イラスト:ラジカル鈴木

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日本人の4人に1人が脳卒中や心筋梗塞など、血管の老化が原因で起こる「血管病」で亡くなる時代。医療関係者も今、「血管ケア」の重要性に注目しています。私たちが突然死から身を守るためにできることは──(構成=島田ゆかり イラスト=ラジカル鈴木)

【イラスト】内皮細胞ケアで血管を強く保つ

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小さな兆候を見逃さないことが命を守る

心筋梗塞や脳卒中(脳梗塞/脳出血)が怖いのは、普段から自覚のないまま進行する病気ゆえに、ある日突然、重篤な症状になるから。

血管が切れる(破裂する、解離する)のは、もとはゴムホースのようにしなやかだった血管が加齢や生活習慣により硬くなり、もろくなった結果です。よく耳にする「動脈硬化」は、この血管の老化現象のことを指します。また、血管の一部に血液がたまって「瘤」というこぶ状の膨らみ(プラーク)ができ、それが破裂するケースも。脳出血はこれが原因で起こります。

一方、血管が詰まるのは血管内のこぶが肥大化して血管が狭くなり、血液の通りが悪くなったところに血栓が詰まるから。それにより、その先にある細胞や臓器に血液が行かなくなって、細胞が壊死します。血栓とは、血管が傷ついたときそれを修復するために作られる血小板の塊。弱くなった血管は傷つきやすいため、血栓ができやすくなるのです。

どちらも自覚なく進行していきますが、小さな兆候はあります。「胸に違和感がある」「ときどき動悸がする」「手足がしびれる」などの症状は、血管が老化している、つまり動脈硬化が進みつつある前ぶれです。血管病における予兆は、すでに病気が進行している「初期症状」に該当しますので、気になる症状があれば、すぐに検査をし、血管ケアを始めることが必要です。

そして「ろれつが回らない」「まっすぐ歩けない」「顔の筋肉が左右対称に動かない」「胸をえぐられるような激痛がある」「口もとがだらりとして閉まらない」「理由もなく脚がむくむ」などのはっきりとした症状がある場合は、重度の危険サイン。命の危険が迫っている可能性があります。

●内皮細胞ケアで血管を強く保つ

血管の一番内側に「内皮細胞」と呼ばれる組織がある。この組織が傷つくと、こぶの原因となったり、血栓のもととなったりする

血管ケアをしないと、こぶは大きくなり続ける。内皮細胞はもろく、弱くなり、心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすい状態となる

血管ケアを行っていれば、血管内にこぶができたとしても、内皮細胞の働きにより詰まりにくい状態を作ることができる

血圧、血糖値、悪玉コレステロール値高めはリスク大

「今のところ、まったく気になる症状はありません」という方でも、血管病のリスクを抱えている場合があります。それは高血圧、糖尿病、高コレステロールと診断された人。

血圧が高い状態は、血管壁が過剰に収縮し、血管に負担をかけ続けています。そのため、高血圧の人は血管が疲弊しやすく、老化が早いのです。また、血糖値とLDL(悪玉)コレステロール値が高い人は、血液中に過剰な糖やLDLコレステロールがあふれ、血液がドロドロの状態。血管に負担がかかるので、動脈硬化のスピードが加速します。健康診断などの血液検査で、この3つの項目は必ずチェックしましょう。

基準値を超えた人は赤信号ですし、正常範囲内でも基準値の上限に近い数値が出ている場合は黄色信号。血管ケアが必要です。また、血液検査の値が正常でも、肥満の人、喫煙習慣のある人は血管病のリスクを抱えています。40歳を過ぎたら自分の健康を過信せず、強い血管を作る生活習慣を意識したいものです。

強い血管は「内皮細胞」の状態で決まる

では、強い血管を作るためにできることは何でしょうか。そのカギは、「内皮細胞」にあります。血管は「外膜」「中膜」「内膜」の3層構造になっており、一番内側の内膜の中にあるのが「内皮細胞」です。

加齢や悪しき生活習慣により硬くなった血管は、元のやわらかくしなやかなゴムホースのような状態に戻すことはできません。できてしまったこぶも小さくなることはありません。しかし唯一、血管の内側にあるこの「内皮細胞」はケアによって、いい状態に生まれ変わらせることができ、こぶができても詰まりにくくすることができるのです。

内皮細胞は、皮膚のようにターンオーバー(生まれ変わり)します。皮膚は約28日周期で生まれ変わりますが、内皮細胞のターンオーバーは約1000日。長いと感じるかもしれませんが、疲れて傷ついた細胞組織が3年弱で生まれ変わり、血管の内側が強くなるならケアをしない手はありませんね。

内皮細胞をよみがえらせる3つの習慣

内皮細胞は、血管壁を守る「バリア機能」と、血管の拡張を促す「活性化機能」という2つの機能を備えています。これにより血液をよどみなく流し、血管壁を広げて血圧を下げ、血管の負担を減らすことができるのです。内皮細胞を元気に保つコツは、「内皮細胞の負担を減らし、良い刺激を与える」こと。そのためにできることは3つあります。

