新型コロナウイルスの感染拡大前までは、白物家電の売り上げは堅調だった(記者撮影)

新型コロナウイルスの影響がサプライチェーンだけでなく、個人消費にまで広がっている。

大手百貨店が3月2日に発表した2月の既存店売上高は、軒並み2ケタの落ち込みとなった。家電量販各社からも「2月下旬の3連休(22〜24日)から客足がはっきりと減少し始めた」(家電量販のIR担当者)、「感覚的には(来店客数は)半減した」(都心部の家電量販店の店長)との声があがっている。

中国国内のサプライチェーンが大きな影響を受け、製品供給に不安が出ている中、外出を控える消費者の動きが一段と加速すれば、家電を手掛ける電機大手の業績にも影響が出てきそうだ。

食洗機やパソコンで在庫切れ

引っ越しシーズンが始まったが、住宅設備機器で製品の供給遅れによる影響が出ている。パナソニックはシステムキッチンやトイレ機器「アラウーノ」、ビルトイン型の食器洗い乾燥機について、中国からの部品調達が滞り、受注停止や納入を延期している。同社のビルトイン型の食洗機は国内で約6割の高いシェアをもつ。

パナソニック製のシステムキッチンや食器洗い乾燥機は、リクシルなど住宅設備機器を手掛ける企業にも納入されている。キッチン関連機器の納入ができず、住宅の引き渡しが遅れているケースも出始めた。

また、パナソニックが主に法人向けに製造しているパソコン「レッツノート」も、2月上旬から一部製品で在庫切れが発生している。中国で製造されている部品の調達に影響が出ているためだ。

レッツノートの出荷台数は約36万台(IDC Japan調べ、2018年)で、国内パソコン市場のシェアは6位。1000万台以上ある国内パソコン市場の中で存在感は決して大きくないものの、持ち運びやすさや堅牢性が高く、企業の営業現場では人気が高い。販売は継続しているが、レッツノートを採用する企業からは、「4月に新入社員が入ってくる。台数が足りるかどうか」と心配する声も出ている。

家電量販各社によれば、現状は台湾メーカーの製品を中心にパソコンの在庫はある。だが、Windows7のサポート終了にともなう買い替え需要が続き、新型コロナ対策としてテレワークを推進する企業も増えており、その結果パソコンの需要が増えて在庫切れが生じている製品が出始めている。

有機ELテレビも供給不安の懸念が高まっている。複数の家電量販幹部によると、有機ELテレビを製造するメーカーの営業員から「4月以降の供給についてはまだ不透明」との説明を受けているという。

中韓の新型肺炎流行でパネル供給に懸念

有機ELテレビはソニーやパナソニックなどが製造しており、今春にはシャープも参入する。使用される大型の有機ELパネルは韓国のLGディスプレイの寡占市場で、大半の国内メーカーもLG製を使用している。LGの有機ELパネル工場は韓国・坡州や中国・広州にあり、中韓両国でも新型肺炎の患者数が増え続け、生産や物流面での影響が懸念されていた。

ただ、今のところ「有機ELパネルの供給に影響が出るとはまだ聞いていない」(国内電機大手のテレビ事業担当幹部)という。家電量販店への営業スタッフも、一部で出ている4月以降の供給懸念について、「家電量販店側が十分な在庫を確保したい中、現場レベルで在庫が少なくなる可能性に言及したのでは」と話す。パナソニック広報は「個別の商談案件については答えられない」としている。

2019年10月の消費増税後には一時的に落ち込んだが、今夏の東京オリンピックを控え、高単価テレビの需要は高原状態にある。JEITA(電子情報技術産業協会)によると、有機ELテレビの国内出荷実績は2019年11月〜2020年1月まで、各月とも前年同期比2〜6割増で推移している

国内電機大手にとって国内テレビは重要な市場だ。海外市場よりも高単価な製品が多く、利益率向上に貢献しているためだ。国内市場は年間400万台前後で、この数年は「台数は横ばい。単価上昇で売上高は増えている」と、国内家電量販や電機大手関係者はいう。


国内電機大手にとって国内テレビ事業は重要だ(記者撮影)

新型肺炎の感染拡大が止まらず、五輪中止となれば、テレビの買い替え需要が大きく落ち込み、業績への影響は必至だ。国内テレビ市場でシャープとパナソニックはそれぞれシェア1位、2位で、世界シェアは9位と10位。国内3位ながら世界シェア5位のソニーと比べ、国内市場の存在感が際立つ(世界はIHSマークイット、国内はBCN、2018年)。

家電部門の収益に下押し圧力

白物家電の販売でも同様の構図がある。パナソニックやシャープは世界で家電事業を展開している中、利益率が高い高付加価値家電の売上げは国内が中心だ。共働き世帯の増加で時短ニーズが高まり、特に洗濯機や冷蔵庫など高機能の白物家電の販売が好調だ。

国内の家電市場は消費増税の反動を受けているものの、「洗濯機や冷蔵庫などの白物家電は高機能製品であればあるほど消費増税の反動は受けていない」(都内の家電量販店役員)と話していた。パナソニックやシャープが2020年1〜2月に開いた決算説明会でも、両社は「高単価品は比較的堅調だった」と説明した。


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しかし、「2月に入ってから、ずるずると客足が落ちており、高機能家電の売り上げにも影響が出そうだ」(前出の家電量販幹部)。高価格の高機能家電は店頭での説明を求める消費者も多く、外出控えは売上減に直結する。

パナソニック、シャープ両社の2019年4〜12月期の家電部門の営業利益率は、それぞれ4.2%と5.3%(パナはアプライアンス事業、シャープはスマートライフ事業の利益率)だった。高機能家電の販売が堅調だったため利益率を押し上げているが、国内家電市場がさらに冷え込めば、利益率低下は避けられないだろう。