日本から遥か遠い南アフリカのサバンナで、野生動物たちを守るために、日々奮闘する日本人女性がいるのをご存知ですか?

その女性とは、日本人女性で唯一、南アフリカ政府公認のサファリガイドの資格を持つ太田ゆかさん(24歳)。

元々は日本で就職活動をするつもりだったという彼女が、どういう経緯でサファリガイドになったのか。また、日々の仕事内容や、サバンナの動物たちが現在直面している危機について、コスモポリタンに詳しく語ってくださいました。

人間と動物の真の共生を実現するために、私たちに今できることは何なのか。太田さんの生き方を通して、皆さんも是非考えてみてください。

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My office is maybe just a little bit more open than others😛❤️ 私のオフィスはこんな感じ🌍こうやってひたすらサバンナを走って野生動物を探す毎日です笑 #私のオフィス #サファリ #日本人 #サファリガイド #アフリカ #サバンナ #大自然 #絶景 #野生動物 #南アフリカ #safariguide #japanesesafariguide #bushoffice #wildlife #thisisafrica #southafrica #kruger

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――なぜサファリガイドを目指すことになったのか、その経緯を教えてください。

私は幼い頃から動物が大好きで、物心がつく頃には野生動物保護の仕事をすることが夢となっていました。

私が初めてアフリカに行ったのは大学2年生の時です。ずっと憧れていた動物の王国と呼ばれる南アフリカのサバンナへ思い切って行ってみることを決意し、現地で環境保護ボランティアに3週間参加しました。私はその時初めて見るアフリカの広大な自然に圧倒され、また同時にそこで働いていたサファリガイドに強い憧れを抱きました。

帰国後普通の大学生活を送っていた私は、大学の派遣留学制度を利用してアメリカで環境学を学ぶ予定でした。ところが私が提出物を出し損ねてしまったせいで派遣留学の資格を破棄されてしまいました。しかし逆にそれがきっかけとなり、もうこの際だからずっと心に残っていた南アフリカへ行ってしまおうと思い、サファリガイド訓練学校に1年間留学することにしました。

当初は貴重な経験を得て日本での就職活動にも活かせるだろうと思っていました。しかし実際に現地の訓練を通して努力を重ねていくうちに、このままアフリカに移住してサファリガイドとして自分のキャリアを積みたいと強く思うようになり、南アフリカに移住することを決意しました。

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Guess who walked here last night...🌛 サファリドライブ中に見つけた足跡、、 誰の足跡でしょうか?🐾🤓 . 広大なサバンナで動物を見つけるには、こういう足跡や匂い、音など、どんな動物が残してくれる手掛かりも見過ごせません🧐 #サファリ #日本人サファリガイド #南アフリカ #アフリカ #サバンナ #大自然 #野生動物 #サファリガイド #クルーガー #動物 #動物好き #safariguide #japanesesafariguide #bushlife #southafrica #kruger #tracking

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――サファリガイドになるためには、どんな試験をパスする必要がありますか?

まず政府公認のフイールドガイド協会が定める筆記試験と実技試験に合格し、サファリガイドの資格を取得する必要があります。そのほかにも救急救命の資格や、サファリカーに乗客を乗せるための、日本でいうところの第二種運転免許となる南アフリカのPDP運転免許というものが必要です。

またウォーキングサファリガイドになるためには、上記の資格とは別のトレイルガイドの資格とライフル取扱免許が必要です。

――日常のお仕事内容について教えてください。

私は環境保護ボランティアプロジェクトの専属サファリガイドです。毎日サファリドライブをし、生態調査のためのデータ収集をフィールドで行なっています。他にも外来植物除去や、密猟者の仕掛けた罠回収など、保護区の生体整備の活動も行なっています。

サファリの仕事は朝が早いです。なるべく動物が見られるように、彼らが活発であるなるべく涼しい早朝と夕方にサファリドライブを行うためです。そのため日が昇るのが早い夏場であれば4時に活動を開始し、終わるのは19時頃という生活です。ナイトサファリがある日は22時まで私たちの活動は続きます。

サファリガイドの1日は長いですが、何か珍しい動物や絶滅危惧種に出会えた時の嬉しさは特別です。サファリの仲間みんなでその喜びを共有すれば疲れなど一瞬で消えてしまいます!

