かつてドイツ代表の守備の要として、世界を代表するトップディフェンダーの一人として活躍をみせていた、バイエルン・ミュンヘンのジェローム・ボアテング。だが昨シーズン終了後には、当時のウリ・ヘーネス会長より移籍の勧めを受けるなど、「失意のシーズンを過ごした」ことを認めていた同選手。新シーズンにむけて、「世界のトップ3のレベルでまだやれるところをみせたい。信頼してくれるクラブや監督の下なら、まだできると思うんだ」と、移籍も視野に入れての決意表明を行っていた。

 特にバイエルンでは今シーズンより、リュカ・エルナンデスとベンジャマン・パヴァールといった二人のフランス代表DFを加えており、さらに若きドイツ代表の守備の要ニクラス・ズーレや、ボランチもこなすハビ・マルティネスも在籍。ボアテングのCBでの立場は5番手にまで落ち込んでいた。そこでかつてドルトムントで監督を務めていたトゥヘル監督率いる、パリ・サンジェルマンへの移籍に迫ったものの間近で破談。前述のエルナンデスが加入前から負傷を抱えていたことに加え、ズーレとマルティネスもまた長期離脱へと陥ったことがその背景にある。

 そしてニコ・コヴァチ監督が不振を受けて解任となると、ハンジ・フリック新監督の下で息を吹き返した31才のベテランは、この冬にさらに体重を絞ってキレを取り戻しており、いまや「欠かせない存在になっている」と主将ノイアーも、その存在感を認める。フリック監督はセンターバックコンビの右へボアテングを、左へアラバを配置する、開幕前には誰も想像しなかったであろう組み合わせを採用することで、後半戦だけでバイエルンは5試合で零封。パダーボルン戦で2失点を許した際は、ボアテングは出場停止にあった。

 またオフェンス面においても、両選手がもつビルドアップの精度の高さから、最前線へのフィードより一気にアシストへと繋がる場面も見受けられており、ボアテング自身、後半戦のスタッツだけみても対人戦勝率64%(前半戦50.9%)、ファウル数1/103分(前半戦73分)、kicker採点平均3(前半戦3.78)と、大幅に改善。バイエルンの5番手センターバックは、今や2番手にまで上り詰めており、むしろこれからエルナンデスら他のセンターバックたちは、この高くそびえる壁を乗り越えるための先発争いへ臨まなくてはならない。