まず1つめは、内皮細胞を傷める要因を減らすこと。たとえば血液中のLDLコレステロールや血糖は、ストレスや生活習慣の悪さによって増える活性酸素の攻撃を受けやすく、これと結びつくことで悪玉物質へと変化するのです。

そしていずれも血管壁に侵入してこぶに入り込み、動脈硬化を促進させます。つまり、血糖値やコレステロール値を下げ、抗酸化力の高い食品を摂る、ストレスを減らすことなどで、内皮細胞を守ることができるのです。

次に、血圧を上げる要因を減らすこと。高血圧は血管病にとって最大の脅威です。なぜなら、動脈硬化の引き金になるばかりか、血管に血液を送り込むのに大きな力を必要とするので心臓に負担がかかるからです。血圧を高める主な原因は、肥満と塩分の摂り過ぎ。減塩の習慣と肥満の改善・予防により、いきいきとした内皮細胞に生まれ変わります。

なお、高血圧の判断基準は、医療機関や健康診断で測定する場合、上が140Hg以上、下が90Hg以上であれば高血圧となります。家庭で測定する場合は上が135Hg以上、下が85Hg以上となります。

3つめはサラサラ血液を心がけること。血管内を血液がスムーズに流れていると、内皮細胞に良い刺激が与えられ、血管を拡張して詰まりを防ぐことができます。ドロドロ血液の原因は、脂質と糖質の摂り過ぎ、食べ過ぎと栄養バランスの偏りです。バランスの良い食事は、内皮細胞を元気にすると覚えておきましょう。

次のページに「突然死リスクを下げる10のヒント」をご紹介しましたが、最も重要なのは食事です。とくに塩分の摂り過ぎが高血圧を招き、血管の老化を速めることになります。

突然死リスクを下げる10のヒント

強い血管はセルフケアで作れます。元気な内皮細胞を作り、血液がよどみなく流れる血管になる10のヒントをご紹介しましょう

■《食事》

1 塩分を減らす

2 魚や大豆製品を食べる

3 野菜をたくさん食べる

■《運動》

4 ウォーキングで血流良く

5 ストレッチで柔軟性を保つ

6 筋トレで筋肉をつける

■《ストレス》

7 規則正しい生活

8 ぐっすり眠る

9 ぬるめのお風呂にゆっくりつかる

■《生活習慣病》

10 「高血圧」「高血糖」「脂質異常症」の人は治療・ケアに取り組む

意識的な減塩は血管と健康を守る

厚生労働省が策定している「日本人の食事摂取基準」では、食塩摂取量の基準を2020年版より、高血圧および慢性腎臓病の重症化予防を目的とした量として、1日の推奨摂取量は6g未満と設定されました。小さじ1杯が約5gですから、ほぼそれくらいが1日に摂取できる量の目安になります。欧州高血圧学会、欧州心臓病学会のガイドラインでは、血管病を防ぐ理想的な食塩摂取量は1日3.8gまで、と定めています。

しかし、全身のミネラルバランスを保つために必要な塩分は、実は1日わずか1.5g。人間はそれだけの塩分で十分に生きていけるのです。ちなみに、日本人の食塩摂取量の平均は、1日約10g(日本高血圧学会、厚生労働省の基準等による)。普段の生活で、いかに過剰に摂取しているかがわかります。

ではどのように減塩をしたらよいのでしょうか。1つは意識的に塩分を減らすこと。もう1つは薄味に変えること。1日に1g減らすことができたら、1年で365gの減塩に成功します。たとえば、調味料を控える、漬物や佃煮、梅干しを食べ過ぎない、汁物や麺類を食べる回数を減らす、塩分が高い食品(干物、練り製品、ベーコンなど)を控える、などが効果的です。

薄味に慣れるには、減塩調味料を活用したり、だし、酸味、香りなどでおいしくする方法があります。もっと簡単なのは、腹八分目を心がけること、外食を控えめにすること。この2点は、糖尿病対策、高コレステロール対策、肥満対策にもなり、さらに効果的です。

塩分以外にも、魚や大豆製品の良質なたんぱく質を摂ること、野菜を毎日食べることが奨励されています。良質なたんぱく質は内皮細胞が丈夫に生まれ変わる材料になります。肉なら、脂肪が少ない赤身がよいでしょう。野菜は抗酸化力が高いので、血管を傷つける活性酸素の除去に役立ちます。また、塩分(=ナトリウム)を体外に排出する効果があるカリウムを豊富に含むものが多いので、減塩にもつながります。

さて、これまで血管の重要性、内皮細胞を生まれ変わらせる方法などをお伝えしてきましたが、突然死の「最後の引き金」になるものがあります。それはストレスです。不安やイライラ、ヒートショックなど、心や体にストレスがかかると、血管はギュッと収縮します。その結果、血管が破れたり、血栓が詰まったりする可能性があるのです。

日頃から楽しいことに目を向け、リラックスして過ごすことも、実はとても重要なリスクマネジメント。自然の中を散歩して深呼吸をしたり、ヨガをするのもいいでしょう。血管を強く保ち、にこにこ笑って過ごせたら突然死とは無縁になるはずです。