGII弥生賞(3月8日/中山・芝2000m)を快勝したサトノフラッグ(牡3歳)だ。デビュー戦こそ苦杯をなめたが、以降は圧倒的な強さを見せつけて、ここまで3連勝。「2強」に割って入る存在として、その評価は急上昇中である。

 ただし、そのほかにもトライアルや注目のステップレースを勝ち上がってきた実力馬がズラリ。どの馬がクラシックで戴冠を果たすのか、素人目にはなかなか読み切れない。

 こうなったら、プロの目に頼るのが一番だろう。そこで今回も、競走馬の分析に長(た)けた元ジョッキーの安藤勝己氏に3歳牡馬の実力診断を依頼。まもなく行なわれる皐月賞、さらには日本ダービー(5月31日/東京・芝2400m)において、どの馬が有望か検証してもらい、独自の視点による「3歳牡馬番付」を選定してもらった――。


横綱:サリオス(牡3歳)
(父ハーツクライ/戦績:3戦3勝)

 大型馬で、スタートはあまり速くない。ゆえに、追っつけ気味に出していくし、追い出してからも、最初はモタモタしている。こうなると、普通は負けパターンの競馬となる。でも、この馬の場合、そこからエンジンがかかると、ググググ〜ンっといった感じで伸びていく。あの、伸び出してからの迫力は半端じゃない。

 それでいて、今はまだ完成途上。この先、もっとよくなれば、もうワンランク上のギアが入りそうな気がする。そういう奥深さを、この馬からは感じられる。

 そうした将来性込みで、この馬が横綱。

 ただ、大きな馬で、シブいところがあるから、現段階では「あれ?」という負け方をすることがあるかもしれない。そういう意味では、本当によくなるのは、ダービーの頃だと思う。

 ハーツクライの子で距離が持つのに、あえてマイル(1600m)戦の朝日杯FSを使ったのは、おそらくダービーを意識してのことではないか。マイルをこなすと、馬が機敏になってくることがあって、この馬がダービーを勝つには、その機敏さが必要だと陣営が判断したからだと思う。

 ダービーが本当に楽しみな存在だ。

大関:コントレイル(牡3歳)
(父ディープインパクト/戦績:3戦3勝)

 有力馬の中でも、最も完成度が高いのがこの馬。競馬がうまいし、騎手にとってはすごく乗りやすいタイプの馬だ。現時点での総合点は、世代トップと言える。

 しかし、伸びしろとなると、どうか。ゼロではないが、そこは他の馬に一歩譲るような気がして、2番手とした。

 ディープインパクトの産駒には、父親に似ているタイプと、そうでないタイプの2つに分かれるけど、この馬は父親にそっくりなタイプの典型。デビュー戦から走れていたし、瞬発力にも見どころがあった。終(しま)いも、カミソリのようにピュッとキレる脚を使う。

 距離は、2400mもこなせるけれど、確実にキレる脚が使えるのは、マイルから2000mぐらい。そして、何よりいいのが、小回りコースでもスッと好位置が取れるところだ。

 とすれば、皐月賞の最有力は、この馬と言えるだろうね。中山のホープフルSを勝っているように、コース適性も高い。

関脇:サトノフラッグ(牡3歳)
(父ディープインパクト/戦績:4戦3勝、着外1回)

 コントレイルとは違って、こちらは父親に似ていないディープインパクト産駒。ディープに似ている子で、しかも走る子は、おおよそ新馬戦から勝って強いところを見せるけど、この馬は初陣で負けているからね。

 父親とは異なり、馬体がゆったりしていて、気性的にもカリカリしていない。その分、長い距離は走れる。ディープみたいにピュッとキレる脚は使えないけど、いい脚を長く使える。過去の馬で言えば、キズナ(2013年のダービー馬)に似たタイプかな。

 前走の弥生賞は、馬場が悪くて「どうかな?」と思って見ていたんだけど、強かったね。この馬のいいところは、どんなレースでもできるところ。流れに合わせて、(好位に)位置を取りにいってもいいし、(後方に)下げてもいい。

 成長力もありそう。ダービーでは、サリオスの最大のライバルになるのではないだろうか。

小結:アドマイヤビルゴ(牡3歳)
(父ディープインパクト/戦績:2戦2勝)

 セレクトセールで5億8000万円(税別)の高値がついた馬で、デビュー前から話題になっていた同馬。ただ、勝ったとはいえ、デビュー戦は大したことはなかった。

 馬体が細くて、大物感もないから、2戦目の若葉S(3月21日/阪神・芝2000m)の前は、「勝ち負けは厳しいだろうな」と見ていた。ところが、実に強い勝ち方をして、正直びっくりしたね。

 道中は3〜4番手でうまく折り合って、追い出した時の反応もよく、終いの脚もすばらしかった。加えて、レースぶりにも余裕があって、時計も優秀(1分58秒6)。すっかり見直した。

 2戦目でガラッと変身して、あれだけのレースができるんだから、この馬には奥がある。牡馬クラシックを面白くさせる馬が登場した感じだ。

 皐月賞をパスするのも、馬格のないこの馬には正解だろう。ダービーでは不気味な存在になると思うよ。

前頭筆頭:マイラプソディ(牡3歳)
(父ハーツクライ/戦績:4戦3勝、着外1回)

 前走のGIII共同通信杯(4着。2月16日/東京・芝1800m)は、ちょっとだらしない感じの惨敗で、評価が落ちてしまったけど、個人的にはまだ見限れないと思っている。

 共同通信杯の時は、馬体が仕上がっていなくて、緩かった。それで、思ったよりも動けなかったんだと思う。

 このレースを除けば、それ以前に勝ったレースはすべて強かった。末脚のいい馬で、いつも「えっ? そんなところから追い出して間に合うの?」という位置からスッ飛んできて、あっさりと勝ってきた。並の馬にはできない芸当だ。

 それに鞍上の武豊騎手が、早い段階から「今年はこの馬でいく」と決めて、その素質を買っていた馬。無視することはできない。あと、この馬もまた、現状では仕上がり途上ゆえ、よくなるのはダービーの頃かな、と思う。

        ◆        ◆        ◆

 今年の牡馬クラシックは、番付上位の「3強」が中心。それに、アドマイヤビルゴがどこまで迫れるか、というのが、基本的な勢力図だろうね。

 ここに挙げた馬以外で面白そうなのは、クリスタルブラック(牡3歳/父キズナ)。この馬が勝ったGIII京成杯(1月19日/中山・芝2000m)の、最後の脚には見どころがあった。地味な存在で人気にはならないだろうけど、「3強」に何かあって、混戦、乱戦になった時、浮上するのは、こういうタイプだと思う。

 そのほか、弥生賞2着のワーケア(牡3歳/父ハーツクライ)とか、トライアルのGIIスプリングS(3月22日/中山・芝1800m)組などは、一枚落ちる印象。クラシックで戴冠を遂げるのは、やはり「3強」に絞られると思う。

安藤勝己(あんどう・かつみ)
1960年3月28日生まれ。愛知県出身。2003年、地方競馬・笠松競馬場から中央競馬(JRA)に移籍。鮮やかな手綱さばきでファンを魅了し、「アンカツ」の愛称で親しまれた。キングカメハメハをはじめ、ダイワメジャー、ダイワスカーレット、ブエナビスタなど、多くの名馬にも騎乗。数々のビッグタイトルを手にした。2013年1月31日、現役を引退。騎手生活通算4464勝、うちJRA通算1111勝(GI=22勝)。現在は競馬評論家として精力的に活動している。