2018年から2020年にかけて、ヒマラヤ山脈の奥地の奥地、ネパールの秘境・ドルポ地方まで辿った壮絶なドキュメンタリーである。山に興味のない筆者は登山家の心理が全く分からず、業界の人名も知らないが、ここに出てきた友寄ディレクターや伝説の辺境ディレクターは有名人であるらしい。落ちたらお陀仏という断崖絶壁を延々と行く。「怖い」と絶叫したり、高地酸欠で倒れたり。

「秋」と「厳冬」と「夏」の3部の中で、最初の秋編がいちばんすごかった。高度5000メートル越えの山道を荷物持ちの動物を連れてひたすら歩く。「厳冬」編ではヒマラヤ族の大晦日、年越し、正月を映す。本邦初演である。日焼けした素朴な女たちと子供。一夫多妻に非ず、1人の妻に夫は2人の兄弟。それでも平和に秩序は保たれている。500人の集落に医者は1人で、薬草を説明してくれる。

正月に皆で踊る音曲が5音階の沖縄音楽に似ている。レンガ色に近い赤茶色の衣装で揃えた女たちの踊る姿は屈託がなくて、文明から遠く離れた天空の人生でもなんの悩みもないように見える。物足りなかったのは子供たちの教育がどうなっているのか全く触れられていなかったこと。使っているヤカンがアルミかステンレスかわからないが、最たる文明国で売っているようなピカピカの物だったこと。どこで買ったのか説明がない。英語が喋れる彼らには案外国の庇護が厚いのか。映像は凄いがわからないことだらけで物足りない。(放送2020年3月8日20時53分〜)

(黄蘭)