このままずっと、中国と日本の往来がなくなったら… 「コロナ倒産」する企業が続出

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どこもかしこもガラガラ

新型コロナウイルスの感染者数は、日本国内で1200人を超えた。発生源の中国でも、武漢などの大都市の「封鎖」も解除されないままだ。

いま、日本と中国の往来はほぼ「断絶」している。そして、その復活の見込みも立たない。大手メーカーの中国拠点幹部は言う。

「中国政府は『4月末にはウイルス感染が終息する』と宣言しているようですが、正直言って信じられません。北京市などへ渡航しようとすると、日本からの訪問者は感染の危険がないと確認されるまで、2週間隔離されます。

つまり、日本から社員が来ても、まったく仕事にならないのが現状です。一大事とはいえ、ここまでの厳戒態勢があと1ヵ月程度で解除されるとは思えません」

流行が始まってから2ヵ月、新型コロナウイルスは日本経済に深刻なダメージを与えている。中国をはじめとするインバウンドマネーをドル箱としていた企業や、中国に生産拠点を置き、世界中に製品を輸出していたメーカーは、先の見えない恐怖と戦っている。

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2ヵ月間で売り上げの見通しが立たなくなり、倒産に追い込まれた企業もある。もし中国との断絶状態が1年間続いたら、すっかり中国頼みとなった日本経済のビジネスモデルそのものが崩壊する。

「我が社に限らず、百貨店はどこも『開店休業』状態ですよ。観光客人気の高い化粧品のテナントですら、店員の3分の1を休ませているところもあります。中国からの輸入が滞り、欠品も出ていますが、そもそもお客さんがいないですからね。

この状況があと1年続いたら……考えたくない状況ですが、そんなことになれば、ただでさえ業績が落ち込んでいる百貨店業界は、都心の主力店ですら経営は危ない」

そう語るのは、大手百貨店・伊勢丹の幹部。銀座、大阪、京都、北海道、沖縄……。中国人に人気だった観光スポットや繁華街に、2ヵ月前までのような活気はなくなってしまった。

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中国からの訪日客数は、年間で900万人以上。それだけの人数の往来がほぼ途絶えるなど、かつてない事態だ。これに伴い、航空業界も青息吐息の様相になっている。

「たとえば中部国際空港(セントレア)では、3月は中国便の9割が欠航になることが決定しました。セントレアに限らず、日本の国際空港は近隣のテーマパークが一時閉園に追い込まれたことなども響き、便を出すにも出せない状況が続いています」(大手航空会社幹部)

ホテル業界は壊滅的

国際線のみならず、国内線の減便も増えている。3月6日から、JALでは一日あたり平均50便、ANAでは29便が減便を決めた。両社によると、3月の国内線の予約は前年と比較して約4割減っているという。

「この状況が続けば、1年と持たない」という声が多く上がるのは、ホテル業界だ。2月25日、愛知県の旅館「冨士見荘」が経営破綻を発表した。

セントレアからも近く、インバウンド需要に支えられていた冨士見荘だが、ツアー団体客のキャンセルが相次ぎ、「コロナ倒産」に追い込まれた。

冨士見荘の倒産は、家族経営の旅館から大手ホテルチェーンまで、他人事ではない。宿泊業関係者はそう口を揃える。

同じく東海地方でホテルを経営する人物は言う。

「五輪需要や、2025年の大阪万博を見越して、1000万円単位の資金を投じて客室を増築したり、バリアフリー化を図ったりした旅館もあると聞きます。今年中にその資金を回収できるはずでしたが、ほとんど観光客が来ないのが現状です。

大手のホテルも深い痛手を負っているのは変わりません。日本政府の自粛要請によって、大きなシンポジウムや結婚式が次々とキャンセルになっている。

ウイルス感染の危険がある限り、こうした式典の自粛は続くことになると思います」

全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会の調査によると、新型コロナウイルスの影響によって、今年3〜4月の宿泊業は約4500億円の損失が出ると見られている。1年間で単純計算すれば、旅館やホテルだけで2兆7000億円もの損失を被ることになる。

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国内移動もままならない

訪日客の減少だけではない。日本から海外への渡航も難しくなってきている。先に述べたとおり、中国に入国すれば感染の疑いがかけられ、隔離される。

今後も事態が沈静化せず、米国でトランプ大統領が日本人の入国拒否を正式に決定したら、ヨーロッパや南米も「右にならえ」で日本人の渡航を制限するかもしれない。

アジアへの旅行ツアーを中心に手がける旅行代理店スタッフはこう嘆く。

「旅行代理店は、会社の自腹でホテルや航空券をひとまず押さえ、客からの後払いでその元手を回収する、言ってみれば自転車操業です。

そのため、一度キャンセルが殺到すると、次のパックが組めなくなってしまう。ホテル側からも100万円単位のキャンセル料を請求されて、首が回らない」

現状、新型コロナウイルスの感染を食い止めるには、感染者との接触を徹底的に避けるほかなく、特効薬の開発も相当な時間がかかるとみられる。'02年に発生したSARS(重症急性呼吸器症候群)の終息宣言が出されたのは、最初の症例から8ヵ月が経った後のことだった。

