●Google Driveによってメリットが得られる環境とは?

○企業ユーザーの常識は「Microsoft OfficeとExcel」

多くのビジネスマンが「Microsoft Office」を使っている。管理職にせよ、開発者にせよ、営業マンにせよ、事務職にせよ、だ。Microsoft Officeはオフィススイートと呼ばれる種類のアプリケーションで、ワープロアプリケーション、表計算アプリケーション、プレゼンテーションアプリケーションなど複数のアプリケーションが含まれている。中でも、多くのシーンで使われているアプリケーションが表計算アプリケーションる「Microsoft Excel」である。

インターネットの普及によって、オフィススイートですらデスクトップアプリケーションではなく、クラウドベースのWebアプリケーションやスマートフォンまたはタブレットデバイスからアプリを使って利用できるようになっている。日本でもクラウドサービスとして提供されるオフィスソフにシフトした組織は多い。それでも、Microsoft Officeは根強い。依然として、国内企業の事務作業の根幹にあるといっていい。

ここではそうしたユーザー、特にMicrosoft Excelを使っているユーザーを対象に、新たな選択肢として「Google Drive」と、その表計算アプリケーションである「Google スプレッドシート」を紹介したい。「クラウドサービスに興味があるけど、コストが増えるのは困る」「クラウドサービスの利用を躊躇しているが、表計算アプリケーションを使う必要に迫られている」、そうしたユーザーの参考になればと思う。

○そもそもGoogle Driveを使う必要があるのか?

結論から書いてしまうと、予算が十分にあるならGoogle Driveを使う必要はない(もちろん、使ってもいいが)。「Microsoft Officeの永続ライセンス版を持っている」「Microsoftとすでに法人契約を結んでいる」「Microsoft Office 365のサブスクリプション契約を結んでいる」など、そうした場合はOffice OnlineやMicrosoft Officeを使い続ければよく、わざわざGoogle Driveを使用する必要はないだろう。

MicrosoftはオフィススイートをOffice 365に集約しつつあり、デスクトップアプリケーションというよりもクラウドサービスも含めPC、Mac、スマートフォン、タブレットなどで汎用的に利用できるサービスになっている。予算があればこのサービスを使えばよく、Google Driveに移行する必要性は低い。

Google DriveはMicrosoft Officeのデータとある程度の互換性はあるが、完全ではない。これまでにMicrosoft Officeで作成した資産があるなら、Microsoftのサービスを使い続けたほうが問題は少ない。

○Google Driveが合うのはこんなケース

では、どのような場合にGoogle Driveが有用になるのだろうか。以下が考えられる。

予算が足りない。作業する従業員分だけOffice 365のサブスクリプション契約を行うのも、法人契約をするのも、永続ライセンス版を購入するのも、どのオプションを検討しても価格的に折り合いがつかない

個人的に表計算アプリケーションを使いたいと考えており、Office 365のようなサブスクリプション契約をするのは避けたいし、Microsoft OfficeやMicrosoft Excelの永続ライセンス版も高くて購入できない

Microsoftアカウントを持っていないユーザ0とドキュメントを共有したり、共同編集を行ったりしたい

言ってしまうと、節約したい場合はGoogle Driveが良い候補になる。予算が十分にあるケースでも、新興企業でMicrosoft Officeで作成したデータが存在しないとか少ない場合は、Google Driveは良い候補といえる。

Google Driveで事が済めば、便利なことが多い。Google Driveには企業向けの「G Suite」という有償サービスも用意されており、予算をこちらにかけるという手もある。WindowsよりもmacOSやLinuxのほうが多い環境も、Google Driveのほうがなじみやすいかもしれない。

●Office 365とGoogle Drive、その関係性は?

