●ライブ動画配信の種類を整理する

新型コロナウィルスの影響により、セミナーや展示会や就活セミナーなどが相次いで中止になっています。そんな中、注目を集めているのがインターネットを利用したライブ配信です。

先月、世界各地400社以上の企業にカスタマーデータプラットフォーム(CDP)を提供するトレジャーデータは、新型コロナウィルス感染リスクを避けるため、これまでオフラインで定期的に行っていたセミナー「PLAZMA」を開催前日にライブ配信での同時中継に切り替えました。その結果、1日当たりのユニーク視聴者数は約800〜900名、リアルイベントにおける来場者想定を大幅に上回る9割の人にリーチしたといいます。それだけではなく、平均200名もの人々が約90分のセミナーを視聴した、という驚きの結果をもたらしました。

ブライトコーブのライブストリーミングツールによってライブ配信された「PLAZMA 2020 KANDA」の様子

このように、集団感染の拡大により、クラウド型の動画配信プラットフォームを提供するブライトコーブにもセミナー・展示会といったオフラインイベントのインターネット動画配信についての問い合わせが増えています。

3月6日、ブライトコーブは都内でライブ配信によって「セミナー・展示会をライブ配信する方法」を開催しました。本稿では、このライブ配信をもとに「ライブ配信に踏み切るコツ」を紹介します。

このセミナーも同様にライブ配信によって開催された

○ブロードキャストと双方向通信とは?

一口にライブ動画配信といっても2つの種類があります。双方向配信とブロードキャスト(片方向)配信です。

ライブ動画配信の種類

双方向配信はSkypeやHangout Meet、Zoomのような商品に代表されるもので、Web会議システムとも呼ばれる製品です。一方、ブロードキャスト配信で代表的なものはテレビ放送やYouTubeですが、Twitch、SHOWROOMなどのサービスも含まれます。ブライトコーブのサービスもブロードキャスト配信に含まれます。

前提として、ブロードキャスト配信と双方向配信はそもそも設計思想が異なり、似て非なるもので互いに比較すべき対象ではないことをご理解ください。それぞれに良い面とl悪い面があるため、用途によって使い分けすることを推奨します。

まず、ブロードキャスト配信には、視聴人数を問わず安定した配信を求められる場合が多く、画質や音質を重視した動画配信システムです。数千〜数万人という視聴者が同時に視聴しても、極めて安定した動画配信を実現するサービスが多くなっています。双方向性はありませんが、チャットやコメント投稿機能により双方向性を補完している場合があります。

YouTubeやFacebookが持つライブ配信機能は、その代表的な製品です。SHOWROOMなどはテキスト情報による双方向性によって成り立っていると言っても過言ではないでしょう。

双方向通信は、2名以上の双方向通信が可能な動画配信システムです。視聴者が互いに動画でコミュニケーションをとれるのが最大の特徴で、インタラクティブ性が極めて高い動画配信を実現するサービスです。双方向性を実現するため、ブロードキャスト配信に比べて画質・フレームレート・音質を犠牲にしている場合が多くありますが、コミュニケーションのリアルタイム性を重視して設計されているため、画質を追求する利用者は少なく、それらの弱点を不満に思う利用者は多くないでしょう。

内蔵マイクやスピーカーを搭載したパソコンがあれば、どちらのシステムも実現できます。もし可能であれば、Webカメラ、据え置きのマイク、もしくはヘッドセットがあれば便利です。これ以外にもビデオキャプチャーなどがあります。

まず、動画配信にはブロードキャスト配信と双方向配信が存在することを理解したうえで、企業がインターネットライブ配信する際に、何を重要視するかによって、選択するサービスが変わってきます。

●双方向配信とブロードキャスト配信の長所と短所とは?

○双方向配信のメリットとデメリットとは?

