2020年クラシック候補たち
第11回:ダーリントンホール

 近年、牡馬クラシックにおいて、重要なステップレースとなっているのが、GIII共同通信杯(東京・芝1800m)である。

 過去10年の連対馬を見ても、ゴールドシップ(2012年1着)、ディープブリランテ(2012年2着)、イスラボニータ(2014年1着)、ドゥラメンテ(2015年2着)、ディーマジェスティ(2016年1着)が、GI皐月賞(中山・芝2000m)、GI日本ダービー(東京・芝2400m)、GI菊花賞(京都・芝3000m)のいずれかを制覇。ほかにも、リアルスティール(2015年1着)、スワーヴリチャード(2017年1着)、ダノンキングリー(2019年1着)らが、牡馬三冠レースで好走を果たしている。

 そして、今年の共同通信杯(2月16日)を勝ったのが、ダーリントンホール(牡3歳/父ニューアプローチ)である。クラシックでの活躍が期待されている。


共同通信杯を制したダーリントンホール

 ダーリントンホールがデビューしたのは、昨夏の2歳新馬(7月21日/函館・芝1800m)。好位につけて、直線で逃げ馬に並ぶと、難なく交わして初陣を飾った。

 次戦では、GIII札幌2歳S(8月31日/札幌・芝1800m)に挑戦。評判の素質馬が集うなか、2番人気に推された。しかし、最内枠が響いて、4コーナーで前が壁となり、直線入り口ではポジションを大きく下げることに。

 直線、馬群を割って追い上げるも、結局3着。不完全燃焼の競馬に終わった。

 それから休養を挟んで、1勝クラスの葉牡丹賞(11月30日/中山・芝2000m)に臨むが、やや余裕残しの状態で再び3着に敗れた。続いて、挑んだのが、共同通信杯だった。

 やや重のコンディションのなか、ダーリントンホールは3〜4番手の好位につけて追走。直線では、逃げたビターエンダーの内に入って、マッチレースを展開した。

 どちらも譲らぬ、熾烈な攻防を続けたまま、2頭は並んでゴール板を通過。写真判定の末、ダーリントンホールがハナ差の勝利を飾った。

 ダーリントンホールを管理するのは、美浦トレセンの木村哲也厩舎。クラシックの有力馬となった同馬について、スタッフはどう見ているのか。関東競馬専門紙のトラックマンがその様子を伝える。

「ダーリントンホールは大きな馬体の持ち主で、入厩前から目を引く存在だったようです。雄大なフットワークが特徴で、『パワーを感じさせる』とスタッフは話しています。一瞬のキレというより、『徐々に加速して、長くいい脚を使える』とのこと。共同通信杯を見てもわかるように、タフな追い比べで強いのは明らかです」

 すでに重賞タイトルも手にしているが、スタッフによれば、同馬は「まだまだ完成途上」だそうだ。トラックマンが続ける。

「ダーリントンホールは馬体の前後のバランスが整っておらず、まだ『体を持て余している状態』とスタッフ。2走前に敗れた葉牡丹賞も、なかなか馬体が整わず、予定していたレースを使えなかったので、スライド出走だったとか。それで、伸び切れなかったのかもしれません。

 そんな現状で、ここまでの戦績を残しているのですから、さらに成長が見込める今後が楽しみです。実際、陣営も『今後はもっとよくなりそう。皐月賞(4月19日)より、日本ダービー(5月31日)で、さらに進化しているのでは』と話していました」

 クラシックへの関連が深い共同通信杯を制して、本番での激走への期待が膨らむダーリントンホール。強豪馬たちとの白熱した叩き合いを制して、戴冠を遂げられるのか。まずは、目前に迫った皐月賞に注目である。