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This baby elephant’s face says it all🐘💦 #lovinglife 水浴び嬉しくて仕方ないのが溢れ出ちゃってる子ゾウ😂❤️ ゾウは行動を見てるだけで感情が色々伝わってくるから飽きません🐘 #サファリ #日本人サファリガイド #アフリカ #サバンナ #大自然 #野生動物 #動物 #水浴び #サファリガイド #ボツワナ #アフリカゾウ #チョベ #子ゾウ #africa #safariguide #japanesesafariguide #bushlife #southernafrica #botswana #chobenationalpark

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――サファリガイドになるには、どのような資質が必要だと思われますか?とにかく動物への愛が一番必要だと思います。サファリガイドとして働くには身体的にも精神的にも厳しい場面があります。その時に苦難を乗り越えられるほどの自然へのパッションがなければ続かないし、楽しくお仕事ができないと思います。私はサバンナの中で暮らせていること、野生動物に携われていることに何よりも幸せを感じているので、一生続けていきたいと強く願うのだと思います。

また、現実的なところで言うと英語力です。サファリガイドになるにも、なってからもビジネスレベルの英語力は求められると思います。

――オフの日はどのように過ごされていますか?

サファリガイドは6週間活動して、2週間オフになるシステムです。私はオフの日もサバンナで過ごすことが多いです。自然の中でただのんびりしたり、友達の働く他の保護区に遊びに行ったりしています。

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またまたお気に入りの滝に来ちゃいました🙈✨🌿 #サファリ #日本人サファリガイド #アフリカ #サバンナ #大自然 #絶景 #南アフリカ #サファリガイド #滝 #safariguide #japanesesafariguide #bushlife #southafrica #mpumalanga

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――アフリカに移り住んで良かったこと、苦労したこと。また、日本から離れてみて分かった、日本の良い点と悪い点を教えてください。

南アフリカに住み始めてカルチャーショックを受けたのは、南アフリカの運転免許の取得を目指していた時です。交通局や内務省などの政府機関の窓口がきちんと機能しておらず、書類を1つ提出するのも一苦労でした。最終的に1年半かけてようやく第二種運転免許の申し込みが完了しました。日本はどこに行ってもとても迅速で丁寧な対応をしてくれます。それがどれほどすごいことなのか、日本を離れて初めて気づきました。

しかし違う視点から見れば、アフリカの人たちはいつものんびりしていて、忙しい大都会で常に慌ただしく暮らしている日本人にとっては、逆に彼らから学べることがあるのかもしれません。――現在、サファリの動物たちが直面している問題について教えてください。南アフリカの野生動物が直面している問題のうちの1つは密猟です。

アフリカの密猟には2種類あります。1つ目は象の牙やサイの角を目当てにした商業的な密猟です。特にサイの密猟は現在も深刻化していて、サイの絶滅が危惧されています。アジアの闇市場ではサイの角が伝統薬や嗜好品として高価格で売買されています。この需要を満たすために今では1日3頭ものサイが殺されています。

2つ目は罠を使って行われるインパラなどの草食動物を狙った密猟です。これは現地の貧困層が食料を獲得するために、針金などの安く簡単に手に入る罠を使って行われるものです。しかし食肉となる草食動物を狙って仕掛けられた罠でも、象の足に引っ掛かってしまったり、ライオンの首を切ってしまったり、この罠がもたらす弊害は計り知れません。

このような問題と戦うために、現地では密猟者取締隊が毎日パトロールをして罠の回収や密猟者の捜索を行なっています。しかし需要が無くならなければ、根本的な問題の解決につながることは難しいのが現状です。

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Merry Christmas from the bush🎅✨ アフリカのサバンナからメリークリスマス! 皆さん素敵なクリスマスをお過ごしください❤️🐘✨ サバンナのトナカイみたいなアンテロープ、ウォーターバック🦌🎄 #サファリ #日本人サファリガイド #南部アフリカ #アフリカ #サバンナ #大自然 #野生動物 #サファリガイド #ウォーターバック #アフリカのクリスマス #waterbuck #africa #safariguide #japanesesafariguide #bushlife #southernafrica #christmas

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――ホッキョクグマをはじめ、地球温暖化の影響により、多くの動物たちが危機に瀕しています。その影響は、サファリでも出ていますか?

