自粛要請でガラガラの銀座。バブル崩壊の次の過程で起きることとは何か? (写真:ZUMA Press/アフロ)

コロナ、コロナ、コロナ、の日々である。毎日、洪水のように新型コロナウイルスのニュースが流れてくる。とくに首都東京の感染者数が顕著に増加しつつあり、日本に住むわれわれにとってコロナ問題が最大の関心事だ。単純に感染者数の推移と時差から考えて、5月には東京が現在のニューヨークのような状況になっていても不思議ではない。本欄でもコロナ問題以外の話題は書きにくい。

今後5年「ドル高円安が進む」と読んでいいのか?

例えば、今週は、公的年金の積立金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の新しい基本ポートフォリオが発表された。新しいポートフォリオは「国内株式25%、外国株式25%、外国債券25%、国内債券25%」と国内債券が10%減って、外国債券が10%増えたので、外国債券に10数兆円の資金が向かうことになる。


この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています)。記事の一覧はこちら

通常だと、この新方針のあれこれと、影響とを、投資家に向けて細かく説明するところなのだが、今、読者が求めている話題ではなさそうだ。「えっ。今さら外債ですか。さらに為替リスクを増やすのは賛成しないなあ。向こう5年で、そんなに円安になると思いますか?」という個人的な感想を記しておく。

なお、GPIFのポートフォリオをまねして運用したい向きは、「4資産均等」という単語で検索すると、複数の運用会社が新しい基本ポートフォリオと同じ構成の投資信託を運用している。もっとも、「国内債券」の部分は、現在ほぼゼロに近い低利回りなのに金利上昇時に大きな値下がりリスクを持つ国内債券のベンチマーク運用よりも、「個人向け国債変動金利型10年満期」のほうが個人には無難だし、今、外国債券を持つことに賛成しないので、筆者はお勧めしない。

リスクを取る資金は内外株式のインデックスファンドを「4割(国内株)・6割(外国株。先進国中心に世界に分散投資)」の組み合わせで持ち、無リスクで運用したい資金は、先の「個人向け国債変動金利型10年満期と銀行の普通預金(1人1行当たり1000万円以内で)」の組み合わせで持つのがいいと思う。コロナ問題があろうと、なかろうと、同じである。

さて、現時点でのコロナショックの状況についてまとめよう。

資本市場を中心に見ると、新型コロナウイルスによる肺炎の感染症は、当初、中国単独の問題で世界経済の足を少々(世界GDP成長率で1%未満)引っ張るものの先進国各国の経済は大丈夫だろうと思われた。だがその後の状況は、感染が欧米に広がって世界経済の急激でかつ多分大規模な収縮が予想されるようになり、株式が2008年のリーマンショック並みにパニック売りされたのが現在の状況だ。投資家の心理は「恐怖」に、懐事情は「現金確保」に傾いている。

もともと「アメリカの社債と株式はバブルを形成中だった」と本連載でも書いたが、さすがにここまで来ると、バブル形成の軌道に短期間のうちに戻ることは難しい。われわれは、バブルの崩壊過程をひとわたり経験することになりそうだ。

典型的には、今回のような資産価格の急落のパニック局面で金融機関の信用不安が起こる。これを中央銀行の流動性供給で救う場面が生じて、その後、金融機関のバランスシートが傷んでいるために信用の縮小が起こり(適当な日本語は「貸し渋り」や「貸し剥がし」)、これによってしばらく経済が落ち込む状況が来る。1990年代の日本のバブル崩壊過程でも、2007年のサブプライム問題から翌年のリーマンショックにつながった先の世界金融危機でも、こうしたプロセスをたどった。

コロナショックの次の注目点は何か?

しかし、今回は、金融的な問題の発生よりも早く、コロナウイルスが経済活動に急ブレーキを掛けた点が、これまでのバブル崩壊とは異質である。

次の注目点は、コロナ問題でダメージを受けた実物経済の悪化が、金融システムの不安につながるか否かだ。大手の金融機関が破綻したり、世界的な信用収縮(大まかに言うと銀行の貸し出しが減ること)が起こったりすると、金融の問題がさらに実物経済の悪化を招く、典型的なバブル崩壊と同じ経路の「2次被害」を生むことになる。

これを相場用語で言うと、「パニック売りの1番底から冷静になって戻った株価が、金融不安から2番底を探る展開になる」というような状況が想定される。こうなると不況は長引く。

もともとバランスシートが脆弱な欧州の銀行と欧州で深刻なコロナ問題の影響、大きく下がってシェールオイル採掘業者の破綻に繋がりそうな原油価格、など、数カ月単位の時間軸の中で、世界の株価が「2番底」に向かいそうな要因は少なくない。

加えて、日本の投資家は、コロナウイルスが中国の問題から欧米の問題になり、さらに日本国内の問題としてもっと深刻になった場合の日本経済への影響と、自分自身への影響の両方の問題を追加的に心配しなければならない。投資家にとっては、心配事が目白押しの現状だ。

後に理由を述べるが、さりとて「今投資をするな」とか、まして「リスク資産を売るべき」だ、という判断にはならないところが、投資の面白いところだ。

なお、金融機関のセールスの言うことを聞くような人は、今のようなときに外貨建ての生命保険や毎月分配型の投資信託のような「状況に関係なくつねにダメな商品」を買いたくならないだろうから、通常時よりは案外心配がなかろう。

ただし、読者の皆様には、「今、不動産は買うな!」と注意を申し上げておく。不動産価格は、株価に遅れて下落するのがつねだ。セールスマンは全力で売ろうとするだろうが、今は踏みとどまるべきだろう。また、地方の銀行・信用金庫等の預金金融機関で有価証券運用の割合が大きい先について、運用の失敗による損失が問題になるリスクを考えておくべきだ。預金保険の保護対象制限である「1人、1行、1000万円」は守っておくほうがいい。