○Office、Office 365、Google Drive、G Suiteの関係

Microsoftの提供するアプリケーションやクラウドサービスには複数のバージョンが存在しており、その内容も時代を経るにつれて変化している。このため、全体像を簡潔に把握するのは難しい。ここでは、ざっくりとその特徴とそれぞれの立ち位置を取り上げておく。

まず、PCで使うオフィススイートで最も有名な製品が「Microsoft Office」だ。Microsoft OfficeにはWord、Excel、PowerPoint、Outlook、Publisher、Access、OneNoteなどが含まれている。現在では、WindowsのみならずMac、Android、iOSにも対応している。

Microsoftが提供するクラウドサービスの1つが「Microsoft Office 365」で、Microsoft OfficeはOffice 365のサブセットという位置づけになってきている。要するに、Microsoft OfficeはOffice 365の一部になり始めている。Office 365にはMicrosoft Officeをオンライン化させてWebブラウザから利用できるようにしたようなOffice Onlineもあるし、それ以外のサービスも含まれている。

Office 365に含まれるOffice OnlineのGoogle版とも言えるものが「Google Drive」となる。Google DriveにはGoogle ドキュメント、Google スプレッドシート、Google スライド、Google フォーム、Google 図形描画、Google マイマップ、Google サイト、Google Apps Script、Google Jamboardなどが含まれている。

Google Driveにさらにプラスアルファでさまざまな管理機能やサービスを追加した企業向けの有償サービスが「G Suite」となる。強引だが、立ち位置としてG SuiteはOffice 365に対応するものと考えることも可能かもしれない。

似ているようでどれも微妙に立ち位置が異なるほか、時間とともにその内容が徐々に変わってきている。おおまかではあるが、現在の各ソフトの立ち位置はこのような感じと認識しておいてもらえればと思う。

○Google DriveとGoogle スプレッドシートを使う

Google DriveやGoogle スプレッドシートを使うのは簡単だ。まず、Googleアカウントを持っている必要がある。多くのビジネスマンが既にGmailやGoogleカレンダーを使うために、Googleのアカウントは持っているだろう。アカウントを持っていないなら、「Google アカウントの作成 - Google アカウント ヘルプ」からアカウントを作成できる。

続いて、Webブラウザから「Google ドライブ」にアクセスする。作成したGoogleアカウントでログインしたら、あとはそのまま使いだせばいい。

Google Drive

使い方は特に説明しなくても大丈夫だろう。直感的なUI/UXになっているので、画面を見ながら作業していけば、Webブラウザで表計算データの作成や編集ができるはずだ。

Google スプレッドシート

Google Driveのアプリケーションが提供する機能は必要十分だ。随時アップデートが行われており、気が付かないうちに便利になっていたり、機能が追加されていたりする。人工知能をベースとした機能が、知らずのうちにユーザーの操作をサポートするといったことも行われており、利便性は折り紙付きだ。

●Microsoft Officeの常識は通じない

○Google スプレッドシートのポイントは「別物扱い」

Google スプレッドシートを使う場合、これはGoogle ドキュメントやGoogle スライドにも言えることだが、Micosoft ExcelやWord、PowerPointとはまるで別物だと思って扱うことが重要だ。「Microsoft Officeと同じ操作が提供されている」「Microsoft Officeの常識が通用する」アプリケーションとは思わないほうがよい。最初から別のアプリケーションであり、徐々に使い方を覚えていくものと思って使ったほうがよいだろう。

実のところ、Google スプレットシートで高度な表計算シートを作成することもできるが、Microsoft Excelのスキルがそのまますべて使えるとは言い難い。UI/UXの互換性を期待して使い出すと苛立つことが多いので、そもそも別のアプリケーションと考えて扱うことを推奨したい。

○Google スプレッドシートはスマホの救世主かも

ノートPCを持っていない状態で、上司や顧客から読みたくないメールが来ることはたまにある。無視できればよいが、運悪くメールを開いてしまえば、対応せざるを得ないことも出てくる。

そこで困るのが、Microsoft Excelのデータが添付されていて、中身をチェックせよ、というメールだ。以下のメールはサンプルだが、こうしたメールのやりとりは結構行われるものだ。