私が住んでいる保護区のエリアでも近年、地球温暖化が原因だと示唆されている干ばつや洪水が頻繁に起きています。その中でも2015年の干ばつは非常に深刻で、水を特に必要とするカバやバッファローが大きな影響を受けました。クルーガー国立公園では2015年から2017年にかけてバッファローの数は以前の全体数から26%減ってしまいました。気候の変化がもたらす野生動物への影響は日々サファリガイドをする中で目の当たりにしています。

しかしこのように干ばつをきっかけにして弱い動物は死んでいき、生存力の強い動物だけが生き残っていきます。このような厳しい自然環境は健康的な生態系を形作るための大切な自然淘汰のプロセスでもあるので、必ずしもマイナスな側面しかないとは言えないでしょう。

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――動物たちを救うために、私たち一人一人ができることは何だと思いますか?

日本の発展した街で快適な暮らしを送っているとなかなか実感することは難しいですが、日本でも海外でも様々な環境問題が起きています。自分には関係ないと思わずに、まずはそのような問題を知ろうとすることが大切だと思います。

日本にいてもできることはたくさんあると思います。プラスチックゴミをなるべく出さないようにする、節水・節電対策をする、パーム油製品の消費を避ける、毛皮などの動物製品を使わないようにするなど、世界が今抱えている問題を知ることで、私たちの暮らしの中でできることもそれぞれ見えてくると思います。

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Happy World Giraffe day 🌍💝 #giraffe #giraffeday #wildlifephotography #wildanimals #nature #southafrica #safariguide #africanbush #africa #japanesesafariguide #サファリ #サファリガイド #キリン #アフリカ #南アフリカ

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――日本は動物福祉後進国と言われており、未だに動物の殺処分が無くなりません。真の動物との共生社会を作るには、どんな意識を持つことが必要だと思いますか?

長い地球の歴史を考えると、ヒトはずっと生態系の一部として他の動物と共生していました。知能や技術が発達して人間のためだけの便利さを求めるようになったのはつい最近のことです。

現代の生活はものや人であふれています。私が文明から離れたサバンナで暮らしていて感じることは、生きていくために本当に必要なものは実はほんの少ししかなくて、とてもシンプルな生活でも平和に幸せに暮らすことができるということです。私たちが忘れてしまいがちな「人間も自然の命の輪の一部である」ということを意識し、何かを購入・消費する時にそれは本当に必要なものなのかと一度自分に問いかけてみると良いのかもしれません。

私たち人間が健康に暮らしていくには、今残されている自然を大切にしていかなくてはなりません。より多くの人が周りの自然への尊敬を忘れずに生活できれば、真の動物との共生社会に近付けるのではないでしょうか。

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アフリカの大自然を一番に楽しむには歩くしかない!! ウォーキングサファリでしか味わえないゾウやサイに出会えた時の興奮をみんなにも経験してほしい😌❤️ #安全上の理由で所持義務のあるライフル #サファリ #日本人サファリガイド #ウォーキングサファリガイド #アフリカ #サバンナ #大自然 #野生動物 #南アフリカ #環境保護 #トレイル #サファリガイド #絶景 #safariguide #japanesesafariguide #africa #bush #bushlife #wildlife #southafrica #nature #trail #walkingsafari #trailguide

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――最後に、日本を飛び出してみたいけれど、踏ん切りがつかないという女性たちに向けて、アドバイスをお願いします。

まだ24年しか生きていないので偉そうなことは言えませんが、私のモットーは「やらない後悔よりやった後悔」です。一度きりの人生何がいつ起きるか分かりませんし、私はその時にできることは全てやっておきたいと考えています。悩める環境にいるならば絶対に挑戦した方が、後から自分の決断に納得ができると思います。

最近よく同年代の友人に、自分のやりたいことがはっきりしているということはとても幸せなことだと言われます。私は達成したい目標があるということを大切にして、諦めずに努力をし続ければいつか縁や運がついてくると信じ、これからも邁進していきたいと思います。