「zoom」に代表される双方向配信は、視聴者が互いにインタラクティブに会話ができるのが最大の強みだとお話しましたが、聞き取れなかったことや不明点があれば、その場で質問をすることも可能ですし、互いの表情を確認することで、相手の感情を読み取り会話することもできるでしょう。ライブ配信後のオンデマンド配信を想定されていないサービスも見受けられますが、配信内容をアーカイブする機能を持つ有償サービスもあります。お互いのデスクトップや資料を共有することで、より深い相互理解が可能となります。

双方向配信のサービス

また、さまざまな機能において、特にマニュアルを読むことなく簡単に操作できるのが双方向配信システムの優れている点です。

無償版の「zoom」では1対1通話は時間無制限、3人以上のグループ通話は40分まででき、50人まで通話が可能です。また、画面共有機能や会議の内容をレコーディングする機能もあります。レコーディング機能は、どこに格納するか選べますし、音声と画像を分けて保存してくれます。

3人以上のグループ通話が可能なZoom

しかし、反対に弱点もあります。視聴者が利用する個々の端末やシステム、もしくはブラウザの設定が要件を満たさない場合、動画の双方向通信が実現するまでに時間を要する場合がある点です。

Web会議システムを頻繁に利用した方であれば、初めて会議をする相手と会議を開始するまでに何かしらのトラブルが発生し、時間を要した経験をお持ちでしょう。大事な打ち合わせで、なぜかカメラやマイクが動画配信システムに認識されず(大抵の場合、システム自体ではなく、システムの設定に誤りがあります)、予定していた会議開始時間に会議を始められなかった苦い経験をお持ちの人も多いのではないでしょうか?

○ブロードキャスト配信のメリット、デメリットとは?

YouTube Liveなどに代表されるブロードキャスト配信は、インターネット上のオンデマンド配信に起源があり、再生までの速度や、再生の安定性、画質・音質を重視した設計になっています。そのため、視聴者は再生ボタンを押すだけで、快適に動画を視聴することができます。双方向配信に比べ、ほぼ無制限に配信が可能なほか、限定公開や、ライブが終わった後のオンデマンド配信ができます。ちなみに、Zoomでも録画をYouTubeにアップロードすればオンデマンド配信ができますが、その手間が省けます。

ブロードキャスト配信のサービス

反対に弱点は、エンコーダーやカメラ(Webカメラ)、場合によってはマイクなどを別途用意し配信する必要があることです。エンコーダーという聞き慣れない言葉を見て、反射的に嫌悪感を持つ方も多いでしょう。エンコーダーを簡単に説明すると、カメラで撮影した動画を圧縮し、Web上で配信しやすく変換するソフトです。

インターネット上で動画を配信する際は、視聴者へできるだけ高画質でネットワーク負荷が少ない配信環境を実現する必要があります。そのため、クラウド上にある動画配信サーバへ動画をアップロードする前に、カメラで撮影した動画を圧縮する必要があるのです。エンコーダーには有償のものと無償のものがありますが、無償のものにはWinにもMacにも対応するOBSがあります。有名YouTuberの多くがこの無償エンコーダーを使っています。

インターネット上で動画を配信する仕組み

エンコーダーの設定や操作は、皆様が想像されるよりは簡単です。また、動画の画質や音質の設定のみならず、デスクトップやブラウザの投影や、複数カメラのスイッチングなど、さまざまな設定・操作が可能です。しかしながら、大抵のWeb会議システムは、ITや動画の知識がなくとも動画配信を実現できるように、ユーザーインタフェースが設計されています。

そのため、双方向性型の動画配信システムに比べると煩雑であることは否めないでしょう。更に、ソフトウェア型のエンコーダーはCPUに高負荷を与えるため、エンコーダーが推奨するスペックのPCを用意することが必須です。

ここで、YouTubeやFacebookなどのスマホアプリにおいて、なぜエンコーダーを接続せずともライブ配信ができるのかと思われた方も多いでしょう。これらのスマホアプリには、ソフトェアエンコーダーがあらかじめ組み込まれている、もしくはクラウド上にエンコーダーが用意されています。そのため、細かな配信設定や操作はできませんが、簡単にライブ配信を始められるのです(YouTubeは2018年よりエンコーダーがなくともライブ配信可能)。