メールにMicrosoft Excelのデータが添付されたケース

こうしたデータは閲覧であれば問題ないこともある。iOSもmacOSもMicrosoft Excelデータのクイックルックに対応しており、見るだけならなんとかなる。

iPhoneのクイックルックでMicrosoft Excelのデータを閲覧

しかし、データを編集しろとなると、面倒なことになる。ノートPCがあればまだしも、iPhoneやAndroidスマートフォンだけで対応するとなると、考えものだ。Google スプレッドシートはこうし場合に活躍する。

それには、「Google ドライブ」と「Google スプレッドシート」のアプリをインストールし、Googleアカウントでサインインを行っておく。次のスクリーンショットはiPhoneの例だが、「Google ドライブアプリ」をインストールしておくと、メールに添付されているファイルを転送する先として「Google ドライブ」が選択できるようになる。

添付ファイルの転送先として「Googleドライブ」を選択可能

すると、次のようにGoogle ドライブに添付ファイルを保存できるようになる。次のスクリーンショットは添付ファイルをアップロードしている時点のスクリーンショットだ。

添付ファイルをGoogle ドライブへ保存

アプリをメールからGoogle ドライブに切り替えると、メールから保存した添付ファイルがアップロードされていることを確認できる。

iPhoneのGoogle ドライブアプリから添付ファイルを確認

Google ドライブアプリからこのファイルを開くと、次のようにGoogle スプレッドシートアプリが起動し、ファイルを編集できるようになる。本格的な編集には向かないが、ちょっとした編集ならこれで十分だ。

iPhoneのGoogle スプレットシートアプリからExcelデータを編集 サンプルその1

iPhoneのGoogle スプレットシートアプリからExcelデータを編集 サンプルその2

iPhoneのGoogle スプレットシートアプリからExcelデータを編集 サンプルその3

iPhoneのGoogle スプレットシートアプリからExcelデータを編集 サンプルその4

iPhoneのGoogle スプレットシートアプリからExcelデータを編集 サンプルその5

iPhoneのGoogle スプレットシートアプリからExcelデータを編集 サンプルその6

ノートPCやデスクトップなら、LibreOfficeなどを使うこともできるが、スマートフォンからとなるとGoogle ドライブとGoogle スプレッドシートは便利な選択肢だ。なお、ノートPCやデスクトップで同じことをしてもいい。

●オフィスソフトもクラウドはもはや避けられないかも

クラウドサービスは日進月歩で提供される機能が増えており、利便性も向上している。Office 365もそうしたサービスの1つだし、Google Driveもそうだ。Microsoft Excelの完全な代替はアプリケーションにもクラウドサービスにも存在していない。

Google スプレッドシートはMicrosoft Excelの代替としては使えないが、別のアプリケーションとして利用する分には便利なアプリケーションだ。現在、新型コロナウイルスの影響でテレワークへのシフトを進める企業が増えている。クラウドベースのサービスは以前よりも身近な存在になってきているのだ。

Microsoftがアプリケーションをクラウドサービスへシフトさせる取り組みを進めていることもり、遅かれ早かれ、現在デスクトップアプリケーションを使っているユーザーもいずれは強制的にクラウドサービスへ移行せざるを得ない可能性もある。予算が確保できるならOffice 365でよいが、そうでないならGoogle DriveやGoogle スプレッドシートは悪くない。使ったことがないのであれば、ぜひ一度使ってみてもらえればと思う。

ただし、企業で本格的に使用するなら、Google DriveやG SuiteなどでクラウドにアップロードされたデータをGoogleがどのように扱うかに注意しておいたほうがよいかもしれない。Googleサービスに囲い込まれることを避けたい場合も、Google Driveの採用はよく考えた方がよいだろう。しかし、試す分にはそれほど神経質になる必要はない。まずは、実際に使ってみてGoogleのオフィスソフトを体感してもらえればと思う。