最高の家飲みのお供になる酒を、プロが厳選してご紹介します(写真:foly / PIXTA)

“コスパのいいお酒”といっても、いろんな見方がある。ただ安く酔えればいいなら、アルコール9%の缶チューハイが今は増えているし、大型ペットボトルに入った甲類焼酎がいちばん効率がいいかもしれない。逆に、小売価格3万円のドンペリが1万5000円で手に入ったとしたら、これもある意味、最高のコスパだ。

今回取り上げたいのは、それらではない。プロの目から見て、1本1000〜3000円という値段とは到底思えない、掘り出し物の酒だ。すべてのお酒ファンの方へ、お酒の種類別に“コスパよし”の銘柄をご紹介する。

3200円で出会える、高コスパのシャンパーニュ

●シャンパーニュ
「レイトンズ・ブリュット・レゼルヴ」


「レイトンズ・ブリュット・レゼルヴ」(写真:タイタニックホールディングスHPより)

イベントごとに欠かせないのが、シャンパーニュ。今や世界的にお手頃スパークリングワインの需要が伸びているが、シャンパーニュのブランド価値にはどれも遠く及ばない。シャンパーニュという響きには、もうどうしようもなく、甘くかぐわしく魅惑的な香りが漂っている。

そんな香りに引き寄せられ、百貨店や専門店に行きボトルを手にするが、金額はおおむね5000円前後。プレミアムだと1万円、3万円、5万円以上のものもある。いっそ、イタリアのスプマンテかスペインのカバにしてしまおうかと思っても、いやいや、ここは何としてもシャンパーニュで決めたいというときもある。

そこでおすすめなのが、タイタニックホールディングスが昨冬より日本への輸入を始めた「レイトンズ・ブリュット・レゼルヴ」。シャンパーニュの消費ダントツの英国ロンドンで人気のブランドだ。

なにしろ価格は1本3200円(750㎖)。3000円台前半のシャンパーニュはそうはない。味わいは、きめ細かく持続性のある泡立ち、もぎたてのグレープフルーツのような爽快感と焼いたブリオッシュのような香ばしさ。クリーミーな口当たりに心地いい柔らかな果実味、後味を引き締めるシャンパーニュらしいはつらつとした酸味。この価格でこの味わいなら大満足だ。ラベルもかわいいのでお土産にも向く。

●赤ワイン
「フランク・マサール マス・サルダーナ・ティント」


「フランク・マサール マス・サルダーナ・ティント」(写真:筆者提供)

ワインほど、コスパで選ぶのに難しい飲み物はないだろう。ここはソムリエ歴30年の筆者の言葉を信じていただくしかない。ワインを知っている人がおすすめするから安くておいしいのだろう。いいのだ、それでいいのだ。

このワインは、英国のソムリエコンクールの優勝経験者が造るワインなのだ。ワインの提供者が造るワイン。おいしいに決まっている。濃い目の色合い、濃縮したベリー系果実の香りと乾いたハーブの香りが心地よく複雑。きめ細かいタンニンに柔らかな酸味が溶け合って疲れない味わい。毎日飲める赤ワインともいえる。毎日飲むならコスパよくないと無理だから。

価格は、1750円(750ml)。これだ。1000円台で毎日飲めて飽きが来ず、それでいておいしいワインを選べるようになったら、もうそれは本当のワイン通である。スパイスを利かせた肉料理はもとより、焼肉、キムチ鍋などにもよく合う。

ワインを選ぶならこれ!

●白ワイン
「ロモランタン キュヴェ グロリア」


「ロモランタン キュヴェ グロリア」(写真:筆者提供)

最近は自然派ワインが世界的に注目されている。科学的根拠は証明できないのだが、自然農法で造られたブドウを使い、ナチュラルな醸造法で生まれたワインは、不思議と体に優しく、悪酔いしない。筆者の度重なる人体実験の結果がそう確信するからここは力強く記しておきたい。

フランス、ロワール地方、シュヴェルニーの農園でブドウ造りとワイン醸造を行うのはローラ・セメリアさんという女性。2010年より有機栽培を行い2016年にデメテール(ドイツにあるビオディナミの認証機関)の認証を取得。