●イベントの重要性に応じてサービスの選択を

○無償サービスと有償サービスの違い

それぞれの特徴を理解し、目的によって使い分けることを推奨しますが、どちらの動画配信方法にも無償サービスと有償サービスが存在します。さまざまなサービスが存在するため、一概には言えませんが、その差はセキュリティ、機能制限、保証、サポートです。

ブロードキャスト配信において、無償サービスの多くは動画を広く公開する目的で設計されています。そのため、限られた参加者に限定して動画を公開したい場合に不向きなことがあります。有償サービスでは、その公開範囲を設定でき、自社のWebサイト(もしくは会員サイトやイントラサイト)にアクセスできる視聴者だけを対象に、動画を公開・配信することが可能です。また、社内の端末からYouTubeやFacebookの閲覧を禁止されている会社も未だ多く存在します。この点も視聴者の属性によっては考慮すべきでしょう。

双方向配信においては、無償サービスの多くが、参加者の上限数や機能に制限を設けています。例えば、無償サービス(もしくは無償版)は会議の録画(アーカイブ)ができないことや、自社のドメインを利用できないなどの制限が存在します。有償サービス(もしくは有償版)は、これらの制限を取り払うことができ、より効率的でセキュアな運用が可能になります。

ブロードキャスト配信・双方向配信を問わず、有償サービスは稼働率を保証していたり、日本語によるサポートを用意したりしていることが多くなっています。重要もしくは有償のセミナーや展示会をライブ配信する場合、これらの保証やサポートが選定に際して重要視されるでしょう。有料で参加費を取っているセミナーなど、どうしても失敗できないイベントならば、有償サービスを使うのがおすすめです。

有償サービスの1つとして、ブライトコーブでもブロドキャスト配信(片方向)型のソリューションを提供しています。昨年の実績値として99.999%の稼働率を誇るほか、日本語によるサポートも用意しています。また、ライブ配信をするためのWebサイトを簡単に作成することができる機能や、YouTube・Facebookで同時にライブ配信をするための機能を有しています。

MarketoやOracle Eloquaといったマーケティングオートメーションツールと連携する機能も好評ですが、最大の強みは動画専用のCMSであることです。ウェビナーが一般化し、定期的にライブ配信を実施していくと、動画の数がおのずと増えていきます。複数の部署にまたがり動画資産が増えていくと、それらの動画や視聴データを管理することが重要になってくるでしょう。

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以上、動画配信の方法を説明してきました。さまざまま方法があることを理解いただけたと思います。このように、セミナー・展示会のインターネットライブ配信に踏み切る前に、まずは、本当にライブ配信の必要性があるか(オンデマンド配信ではなぜ駄目なのか)を考慮し、ライブ配信の必要性がある場合はブロードキャスト・双方向配信のどちらが適しているかを検討することをお薦めします。

ライブ配信には、リアルタイムならではの緊張感や、一度しか見れない(一部サービスはDVR機能により巻き戻し再生を実現可 )というプレミアム感があります。ところが、ライブ配信は規模が大きくなればなるほど、失敗できない(撮影の失敗や、システムダウンが許されない)という緊張感が常に付きまといます。リスクを回避するには撮影や配信システムの安定性や冗長性を担保する必要があり、それらがコストや工数に跳ね返ります。

セミナー・展示会を単にインターネット動画配信に置き換えることは、真のデジタルトランスフォーメーションとは言えません。インターネットならではの見せ方や構成を検討することが必要です。また、取得できる視聴データをどのように活用するか検討することで、オフライン・オンラインを問わず、より良い結果を得ることができるでしょう。

インターネット動画配信の普及により、マーケターによってオフラインイベントの意義が再度検討されることが予測されます。オフラインにはオフラインのメリットが必ずあるため、それが今後どのように再定義されるのか楽しみです。

著者プロフィール

○大野耕平

大手独立系slerにてソリューション営業を10年経験後、2016年にブライトコーブ入社。3年間の営業を経験した後、2019年より現職。さまざまな角度で、企業における動画活用の啓蒙に注力し、様々なイベントやメディア取材で講演をしている。また、日本における大企業内での社内広報や従業員エンゲージメントにおける動画活用の提案も多数実施している。