コロナ経済対策は「早く・たくさん・公平に!」

コロナは怖いが、各国の政府が打ち出す大規模な経済対策も軽視はできない。わが国の経済対策は、安倍首相が「かつてない規模で」と述べているが、現在策定中だ。評価や批判は対策が出そろってから改めてやるとして、「あるべき対策」について述べておく。

コロナ問題に対する経済対策は、経済の急停止に伴って急激に経済的に困窮した人に対する「一時的生活保護」対策と、コロナ以前から消費増税で悪化していた景気への浮揚策の2つが必要だ。とくに、前者は急ぐ。コロナ問題の経済対策は、(1)早くやらなければならず、(2)十分な規模が必要で、(3)公平でなければならない。

結論を言うと、「早く」「無条件で」「十分な現金」を給付せよということだ。それ以外にない。

対象者を絞り込む議論は何よりも時間がかかるし、結論は不公平にならざるをえない。また、「和牛券」のようなものでは、時間も掛かるし、家賃も、子供の授業料も払えない。何にお金が必要なのかは、個々の国民が判断したらいい。政治家や官僚が決められる問題ではない。また、コロナ問題は影響の表れ方が急なのだから、戦力の逐次投入的な小出しの対策は愚策だ。給付の規模が大きすぎたら、後に増税で回収すればいい。間違えるなら、今は、「過剰」のほうが「不足」よりずっといい。

安倍晋三首相に、ゴールデンウィーク前に国民1人に10万円を一律に支給する政策を勧めたい。有識者や官僚に議論させる時間は無駄でもったいない。財源はたかだか約12兆5000億円である。もちろん、国債発行と併せて日銀が大いに量的緩和を拡大させるべきだ。緩和をケチって、円高を招かないように注意したい。日銀は「長期金利が上がるほうが、金融機関の経営が楽になる」などといった下心を持たずに政策を一貫させるべきだ。

所得の高い人にも現金を支給することになるが、例えば、給付金を所得に参入して、後から課税で一部を回収すれば公平ではないか。

やりすぎになった場合の副作用は「インフレ」だ。求めて得られなかったインフレがついにやって来るのだから、いいではないか。まず、「一時的生活保護」を広く支給して、次に景気対策を考えるといい。消費税減税、あるいは国民年金保険料の全額国庫負担をお勧めするが、こちらは、1〜2週間考える時間がある。

「一時的生活保護」となる現金給付は、早ければ早いほどいい。病気の治療と一緒だ。東京都では、「バーや倶楽部に行くことは自粛せよ」と知事が言う。一方、政府は「バーなどの損失の補填は難しい」と言っている。こんな調子では、国民の不満が爆発する。バーや倶楽部の事情に詳しい麻生太郎副総理に聞いてみるといい。

「リスクプレミアム拡大」は投資の好機だ

現在、資本市場の参加者の感情を支配しているのは「恐怖」であって、求めているのは現金による流動性の確保といった「安心」だろう。市場や経済の先行きに関して資本市場の参加者は、確たることはわからないが、将来の予想を懸命に織り込もうとして取引している。経済は、今予想できる状況よりも落ち込むかもしれないし、実は案外ましかもしれない。


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現在、たぶん確からしく思えるのは、市場参加者が「リスク」や「不確実性」に対して、コロナ感染爆発前よりも敏感になっていることだろう。

1つ(相対的に)確からしいのは、株式などの資産の価格を形成する際に、リスク負担を補償する追加的な期待リターンである「リスクプレミアム」を、平時よりも大きく要求していることではないだろうか。

だとすると、将来が予想よりも、いいか・悪いかはわからないとしても、投資のリスクに賭けることは、現在、平時よりも有利になっていると推測できる。「リスクプレミアムは拡大しているにちがいない!」。これが、筆者が、現在投資をやめないほうがいいと思うし、むしろ追加で投資することを検討してもいいと思う理由だ(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。

5日(日)は阪神競馬場の芝2000メートルでG1競争の大阪杯が行われる。阪神競馬場では春競馬のフィナーレ的なG1である宝塚記念が行われるが、近年さらに2000mの古馬G1としてこのレースが格上げされた。たぶん、JRAは阪神競馬場の格を上げたいのだろう。

大阪杯の本命は牝馬のラッキーライラック

さて、その「新興G1」の大阪杯だが、今年は好メンバーがそろった。

本命は、5歳牝馬で目下本格化したラッキーライラックだ。阪神競馬場に適性があり、この距離のスピード競馬は本馬の切れ味が生きる条件だろう。

実績のある強い牡馬が何頭も出ているが、ディープインパクト産駒らしからぬ小回りコース適性があって、スピード競馬に強いワグネリアンを対抗に採る。

4歳牝馬のクロノジェネシスも馬場と距離の適性があって魅力的だが、4カ月前のエリザベス女王杯(G1)では2キロ軽量の負担でラッキーライラックに負けている。騎手の力量差も含めて、単穴とする。

地力と実績のある、ダノンキングリー、ブラストワンピース、地味に調子が戻ってきたマカヒキ、前走スタート後に大きな不利があって競馬にならなかったロードマイウェイが押さえ、というのがオッズを見ないで行う筆者としては普通の予想だ。

馬券的には、手広く買うのはつまらないので、人気落ちしそうなロードマイウェイと本命のラッキーライラック、それに実力の割にオッズが付きそうなワグネリアンを強調したい。