今年7月に30歳を迎える山田。自身が描くベテラン像について語っている。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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 昨年8月、湘南ベルマーレを取材に訪れた時である。
「また中学生が来ましたよ」。そうニヤリとしたのがDF岡本拓也。

 その中学生とは……当時、浦和レッズから期限付き移籍したばかりのMF山田直輝だ。

 岡本が言うように山田の風貌はサッカー少年がそのまま大人になった印象だ。そして今季、湘南に完全移籍した山田は今年7月4日で30歳を迎える。サッカー界の傾向として、だいたい30歳を越えた選手はベテランと呼ばれるようである。

 30歳=ベテラン。このある種の公式を山田はどう感じているのか?

「僕のなかでは23歳までは若手。24から28歳までは中堅。29歳からがベテラン」
“数え”年ならば30歳。すでに“経験者”としてチーム内での立場を自覚していることが分かる。

 以前に比べ、選手寿命は長くなったものの30歳はひとつの区切りであることに変わりはない。そんななか、山田は30代を迎えることを楽しみにしているようだ。

「30歳になって良くなるケースをたくさん知っている。例えば、ウメさん(梅崎司)は30歳になって湘南に来て、浦和の時よりも試合に出ているし、見ていて成長を感じる」

 そのことを証明するように以前、梅崎は「周りがよく見えるようになった分、できることが多くなった」と話しており、プレーの幅が広がり、特長をより生かせるようになった。「それに……」と山田が続ける。

「30歳を越えた選手に人間として見習う人が多かった。例えば、ツボさん(坪井慶介)、阿部さん(阿部勇樹)、ヒラさん(平川忠亮:浦和トップチームコーチ)。自分から発信する姿勢や背中、なにか“生きる様”を見せつけるような選手。なにか喋るより、かっこいい背中を見せられるようになりたい」とベテラン像を語った。

 坪井、阿部、平川。彼らは背中で語り続けた。それだけチームメイトからの信頼が厚く、試合中、困った時に思わず、その背中を見るような影響力があった。

 では具体的に描く“ベテラン像”とは何か。山田はこう話す。
「若手の選手には良い影響を与えるというよりも、やってはいけない、マイナスな姿勢を見せちゃいけない、悪い影響を与えないようにしたい。湘南はサッカーに対してマジメな選手が多い。例えば、ネガティブなことを言った選手にはただ頭ごなしに“違う!”って否定するんじゃなく、『いや、俺はこう思うけど』って今までの経験から言えるようにしたい」
 経験=生きる様とするならば、山田のキャリアは負傷と復帰を繰り返し、期限付き移籍、古巣への復帰、そして湘南への完全移籍を経て今に至る。

 丸12年のプロ生活のなか、シーズン通じて活躍したのは39試合に出場した湘南J2時代の2017年くらい。怪我はもちろん、調子が良くても戦術に合わず、ベンチに入れない時期も長くあった。だからこそ試合に出られる喜び、チームのために戦う思いは強い。

 30代を迎える2020シーズン、リーグ開幕戦。相手は古巣・浦和。この試合で山田は65分、左サイドからのクロスを頭で押し込み、2-2とする同点弾を挙げたものの、湘南は3-2で競り負けた。

「リーグは結果。結果だから」と山田直輝。
 その顔からは、まだまだこれから!!そんな気概が感じられた。

取材・文●佐藤亮太(レッズプレス!!)