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ハリアー、販売店が売りやすいクルマ

text:Kenji Momota(桃田健史)

トヨタは4月13日、新型ハリアーを発表した。

5月から全店舗全車種併売が始まるトヨタディーラー各社にとって、新型ハリアーは強い味方だ。

トヨタ・ハリアー(上)とトヨタRAV4(下)

フルモデルチェンジまでの車齢の中で、新車販売の直後で一気に売る上げが延びる「新車効果」の後でも、販売台数を安定して維持する、いわゆるロングテールな商品だからだ。

先代モデルが2013年12月発売後、3年目、4年目、さらに5年目でも年販5万台前後をコンスタントに売り、モデル末期の2019年でも4万台を維持してみせた。

日本での売れ筋商品といえば、もちろん軽自動車とミニバンだ。一方で、SUVモデルはブームによる販売数の浮き沈みが大きく、人気が長続きしない傾向がある。

そうした常識が、ハリアーには通用しないのだ。

なぜ、ハリアーは売れるのか?

ハリアー人気 背景にライバルの不在

最大の理由は、ライバルがいないからだ。だから、ディーラーも売りやすいのだ。

自動車メディアでは、競合他社の比較試乗記を掲載するものだが、ハリアーはいつもSUV各モデルのなかで「浮いた存在」に見える。

トヨタ・ハリアー(2020年モデル)

つまり、ハリアーは独自性が強いSUVなのだ。

背景にあるのは、これまで東南アジアなど一部への輸出があった以外、「ほぼ日本専用車」であることだ。日本の技術者とデザイナーが、日本市場を最優先で考えて作ったSUVである。

ハリアーの独自性、新型なって、さらに際立っているようだ。

デザイン手法、日本人の心を狙い討ち

都会派SUVで、同じ価格帯となると、ハリアーのライバルは、ホンダ「CR-V」、マツダ「CX-5」「CX-8」などがある。

だが、これら各モデルはアメリカ市場を意識した世界標準車である。

同じ価格帯の都会派SUV。左上から時計回りにトヨタ・ハリアー/ホンダCR-V/マツダCX-8/マツダCX-5。

トヨタは「他のSUVと一線を画すフォルムは、流麗でスタイリッシュ」と説明する。

少々意地悪な表現をすると、ハリアーは「日本人の心をくすぐる、価格以上に高そうに見えるクルマ」であることが、日本のユーザーから安定した支持を得てきた大きな理由だと思う。

重要なことは、日本人の感性に訴える、上質さ、エレガントさ、華麗さをしっかりと描くことだ。

SUV王国のアメリカや、SUVに対して強烈なインパクトを求める中国を意識することなく、日本人好みを貫く。

トヨタは「ハリアーらしい躍動感」と「シンプルな美しさ」という表現をする。

インテリアでも同様に、日本人が高級車に求める「大人のさりげないセンス」を大切にした。

この「さりげなさ」という微妙な言葉こそ、日本人が高級なモノや、高級なコトも求める感性である。

マツダの魂動デザインとは、目指す方向が違う。

世界市場向けレクサスでも、こうした日本人ならではのデザイン発想を実車に盛り込んでいるが、「ほぼ日本専用車」のハリアーは、ダイレクトに日本人の感性に訴えるデザイン手法がとれる。

気になるのは、もちろん「乗り味」

現時点(2020年4月中旬)では、新型ハリアーの報道陣向け試乗会の予定が確定しておらず、プロトタイプを含めて実走できていない。

だからこそ、先代から「乗り味」がどういう方向へ進化したのかが、気になるところだ。

先代トヨタ・ハリアー(2013年モデル)

こうした思いを持つ、先代ハリアー・オーナーも多いのではないだろうか。

そもそも、ハリアーのウリは上質な乗り味だった。

時計の針を少し戻すと、90年代後半に登場した初代ハリアーは、アメリカで使われ始めていた、乗用車のプラットフォームを活用したクロスオーバーSUVとして、乗り味の良さが世界各地で絶賛されていた。

当時、アメリカではレクサスRXを名乗り、レクサス創世記の稼ぎ頭となった。

欧米各社は、レクサスRX(ハリアー)をベンチマークとして、クロスオーバーSUVの走りと乗り味の上質化を進めていった。

一方、3代目からレクサスRXとは別の道、”ほぼ日本専用車”を歩み始めたハリアーは、デザイン優先の都会派SUVというイメージが強まった。

そうした中で、ハイブリッド、ターボとパワートレインが拡充するスピードが、車体の改良を少し追い越してしまった印象がある。

見方を変えると、新型ハリアーは新型車体TNGAの効果をはっきりと感じ取れるはずだ。

乗り味の上質さは、先代比で少なくとも2段階上がると予想される。

ハリアーとRAV4 比較対象になる?

新型ハリアーで、走りの比較対象として挙げられるのは当然、RAV4だ。

ボディサイズは、ハリアーが全長で140mm長く、全幅が同値、全高が25mm低く、ホイールベースは2690mmで同じ。

トヨタ・ハリアー(上)とRAV4(下)。プラットフォーム「GA-K」を共有する。エンジンと駆動方式も同じ。

2モデルは基本的にプラットフォーム「GA-K」を共有する。

エンジンと駆動方式も、直噴直列4気筒2L(M20A-FKS)がFFと4WD、またハイブリッド(A25A-FXS)はFFと後輪をモーター駆動するE-Four採用と、2モデルは同じだ。

となれば、新型ハリアーの乗り味は、おのずと連想できるはずだ。

だが、乗り味のセッティングが、かなり違うのではないだろうか。

なぜならば、2モデルの開発総括者は同じで、彼は常々、「ハリアーとRAV4はまったく性格の違うクルマ」という点を強調しているからだ。

RAV4がオフロードを真剣に攻められるクルマに仕上げたからには、新型ハリアーはオンロードで極めて上質な走りになっていなくてはおかしい。

高度運転支援システム「トヨタ・セーフティ・センス」の最新バージョンの味付けも、新型ハリアーらしい走りに深く関係するはずだ。

ハリアー道を極める、新型ハリアーの乗り味、大いに期待したい。