東洋経済新報社の記者・編集者が、SBI証券のチーフストラテジストの北野一氏とともにマーケットを展望する月1回の動画連載「Monthly TREND REPORT」。第4回後編では『会社四季報』の山本直樹編集長が、今後の「企業業績の見通し」について、最新の『会社四季報』春号から解説します(この番組の収録は2020年3月中旬に行いました。詳しくは動画をご覧下さい)。

前編:『「1ドル=100円割れ」の円高になるかもしれない』

新型ウイルスの影響は自動車産業だけにとどまらない

――新型コロナウイルスによる企業業績への影響が懸念されています。最新の『会社四季報』春号から見た見通しはいかがでしょうか?


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山本:新型コロナウイルスの震源地となった中国の武漢市は、日本の自動車産業の一大集約拠点になっています。そこで当初から完成メーカーだけではなく、部品メーカーがどうなっているかを丹念にあたるようにしましたが、日が進むにつれて自動車関連だけでなく幅広い業種が影響を受けることがわかってきました。

今回、新型コロナウイルスに関しては「新型肺炎」という表記で統一しましたが、『会社四季報』春号に記載があるのは663社です。また、全体の2020年3月期の業績予想(金融を除く)では売上高が前期比0.5%減収、営業利益は同9.3%減益という結果になりました。これを製造業・非製造業の区分けで見ると、前者が1.9%の減収、9.9%営業減益、後者が0.9%増収、9.7%営業減益となります。

北野:新型肺炎がもしなかったら2020年3月期の予想はどうだったのでしょうか?

山本:昨年12月(約3カ月前)発行の『会社四季報』新春号と比べると、営業利益ベースで6.4%下振れたことになります。

北野:影響を受けている業種や、逆に恩恵を受けているところなど、個別の銘柄などもありますか?

山本:やはり訪日観光客の減少で、百貨店や化粧品などが大きな影響を受けているようです。イベントの自粛や消費マインドの悪化が目立ちます。一方で特需が発生している企業もあります。例えば日本エアーテック(6291)という企業です。半導体部品関連企業や医薬品メーカーに向けてクリーンルームや関連機器を作っているメーカーなのですが、新型コロナ感染症対策向けのブースや間仕切りなどが好調で、増産しています。 

コロナの影響は少なくとも2020年4〜6月期までは続く

――この新型ウイルスは、企業業績に対して長く影響を及ぼしそうですか?

北野:常識的には一過性で、感染拡大が落ち着いたら、もとの生活に戻ることができるはずです。ただし、株式は将来価値を現在価値にひき直したものですから、1期だけ業績が落ちこむなら株価への影響は限定的でしょう。しかし問題は、業績が下振れて「非連続的にダメです」となってしまうと、株価に影響が出てきます。

山本:焦点は来期の業績に移っています。新型コロナの影響がどこまで続くのかを予想するのは難しいのですが、少なくとも2020年度の4〜6月期(第1四半期)までは影響が続きそうです。

ただ、そうであったとしてもその後は正常化に向かうという前提を立て、予想をしています。来期業績(金融を除く)は売上高が1.7%増収、9.9%営業増益の予想です。内訳は、製造業が1.9%増収、10.8%の営業増益、非製造業が1.5%増、8.9%の営業増益を予想しています。