怖いドラマである。松坂桃李がエリート銀行員の殺人鬼になる。妻と娘をもった、誰もがうらやむような明るい家庭の主だった仁藤俊美(松坂桃李)は、河原で妻と娘を自分の手で溺死させる。最初はただの水難事故と思われていたが、妻の爪に仁藤の皮膚片があり、問い詰められて自白した供述内容は「本の置き場所がなかったから」。
夫が主夫をする週刊誌記者の鴨井晶(尾野真千子)は仁藤と子供の幼稚園時代の親友(おやとも)で、上司(生瀬勝久)の命令で仁藤の公判に通いだす。調べてゆくと、仁藤は子供の頃、父親に性的虐待を受けていた女友達の話から、その父親を階段から突き落として殺そうとするが、肝心の場面でおじけづき、女友達が実行する。だが、この話はでたらめで、女友達というのは男の子だった。
晶の近所の主婦が、自宅の前を掃除してくれるのに気が引けて、辞退すると、それでもまた掃除してくれる。実は主夫をやっている晶の夫と浮気をしていた。最後のカタストロフは、いつも優しく微笑んでいて、「本の置き場所がなかったから」と理解不能な理由を供述した殺人者の仁藤と同じ笑顔で微笑んだ夫を、晶は包丁で刺し殺してしまうのだ。かくして、記者の晶も殺人者の仲間入り。
松坂桃李のシレっとした笑顔、看守になる田中要次とのやりとり、尾野真千子の次第に荒んでゆく表情、いずれも見事な出来である。脚本は秦建日子、ひょっとして現代の不条理にはありうる話かも。(放送2020年3月1日21時〜)

(黄蘭)