2020年シーズン開幕で見つけた
今季要注目のJリーガー(4)
石原直樹(湘南ベルマーレ/FW)

 12年ぶりに古巣に復帰したベテランFWが、今季の湘南ベルマーレの鍵を握るかもしれない。


12年ぶりの復帰となった古巣・湘南での活躍が期待される石原直樹

 石原直樹、現在35歳。高卒後の2003年に湘南に加入し、J2で6シーズンを過ごしたあと、大宮アルディージャ、サンフレッチェ広島、浦和レッズ、ベガルタ仙台と、J1のクラブを渡り歩いた。

 その間、3シーズンで二ケタ得点を記録するなど、J1通算279試合65得点をマーク(J2通算143試合41得点)。2012年と2013年には広島のJ1連覇に貢献し、2015年と2016年には浦和でステージ優勝を果たしている。

 チーム随一の経験と実績を備えるストライカーは今季開幕戦に先発し、さっそく持ち前の高い決定力を披露した。こちらもかつての所属先である浦和との一戦の開始7分、左サイドの鈴木冬一からの鋭いクロスを頭で合わせて先制点を奪っている。

「浦和の守備陣は強いけど、いいボールがあがれば、(マークは)外れるので。あれは狙っていました」と手練れの業師は悠然とした表情で、今季Jリーグの記念すべき初ゴールを振り返った。

 この日2トップを組んだ同じく新戦力のタリクとは、「まだ数えるくらいしか一緒にプレーしていない」が、ワンタッチのパス交換を通したりと、早くも息の合った連携を見せた。

 また1点目のシーンでは、タリクが何気なく中央に駆け込んでいるように見えて、向かって右側のCBと競り合うことで石原がフリーになれた。ノルウェー代表で10番をまとう32歳との熟練コンビには、期待していい。

 撃ち合いとなった開幕戦はその後2−2となり、湘南が得たPKをタリクがバーに当ててしまったあと決勝点を決められ、2−3で競り負けた。惜しくも古巣での初戦を白星で飾ることはできなかったが、石原は帰ってきたホームグラウンドの芝は「相変わらずいい」と懐かしいピッチの感触を噛み締めた。

 もっとも黒星スタートの事実は重く受け止めている。

「ゴールは自信になります。でも勝ち点を拾っていかないと。内容だけでなく、結果を求めて(手にして)いかないと、あとで苦しくなるので。今から危機感を持ってやっていきます」

 今季の湘南は、走力とプレス、献身性、縦に速い攻撃といったこれまでの”湘南スタイル”に加えて、マイボールをしっかり回してサイドから崩す手法も取り入れようとしている。

 システムは昨季までの3−4−3から、3−5−2に変化。中盤の3人の並びは逆三角形で、アンカーにサガン鳥栖から加わった福田晃斗、インサイドの右に齊藤未月、左に山田直輝が並ぶ。ミッドフィールドのバトルだけでなく、パスワークも重視していることがわかる布陣だ。

 その意味で、前線の石原とタリクの存在はとても興味深い。前者が172センチ66キロ、後者が173センチ64キロとどちらも上背はない(奇しくもほぼ同じサイズだ)。しかし、ふたりともボールを引き出す動きや囮になる所作、敵との駆け引きに長けている。地上戦をより重んじ始めた新しいベルマーレにとって、ポゼッションを高めうるスキルフルな2トップの存在は頼りになる。

 もとより開幕戦で見せたように、空中戦でゴールを陥れることもできる。あうんの呼吸で間をつくり、絶妙のポジショニングとタイミングで急所を突き、マーカーとの身長差など一瞬で無にしてしまう。

 湘南のJ1での過去2シーズンの最多得点者は、2018年は菊地俊介で7得点、2019年は武富孝介と山崎凌吾で5得点だった。でも石原には二ケタ得点の可能性がある。過去の実績だけでなく、35歳で迎えた開幕戦でのキレある動きが、その思いを強くさせる。ケガさえなければ、きっと。

「いろんなチームで見てきたこと」を、石原は心のクラブに伝えて、貢献したいと明かす。

「時間の使い方とか、試合の(進め方の)メリハリとか。カウンターをすべきなのか、つないで攻めるべき時なのか。強いチームはそうした判断がしっかりできるので。プレーや言葉で伝えていけたらいいなと思っています」

 移籍発表のプレスリリースで「ただいま!」と元気に戻ってきた、クールかつ優しい眼差しの仕事人、石原直樹。このベテランアタッカーが新しいベルマーレをけん引していくはずだ。