場所や時間にとらわれない柔軟な働き方として注目されている「テレワーク」。最近はそういったポジティブな面よりも、新型ウイルスの影響から導入を迫られている人も多いでしょう。良くも悪くもこれがきっかけとなり、テレワークが急速に広まっていくかもしれません。

 

1月に取材したNTTドコモ開催の「DOCOMO Open House 2020」でも、遠隔地から機器を操作したり、離れた場所にいる人と通信したりといった、距離を超える(=テレ)テクノロジーを多く見かけました。5G時代はこういった技術が当たり前になるのだろうか、と印象に残っています。

 

今回は数多くあった展示のなかから、特に記憶に残った「テレコミュニケーション」技術を紹介します。未来の予習として5G時代を感じてもらえたら幸いです。

 

農業もスマート化する時代

1つ目は、農業用の栽培管理ロボット。畑に生える雑草の除草作業を行うロボットです。まずカメラの映像から、AIによってリアルタイムで収穫すべき作物を認識。その畝を踏まないようにコントロールしながら走行し、自動で除草作業を行います。

↑畝をまたいで走行。前方に付いているカメラで作物と雑草を区別する

 

↑端まで来ると自動でUターン

 

後方にもカメラを搭載しており、こちらは畑の状態をチェックする役割があります。カメラはクラウドと連携していて、畑が荒れていないか、害虫が発生していないかどうかなど、畑や作物の状態も同時に確認できます。また、そうして収集したデータを解析することで、栽培管理の効率化、収穫量のアップにもつながるそうです。

↑カメラの映像はクラウドで確認

 

走行デモを見る前は、農業はこういった技術とは縁遠い分野なのではないかと思っていました。しかし、農業従事者の高齢化や人手不足が問題になっているいまこそ、こうした自動化や無人化技術が必要とされているのだと感じました。

 

実際に農林水産省のHPには「スマート農業」についての説明が掲載されています。複数台の機械を自動走行させて大規模な農園を管理したり、データ分析により農業経験の浅い人でも作業精度を高めたりできる、新たな農業のシステムとして研究・導入が進められているようです。

↑畑作用のロボットはほうれん草などの葉物野菜が対象。今後は他の作物へ適用を拡大するとのこと。また、稲作用のロボットもある

 

いわば分身を操作する「テレイグジスタンス」

2つ目はヒューマノイドロボットを使った遠隔操作。ロボットを遠隔地から動かし手作業などを行う技術は以前からありますが、このロボットは「力触覚」をフィードバックする点が特徴です。オペレーターはスクリーンでロボットの視点映像を見ながら、ハンドルを使ってロボットを操作します。

↑レバー付きのハンドルで操作。ハンドルの奥にあるのがロボットの視野を映すスクリーン

 

ロボットが物体をつかむと、その物体の硬さ/柔らかさや重さを5G通信に乗せてフィードバック。オペレーターはハンドルを通して感触を確かめられます。感触はリアルタイムで伝わるので、柔らかいものをつぶさないように優しく持ったり、壊れやすいものをがっちり持ったりとその場にいるのと同じ感覚で作業できます。

↑水筒をつかむと、水筒の硬さや重さがオペレーターに伝わる

 

開発元の日鉄ソリューションズ株式会社は、工場での組み立て作業や陶芸品の制作など、現場で作業しなければできなかったことが遠隔地からでも実現できるようになると説明していました。

 

また製造現場の省人化や、IoTやAIと組み合わせた場合の生産性向上というメリットもあるでしょう。他にも、危険物を扱う作業をロボットに任せるといった活用方法もあるかもしれません(危険だからこそ人が細心の注意を払って作業する必要があるのかもしれませんが…)。こうした場所の制約を受けない技術は「テレイグジスタンス(Telexistence)」と呼ばれますが、まさに5Gの超高速・低遅延通信だからこそ実現できるものといえるでしょう。

↑実際に作業するロボット。操作できるのは両腕のみ

 

離れた場所から家族をサポート

高齢化が進むいまの日本社会では、介護やセキュリティの観点から「見守り」の重要性が高まっています。会場でもそういった製品や技術が展示されていましたが、そのなかから筆者が気になったものを2つ紹介します。

 

株式会社ラムロックの「みまもりCUBE」は、介護施設における入所者の夜間徘徊や転倒といった異変を検知するカメラ。最大の特徴はSIMを内蔵しており、Wi-Fi環境がなくても簡単に設置・利用ができること。カメラ映像はスマホからリアルタイムで確認できるほか、スピーカーとマイクを搭載するため、呼びかけや会話ができます。

↑コンパクトなサイズ。SIMを搭載せず、有線/無線LANを使用するモデルもある

 

徘徊や転倒を検知するとすぐに画像付きのメールで通知されるので、部屋を出たときの服装や転倒時の状況を確認できます。また、映像は本体内蔵のSDカードに6日間保存可能。介護施設だけでなく、防犯目的で通常のオフィスにも導入を考えているとのことです。

 

もう1つは、H2Lが開発したドライバーの運転技術を計測するスマートバンド「nerv」。筋変位センサーが運転中の筋肉の力みを検知し、ハンドルの動きを解析。映像と合わせて確認することで、ドライバーの認識能力や運転技術を測定するデバイスです。

↑スマートバンド「nerv」。展示されていたのはプロトタイプ

 

レーシングゲームを用いた測定実験では、ハンドル操作に応じてグラフが上下しているのが見えました。これらのデータは5G通信によりリアルタイムで確認でき、場合によってはスマートバンドからの電気刺激によってドライバーへフィードバックする技術も考案されているようです。離れて暮らす家族の運転をスマホでチェックできれば安心にもつながります。

↑ゲームによる実験走行。右上のグラフを見ると、いくつかの項目で測定されていることがわかる

 

高齢者の運転や免許返納に関するニュースが頻繁に報道された昨年。運転技術は経験によるところが大きいので、ドライバーが自身の衰えや危険性に気づくのはなかなか難しい面があります。それらをデータとして可視化する「nerv」は、運転の見直しや危険運転の防止に貢献できるデバイスになるでしょう。

 

ロボットに作業させたり、カメラで施設を監視したりといった技術は以前から存在していました。しかし、そこに5Gの通信を用いて「リアルタイム性」が加わることが、5G時代のテクノロジーの姿なのではないかと思います。

 

5Gが暮らしにどうつながるかは様々な提案が行われていますが、今回紹介したテクノロジーはよりリアリティ高く実現されていくであろうものだと確信できました。

 

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