ベストメンバーで臨みながら、シービリーブスカップ(SheBelieves Cup/アメリカ開催)の初戦、スペイン戦は不甲斐ない惨敗に終わったなでしこジャパン。浮上のきっかけが欲しい第2戦の相手は、昨年のワールドカップで負けているイングランドだった。


イングランド戦で念願のセンターバックを組んだ土光真代(左)と三宅史織

 自信を取り戻すような内容と、あわよくば苦手なイングランドに勝利することを願い臨んだ試合――。しかし、またしても軍配はイングランドに上がった。

 日本は初戦からメンバーを6枚代えたことで、守備意識がめざましく改善された。岩渕真奈、田中美南(ともにINAC神戸レオネッサ)の、前線のプレスからスイッチが入ると、「出足のタイミングを早める意識をした」と言う杉田妃和(ひな/INAC神戸レオネッサ)、三浦成美(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)らが中盤でしっかりとボールに寄せていき、サイドハーフ、最終ラインもそれに応えるように連動できていた。

 この連動を支えていたのが、土光真代(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)と三宅史織(INAC神戸レオネッサ)のセンターバック(CB)コンビだ。これまでは、どちらか一方が起用されることはあっても、公式戦でコンビを組むのは初。2人にとっては待ちに待った舞台だった。

 土光と三宅の名前が初めて並んだのは2011年のAFC U-16女子選手権。この年、なでしこジャパンがドイツW杯で世界一に輝いたことは、高校生の彼女たちに未来に向けての十分なエネルギーを与えた。ただ、この時は2人の競演はなかった。

「ずっと一緒に(試合に)出たいねって言っていました」(土光)

 昨年末のEAFF E-1サッカー選手権で、久しぶりに代表で2人が揃った。しかし「今回は可能性あるかなって思っていたんですけど……」と、三宅は期待していたが土光のケガによる離脱で断念。そして、ようやく巡ってきた機会が今回のイングランド戦だった。

 2人は攻撃的感覚がよく似ているため、ベンチから戦況を見守る時に「自分たちならこうする」と、話し合っていたという。

「特にラインコントロールに関しては、真代(土光)と感覚が似ていて話が合う。それをいつかチーム(なでしこ)に還元したいと思っているんです」と語っていた三宅。その言葉どおり、イングランド戦で2人が見せたラインコントロールはかなり強気なものだった。

 初戦でスペインには、サイド奥のスペースをロングボールで使われ放題だった。イングランドの左右両サイドはスペインと同等か、それ以上のスピードを持っている。背後を取られれば即アウトだ。

 そのリスクを承知のうえで、初戦よりさらに高い位置にラインを上げた。その結果、形勢逆転を許しそうなロングボールをことごとくオフサイドトラップで潰していくことができた。その数6回。真っ向勝負では逆を取られる場面もあっただけに、前半はとくに、このラインコントロールに助けられる場面が多かった。

「(裏に)蹴られたくないっていうのを考えたら、一番は引くこと。スペースを与えないのがいいと思うんですけど、それが攻撃につながるかって言ったら、ボールを取る位置も後ろになっちゃいますし、自分たちは前から行きたかった」と土光はライン設定の覚悟を語った。

 ただ、それが生きたのは、後半にイングランドが攻撃で本気のスイッチを入れるまでだった。

 前半のイングランドは、初戦アメリカ戦のベストメンバーから6名も入れ替えていた。そして、60分にカードを3枚切って日本のサイドを揺さぶると、残り20分になろうかというところで絶対的エース、エレン・トニ・ホワイトを投入して仕掛けてきた。

 ここで守り切れて初めて、土光と三宅のチャレンジが実を結ぶ踏ん張りどころだった。しかし、序盤からのアップダウンで疲労はピークに達していた。なんとかしのいでいたものの、三宅のパスミスからホワイトにゴールを献上してしまう。残り8分だった。

 試合終了後のピッチで、三宅は悔し涙を止めることができなかった。チームメイトたちが励ましの声をかけるが、おそらく耳には入っていない。初戦に続いて、自らのパスミスが失点につながってしまった。

「自分のミスで負けてしまったことが一番悔しいです……」(三宅)

 何より、三宅がこの試合で証明したかったのは「球際の部分で戦えているか。そこをしっかりやって、細かいラインコントロールをやればこれだけできるんだ」(三宅)ということを見せることだった。それをたった1本のミスパスで台無しにしてしまった。その痛みは察するに余りある。

 土光もまた、三宅と同じ痛みを感じているようだった。「自分たち(土光と三宅)は蹴らないでつなぐっていうのが持ち味なので……。難しいですけど、あのボールを蹴っていたら、よかったのかって話になるとそれも違うかなと思うんです」と表情を曇らせた。

 ラスト10分は体力的にもキツかった。相手はフレッシュな主力。スコアレスの状況で、残り時間をチームとしてどう戦うのかも曖昧だった。

「リスク管理をしながら、やり続けたい」と、土光は言葉を選びながらも、試合前に2人で決意したビルドアップの形を続けると言い切った。それが彼女たちの特長であり、それを失わずに、改善していく道はあるはずだ。ベストメンバーではないイングランドが相手であったとしても、土光と三宅が示した守備は一定の効果を生んでいた。

 最終ラインからのビルドアップに着手したワールドカップ後から約半年。相手も当然分析をしてくる。日本の攻撃の起点を狙ってプレッシャーをかけてきていることは明らかだ。そして、こうした圧力に負ければ即失点につながることは今大会で嫌というほど思い知らされた。

 熊谷紗希(オリンピック・リヨン)や、南萌華(浦和レッズレディース)しかり、CBは一様に同じようなパスミスでこれまでもピンチを招いている。この事実は重い。

 このまま最終ラインからのビルドアップを軸にしていくのであれば、ボランチを含めたリスク管理を徹底しない限り、今後も同様の失点は繰り返されるだろう。これは個ではなくチームとして向き合うべき問題だ。

 今大会、残るはアメリカ戦。最後になでしこの意地を見たい。