ぶどう品種は、「ロモランタン」という。この品種名を知っているだけで「通」だと思われるから、その点もプラスして記しておこう。

生き生きとした酸味に柔らかく品のある果実味。スーッと体に入って、心地いい余韻を残してくれる。昨年の春にこのワイナリーを訪ね、誠実なワイン造りを見てきたのでご紹介したい。本来なら5000円はくだらないワインだと思うが、750㎖2880円で販売するお人好しなサイトもあるのでご紹介しておく。こういうワインのことをコスパがいいというのである。

日本酒大吟醸
「大吟醸 北秋田」


「大吟醸 北秋田」(写真:北鹿HPより)

大吟醸といえば、厳選したコメを半分以下にまで磨き、低温でじっくりと時間をかけ、特有の香味を生み出しながら醸す匠の技の酒。手間暇と技術を加味すると4合(720㎖)でも、小売りで3000円、5000円、なかには1万円という商品になるのもしかたがない。

しかし、北鹿の「大吟醸 北秋田」(720ml)は、小売価格985円! 二度見してしまう価格だ。もちろん、決して安かろう悪かろうではない。というのも、筆者が関わった雑誌『Pen』において開催した「おいしい日本酒ランキング」、愛称「日本酒ミシュラン」で、この「大吟醸 北秋田」はまさに大穴、ダークホースだったのだ。

スーパーで手軽に買える商品で、正直、ブランドもあまり知られていない。期待せずに(申し訳ない……)飲んだところ、落ち着きがある華やかさに、滑らかな口当たり、軽やかなコメの旨味があり飽きの来ないすばらしいバランスに審査員一同驚いた。

「安くして、やっぱりまずいとなったら致命的」という判断から、製造にはことのほか気を使っているとは、メーカーサイドの言葉。なるほどだ。コスパがいい理由は、大量生産に成功したからのよう。こんな大吟醸もある。スーパーで見つけたら手にとってみてほしい。

希少なジャパニーズウイスキーが高コスパで楽しめる

●ジャパニーズウイスキー
「ブレンデッドウイスキー 山桜 黒ラベル」


「ブレンデッドウイスキー 山桜 黒ラベル」(写真:笹の川酒造HPより)

今、日本産ウイスキーの市場はかなりクレイジーな状況になっている。2000年初頭に世界的なウイスキーコンペで、ニッカ、サントリーが最優秀賞を受賞して以来、日本産ウイスキーの品質のよさが世界のウイスキーマニアから認められ、その後、取引価格があれよあれよと急上昇している。

そもそもそこまで売れると思っていなかった国産ウイスキーメーカー、在庫がない。ウイスキーは少なくとも3年は熟成期間が必要だ。商品化にも時間がかかる。とにかくどこを探しても品薄状態。ゆえに価格も上がる。

熟成年の長い商品は軒並みオークション価格が10万円、30万円、70万円などといった値付け。また、コレクション商品だと海外競売で数千万円の値が付いたし、セット商品で1億円落札という話も今年話題になった。

しかし、内容がよくてもまだそれほどの価格付けになっていない商品もある。それが、「ブレンデッドウイスキー 山桜 黒ラベル」だ。福島県郡山市の日本酒メーカー笹の川酒造が造るウイスキーだが、古くから蒸留酒製造や洋酒のブレンドも行っており、広々とした熟成庫もある総合酒造メーカーだ。

それに何を隠そう前述の1億円で競売価格が付いたウイスキー、長い間この笹の川酒造に保管してもらっていた(つまりここで熟成)。そう、熟成環境も抜群なのだ。

この「山桜」は、華やかすぎないスモーキーフレーヴァーにキャラメルのような甘い香り、口に含めば滑らかな舌触りとともに香ばしい香りがアフターフレーヴァーとなって、バランスのいい味わいを楽しめる。

今のところ、2310円(700ml、税込み)という価格で購入できる。しかし、海外の展示会では引っ張りだこだし、香港では人気レストランのPB商品の依頼が来ている。お手頃に楽しむ、いやいや、将来の投資を視野に入れても、買うなら今だ。