新しいことを学ぶのは簡単ではない。それでも、デジタル化が進む現在、リスキル(ReSkill)として新しいスキルや知識の獲得が求められている。起業家やビジネスパーソンを対象としたメディアEntrepreneurが「8 Hacks to Learn New Skills in Half the Time」という記事で新しいスキルを獲得する術を伝授している。2017年と少し昔の記事だが現在でも役立つ基本的なことなので紹介してみよう。

8 Hacks to Learn New Skills in Half the Time

ContributorのAndrew Medalさんは、収監された経験を持つ異色のアントレプレナー。監獄のなかで書物とペンだけで外国語やプログラミング言語などゼロから学んだことを書籍「Don't Drop the Soap: Prison Life Hacks, Food Recipes, Workouts, Slang & More!」に書き下ろしている。ウォークマンのモーターでタトゥーを入れる機械を作ったり、セメントから歯磨き粉を作るなど、ギークなハッカー顔負けの体験だ。そんなAndrew Medalさんは、"学ぶことはスキル"そのスキルは時間と共に開発できるとしている。頭がいいとか悪いとか考えるよりも、スキルと思って学んだ方がいいということだ。ではどうやって学ぶスキルを養うことができるのか?早速みてみよう。

1.シンプルにスタートする(Start simple)

教材を開く前に、まずは最もシンプルな形で理解するにはどうすればいいかを最初に考えることをすすめている。楽器だったらコードや調を理解できれば、すぐに実践できる。土台の枠組みを理解することは応用力につながる。

2.時間の活用(Chunk time)

大人の学びで最も貴重なリソースは時間かもしれない。学びのための時間をどうやって確保するか、自分なりの方法を確立しておきたい。Andrew Medalさんは学ぶものを小さく断片化するやり方が良いとする。Chunkとは"塊"の意味。1950年代の心理学者、ジョージ・ミラー氏が推奨していたもので、学びのプロセスの効率化になるという。Webサイトを検索するとこの"チャンク"活用や解説を行っている日本のWebサイトも多数見つかるが、視認性やUX改善まで活用の幅は広く、なるほどと思わせるものだ。

3.口に出して学ぶ(Talk it through with someone)

学生の時の音読を覚えているだろうか?学びにおいて、画面を黙って読むのと口に出すのとでは、後者の方が有効だ。テキストを読むだけでなく、口に出して理解しよう。語学では必須だろう。記事では、カナダのモントリオール大学の複数の感覚を使ったほうが効果的だという実験結果を紹介している。言われてみると、暗唱して覚える九九はその後頻繁に活躍しているような気がするものだ。

4.重要事項は紙に書く(Write things down)

メモをとる場合、スマホやタブレットへのタイピングではなく、紙と鉛筆を使った方が良いだろう。何かを覚えるときにコンピュータへの依存が高すぎると能率が悪くなるというコロンビア大学の調査に言及している。

たしかにこれも言われてみると筆記したノートの記憶への貢献は高そうだ。ただ、「書く」という行為が物質的な紙と鉛筆である必要性については言及していない。手書きをデジタル化するツールもかなり進歩しているのでこちらの効果も気になるところだ。

5.休憩は効果的に(Take useful breaks)

休みは生産性に効果がある。学びの時間を長く取れる場合、効果的な休み(集中力が切れるタイミングで休憩をいれるなど)もプランに入れたい。Andrew Medalさんは午後20分間の昼寝がパフォーマンスレベルの改善を示す論文を示し、自身は意図的に休憩時間を設定していることを述べる。

6. 本当に1万時間必要?( Repeat in moderation)

「1万時間の法則」をご存知だろうか?ーー何事でも1万時間やれば習得できるというものだが、やり方によっては短縮できる。効率的な方法での実践がこれらを収縮できるリサーチもある。あれこれ考えたりこだわる時間を減らして、学びそのものに入ることができれば、きっともっと効率化できるはず。

7.実生活で価値を見出す(Find value in daily life)

学んでいることを生活に応用できない場合、モチベーションの維持が難しくなる。計算機を使えば簡単に計算できるのに、なぜ九九を覚えるのか?というのと同じ問題だ。計算機を持っていなくても、九九程度の計算が社会で必要になることを小学生が自力で見出すのは難しい。記事では微積分を学ぶ理由を高校で何回耳にしたことがあるだろうか?と尋ねている。データ時代には利用価値の目的も多くなってくるだろう。

仕事にすぐに役立つことならば、学ぶ気持ちがアップするかもしれない。昇給が期待できるならなおさらだろう。そうでないものを学ぼうとする場合、学んでいることが自分の気になること、関心を持つことができることでなければ続かないことは間違いないだろう。

8.瞑想を取り入れる(Meditate on it)

瞑想ーーつまり気持ちを落ち着ける時間を取り入れることは、学習効果の改善につながるという。MITの脳波の研究の記事を例に瞑想が集中力を増加させることに言及し、1日の中で、今の自分の現場と目標などを静かに考える時間を持ってはいかがだろうか?と呼びかけている。

監獄の中とは言わないまでも社会人での学びは学生時代とは大きく異なる制限がある。限られた条件下で様々なことを学んできたAndrew Medalさんが提案する学びのための8つは、いずれもそぎ落とされたエッセンスのように感じる。記事のなかで言及のある著名な心理学者ジョージ・ミラー氏は2012年にこの世を去っているが、法則"マジカルナンバー7±2"(The Magical Number Seven, Plus or Minus Two)を論文のなかで提起している。一般的に短期の記憶では7つ前後の"チャンク"しか人は覚えられないそうだ。