仮に日本で封じ込めが成功し、沈静化できたとしても、累計感染者が8万人以上いる中国でウイルスを短期間で完全に封じ込めるのは至難の業だ。

中国の工場の停止により、トヨタや日産などの巨大メーカーが部品不足に陥り、製品の出荷が滞る事態が続いている。稼働を再開する工場も出てきているが、「事態が深刻化するのはこれから」と見る向きも多い。

感染の震源地とされる湖北省に組み立て工場を持つ、日産の社員は語る。

「中国国内での移動制限をクリアし、工場に戻ってくる中国人従業員もまだ半分程度です。さらに、今年1〜2月の間に部品の在庫を食い潰してしまっていて、3月以降も部品が入るメドが立っていません。稼働率が100%に戻ることはないどころか、もう一度工場が止まることになってもおかしくないんです。

なんとか部品を調達して製造を進めても、移動制限がかかっている中国国内で新車が売れるはずがない。新車が購入者の手元に届くのはおよそ3ヵ月後。今年の夏前には、現地の販売店が軒並み倒産しているかもしれない」

完成車を作るメーカーが生産調整に追われる一方で、その割を食っているのは下請け企業だ。トヨタなどに部品を提供する自動車部品メーカー幹部はこう言う。

「『部品の在庫が切れる3月末には、必ず間に合わせろ』と元請けに要請され続けています。それに間に合わなかったら一巻の終わり。アジア以外に拠点を置く企業に鞍替えされ、一方でうちの会社は『生産遅延の戦犯』扱いされます。

元請けのように資金や設備が潤沢ではないので、違う製品を作る体力はない。業種は違いますが、シャープのように空いている製造ラインでマスクを生産するなんて芸当は、下請けにはできない」

シャープは特別としても、日本はマスクなどの医療品の多くを、中国からの輸入に頼っている。社会問題にもなりつつあるマスク不足は、日中間の物流の断絶に端を発していると言える。

上海や北京など感染者が多い都市の移動制限が続く中国では、モノが作れてもそれを届ける物流が遮断されている。中国の場合、省から省への移動にも、自治体の許可を得なければならない。

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みんなが疑心暗鬼に

中国にも事業展開する流通大手・日本通運の幹部が言う。

「中国国内をまたぐ流通網は『コロナ対応』優先で、完成部品や金型の移動に必要な物流や通関は事実上停止しています。一部の自動車部品だけ例外的に輸送を認めてもらっている形ですが、それ以外は郵便ですら難しい。

空路での輸出も模索していますが、旅客と同様に便が絞られているため、まったく当てにならない」

インバウンドと製造業という、近年の日本経済を支えてきた両輪が、中国との断絶により立ち行かなくなっている現在。それに加え、政府の自粛要請も相まって、国内の飲食店や卸売業、ひいては農作物の輸出入にもしわ寄せが来ている。

また、中国人投資家によって買い支えされていた不動産市場も、新型コロナウイルスの影響で撤退が加速している。繁華街に人がいない状態が続けば、商業ビルのテナントも歯が抜けるように去っていくだろう。

冒頭で述べたとおり、仮に中国政府から「終息宣言」が4月中に出たとしても、すぐに経済活動が元に戻るかは不透明だ。そもそも、その終息宣言自体、本当に信用できるものなのだろうか。

「現地の社員は疑心暗鬼ですよ。日本から現地に人を送ったとしても、一度中国に入ったら、日本にしばらく戻って来られなくなるかもしれないリスクがあります。最悪なのは、終息宣言が出た後に従業員の感染が発覚した場合です。

明るみに出したくない政府からは締め付けを喰らい、工場が閉鎖に追い込まれるかもしれませんし、なにより従業員やその家族に申し訳が立ちません」(前出・メーカー幹部)

何ヵ月か後、日本と中国で終息宣言が出たとしても、そう簡単に日中間の往来が元どおりになるとは考えにくい。お互いの国民同士が疑心暗鬼になっているなかで、中国人があえて日本を旅行先に選ぶだろうか。

逆に、中国の現地工場などに社員を送り出す日本企業にしても、利益優先で社員の命を危険に晒すようなことがあれば、日本国内での評判はガタ落ちとなるだろう。

いくら政府が安全だと言ったところで、人々の不安は解消されない。これから先、流行がいったん落ち着いたとしても、来冬にまたウイルスが猛威を振るえば、元の木阿弥である。

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前例のないウイルスの脅威。疫学的な終息を迎えられたとしても、感情的な部分が解決するまでには、かなりの時間がかかりそうだ。

『週刊現代』2020年3月14日号より