新型コロナウイルスの感染拡大により、カタールW杯アジア2次予選も原則延期されることとなった。3月9日にFIFA(国際サッカー連盟)とAFC(アジアサッカー連盟)が、3月と6月の合計4試合をその対象にすることで合意した。

 延期を原則とするのは理由がある。安全基準を満たしたうえで当該チーム同士が開催に合意し、かつFIFAとAFCの承認が得られれば、開催は可能となるからだ。

 もっとも、パンデミックと呼ばれる世界的流行も現実的となっている。選手をはじめとしたチームスタッフに、感染のリスクを負わせるわけにはいかないだろう。

 パンデミックとなることを防ぐには、各国が足並みを揃えなければならない。自分たちが予定どおりにスケジュールを消化しても、2次予選がすべて終了しなければ3次予選(最終予選)へ移行できない。まずはとにかく感染拡大を防ぐことを、各国が最優先していくべきだ。

 ここから先のポイントは、感染の拡大が収束する時期だろう。たとえば、日本国内が数週間後に落ち着きを取り戻しても、2次予選の対戦国はまだ緊迫しているかもしれない。国境をまたいだ人の移動に支障がなくなり、互いの国を不安なく行き来できるまでには、数カ月を要すると考えたほうがいい。その意味で、6月までの原則延期は妥当と言える。

 カタールW杯はこれまでの6月開幕ではなく、22年11月下旬の開幕だ。FIFAのインターナショナルマッチカレンダーを見ても、ひとまず余白はある。すでに決定しているカレンダーに、先送りされた試合を当てはめていくことは可能だ。

 既存のカレンダーがそのまま生かされれば、予選の先送りによって突破後の強化期間が短くなる。テストマッチの回数が限られる。大陸間プレーオフを戦うことになったりすると、テストマッチの機会はさらに減ってしまう。

 今回のW杯は、事前の準備期間がそもそも短い。ヨーロッパ各国リーグのシーズン中に組み込まれているため、各クラブが選手をリリースするのは11月14日だ。その1週間後にはもう、W杯が開幕する。

 直前の10月には、インターナショナルマッチは設定されていない。実質的には9月の2試合が最後の強化となるだろう。

 18年のロシアW杯では、開幕直前の5月から西野朗監督が指揮を執り、それでもベスト16入りを果たした。振り返れば10年の南アフリカW杯でも、直前の戦術変更が奏功して16強に食い込んだ。

 W杯へ至るこれまでのプロセスを辿ると、テストマッチで結果が出ていない、チーム作りがうまくいっていない、といった時期も強化につながっていると見ることはできる。ただ、最終調整で何とか間に合わせるようなことは、カタールW杯では実現しにくいだろう。ラウンド16でベルギーに喫した逆転負けも、直前の監督交代ではそこまでが限界だったと言える。

 ブラジルW杯後の4年間を日本代表コーチとして過ごした現長崎の手倉森誠監督は、「アジア予選突破の段階で、W杯に挑むスタイルが固まっていなければならない」と語る。ましてや今回は、「前回以上」(森保一監督)の成績をターゲットとしているのだ。より一層密度の濃い時間を過ごさなければならない。

 スケジュールが不透明さを増しているなかでも、予選を勝ち上がりながらチームを固めていくための具体策を講じていかなければならない。与えられた条件下で最大の成果をあげるために、柔軟性のある対応が求められていく。すべての基準となるのは、「これまでと同じではベスト16が精いっぱい」との認識である。