オンラインブリーフィングを行った村井満チェアマン(画像はスクリーンショット)

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 Jリーグは1日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う第4回臨時合同実行委員会を開催した。終了後、村井満チェアマンがメディア向けのオンラインブリーフィングを行い、各クラブの代表に向けてある種の「非常事態宣言」をおこなったことを明かした。

 キーワードは「競争から共存へ」。村井チェアマンは次のように背景を説明する。

Jリーグはこれまで比較的順調に成長を遂げてきた。直近数年間ではある意味、大きな成長の可能性を確信していた。平時の状況ではJリーグはある種、護送船団的な方針から『競争』のフェーズに移行していくというところで、各種の経営努力が報われるように、経営努力や競技成績に応じて大きく傾斜する経営オペレーションに向かうと宣言してきた」。

 ただし、クラブの財政危機や選手間の感染拡大が懸念される中、その舵取りを修正せざるを得ない状況となった。

「この2020年においてはある種、Jリーグが非常事態な状態の中で、『競争』の状態からチューニングを行うと宣言した。一つ一つのクラブに経営危機が訪れる場合もあるし、リーグ自体が平時とは違うオペレーションに移行せざるを得ないモードだという認識の中、個々のオペレーションを『競争』のフェーズの象徴である理念強化配分金などの施策の見直しをしていく。いまはすべてのクラブが安定したサービスを提供できる状態、経営基盤を守ろうということで、Jリーグの中である種の有事であるという認識の中、モードチェンジを申し上げた」。

 こうした現状をクラブ代表に伝えた上で、今季は賞金と理念強化配分金の見直しを行うことが決まった。

 賞金はJ1優勝チームの2億円を筆頭にJ1・7位まで、J2・3位まで、J3・2位までに傾斜支給されるもの。また“DAZNマネー”による目玉施策の理念強化配分金はJ1の4位までに翌年以降の3年間にわたり、外国籍選手の獲得や育成環境整備などの目的で最大15億5000万円が支給されるというものだ。

 『競技の公平性』に関するプロジェクトチームの担当者は「不公平を飲み込みながらも進んでいくシーズンという前提の中、賞金自体が100%支払うのがいいのかどうかの観点から議論している。リーグやクラブの全体的な財務インパクトがどれくらいなのか、どういった手当が必要なのかを精査しながら継続議論していく。近年は『共存から競争』というフェーズに移ってきていたが、理念協会配分金も2020年においてはこういったコンセプトの見直しが必要ではないか」と経緯を説明した。

 一方、「共存」の言葉どおり、新型コロナウイルスによって打撃を受けたクラブには最大限のサポートが提供される見通しだ。今後、Jリーグは資金難で公式戦を行えなくなったチームを支える「リーグ戦安定開催融資」と同様の仕組みを新型コロナウイルス対応の特例制度として策定する予定。『財務対応』に関わるプロジェクトチームを中心に骨子を審議しているという。

 また通常であれば「リーグ戦安定開催融資」を活用したクラブにはペナルティとして勝ち点マイナス10の制裁が課されるが、新型コロナウイルスによる損害が認められた場合は減点なし。さらに「3期連続赤字や債務超過」「最低80%はホームスタジアム使用」といったクラブライセンス制度の項目にも特例措置が設けられる予定となっている。

 加えて村井チェアマンはロイター通信による「DAZNが中断・中止となった試合の放映権料を支払わない意向を各団体に通告した」という報道を否定。「DAZNはわれわれにとって重要なパートナーだが、契約の修正等々に関する申し入れはない。頻繁に協業していて、たとえばフレンドリーマッチのコンテンツとしての中継もお願いしており、キャプテン翼などの番組も乗せて行こうとか、さまざまな協力体制の申し合わせをしている最中。トップ間でもリレーションが強く、ご心配いただいていることは日本においてはない」と述べ、リーグ自体を揺るがす財政インパクトは避けられる見通しとなった。

(取材・文 竹内達也)