永井秀樹 ヴェルディ再建への道
トップチーム監督編(13)

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 新型コロナウイルスの感染拡大に伴いリーグ戦を中断しているJリーグは4月3日、臨時実行委員会を開き、4月下旬から順次再開予定だった公式戦(4月25日/J3。5月2日/J2。5月9日/J1)を白紙に戻すことを発表した。


サッカー人として何ができるか考えて自宅で過ごしている永井秀樹監督

 7日には、東京都など大都市圏を中心に新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言が発令されるなど、スポーツに限らず、今は社会全体が出口の見えない事態に不安を抱いている。

 東京ヴェルディは、東京都の小池百合子知事による、最初の外出自粛要請が出された3月27日(金)を最後に活動休止。当初は4月6日(月)に練習再開を予定していたが、その後のJリーグの再開再延長発表を受け、活動休止期間を4月19日まで延長することを決定した。

 Jリーグに限らず、プロスポーツ界全体が存続さえ危ぶまれる危機的状況に陥りかけている今、永井秀樹は現場をまとめる”監督”という立場で何を思い、過ごしているのか聞いてみた。

――誰もが初めて経験するこの状況を、監督としてはどう受け止めていますか?

永井 最初にJリーグの休止が発表された頃は、新型コロナウイルス感染に関する報道もそこまで深刻なものではなかったので、自分自身も『ある程度のところで収まるだろう』と安易に考えていた部分もありました。選手にも「みんなが休んでいる間にもっと練習するぞ」と話し、休止期間中に短期キャンプを開催するなどして、チーム全体の士気を高めることに一生懸命でした。

 ただ、今はサッカーよりも、感染拡大抑止のために何ができるかを最優先しなければいけない。4月に入ってからは、個人的に他クラブの監督とも連絡を取り合い、情報収集してきました。特に、同じ東京にホームタウンを置くクラブであり、最も尊敬する指導者のひとりでもある長谷川健太監督(FC東京)には、いろいろとご意見を伺いました。

 サッカーよりも『健康・安全最優先で危機克服を目指す』という考えは同じで、やはり東京のクラブということで、東京都の意向は早い段階から気にされていたようです。長谷川監督とお話をして、カテゴリーに関係なく、Jリーグ全体が意識を持ち、社会のために何ができるかを真剣に考えていることを改めて確認できました。クラブの垣根を越えて、Jリーグ全体で今は『競争』ではなく『共存』を第一優先に、少しでも社会に貢献できることを考えていると、あらためて実感しました。

――スポーツ界に限らず、出口の見えない状態に誰もが不安を覚えています。

永井 本当に先が想像できないというか……。でも乗り越えないといけないし、みんなで力を合わせるときです。自分がユース監督時代から、選手に言い続けているのは、「仲間のためにプレーすること」「チームはファミリー」ということ。社会のためにできること、仲間のためにできることを、少しでもいいから考え続けることが大事。

 この先、もしかしたら自分たちの仲間の中から感染者が出てしまうかもしれない。もしそうなったときに、感染した選手やスタッフを非難するのではなく、仲間に対してどう気遣いができるか、チームとしてどれだけの気遣いができるか、ということも考えておくのが大切だと思っています

――仕方ないとはいえ、シーズン中にもかかわらずチームとしてトレーニングできない状況は、選手にとっては大きなストレスかと思います。

永井 今後は、ウェブミーティングを実施予定です。在宅期間中でも、頭の中をバージョンアップすることはできます。ウェブ上でプランを伝えて、映像でもう一度戦術や、自分たちのやりたいサッカーの確認をしようと思います。

 コンディション管理は難しい面もありますが、選手には『できる範囲でベストな状態を維持してほしい』と伝えました。ただ、まずはサッカー選手である前に、一都民、一国民として、健康第一、自覚と責任を持った行動をしてもらいたい、とお願いしています。

――今後、無観客試合での再開、ということもあり得ますよね。

永井 個人の見解だけで言えば、無観客試合は反対です。Jリーグの事情やクラブの経営面を考えて、それしか方法はない、ということであれば受け入れざるを得ません。ただ基本的には、スタジアムで観戦して、一緒に感動や喜び、悔しさ、悲しみ、すべてを共有できる、選手とサポーターの一体感があってのJリーグだと思います。その一体感が、選手のエネルギーやパワーになりますし、お客様のために最大限、全力を尽くすことが仕事だと思っているので。でも、これだけ状況が深刻化していくと、もちろん無観客試合も受け入れなければいけないのかな、と最近は考えたりもします。

――日本中のサッカーファン、サポーターが、早くJリーグが再開できる環境となることを祈っています。

永井 僕たちができることは、再開したときに喜んでもらえる最高のプレーを見せること。それが一番の恩返しになります。当たり前のようにあった週末のJリーグがなくなったことは、自分自身もすごく寂しいし、人生の生きがいがひとつないような感じがしています。

 あらためてサッカーのできる喜び、ファン、サポーターに応援していただけるありがたさを感じています。そういう思いを胸に、早く日常が戻ることを願っていますし、再開したとき、ファン、サポーターの方々に喜んでもらえるように、たくさんの笑顔を提供できるように努力したい。

 ただ、この状況で悩んでおられる方もいることを忘れてはいけない。そういう方々のことも常に思いながら、サッカーのことを考えないといけない。その中で、事態が終息して『Jリーグのある日常』が早く戻ってくるように祈っています。