サードパーティCookieの命が風前の灯となったいま、パブリッシャーにオーディエンスデータへのアクセスを求める、より直接的な依頼が相次いでいる。ブランドが広告ターゲティングの正確性を維持するために、詳細なオーディエンスデータを求めているからだ。

パブリッシャーに対して、広告主がファーストパーティデータへのアクセスを求めたり、データパートナーシップの締結を希望したりする例が増えている。サードパーティCookieが消滅間近となり、また一般データ保護規則(General Data Protection Regulation:以下、GDPR)施行によって個人情報収集にユーザー同意が必要になったことで、オープンマーケットプレイスにおけるデータ主導のメディアバイは難しくなった。これは大規模かつターゲティング能力を有し、エージェンシーや広告主との関係強化を望むパブリッシャーにとっては朗報だ。

「ここ半年でかなり加速している」と、ニュースUK(News UK)でオーディエンスデータ担当責任者を務めるベディル・アイデミール氏はいう。「それ以前は(ファーストパーティデータに関心を示すのは)データを重視し自前のデータ管理プラットフォーム(DMP)やCookieプールに投資するクライアントだけだった。いまではほとんどのパートナーシップの必須要件になっている」。

パブリッシャーはオーディエンスデータへのアクセスを欲しがる広告主の期待に応え、さまざまな形のファーストパーティデータ戦略を売り込んでいる。ワシントン・ポスト(The Washington Post)とインサイダー(Insider Inc.)はターゲティングとキャンペーンの効果測定のためのツールを発表し、広告主に寄り添う姿勢をみせた。パブリッシャーアライアンスのオゾン(Ozone)はコンテクスチュアルターゲティング能力を強化した。ゆくゆくは直接契約の増加により、仲介業者が淘汰されるだろう。さらに現在のトレンドとして、パブリッシャーはプログラマティック・ギャランティードやプライベートマーケットプレイス(PMP)での契約に軸足を移し、増収につなげている。

データ操作とパートナーシップ

コンデナスト(Conde Nast)の場合、すでにプログラマティック広告売上の50%以上をプログラマティック・ギャランティード契約が占めており、前年比の2倍にあたる。2年前、コンデナストのプログラマティック売上の半分はオープンオークションで販売されるキャンペーンに由来するものだったと、同社のプログラマティック担当責任者エリ・パパダキ氏はいう。現在、オープンオークション取引が売上に占める割合は32%まで低下した。

しかし、パブリッシャーと広告主の直接の関係が増えれば、ユーザー同意の問題が浮上する。対応に時間の余裕はほとんどない。GoogleがサードパーティCookieを2022年までに段階的に廃止すると発表しているからだ。

広告主とパブリッシャーは、いずれも広告戦略をサードパーティ中心からファーストパーティ中心へと転換することで、将来の売上を守ろうとしている。少数のログインオーディエンスからは不完全で限られたデータしか得られないため、データ操作とパートナーシップは今後も続くだろう。

「(データパートナーシップが)何を意味するかははっきりしない」と、アイデミール氏はいう。「さまざまな疑問がわいてくる。広告主側のCookieは我々のDMPで使うのか、それとも広告主側にある我々のセグメントで使うのか? マッチングパートナーやデータクリーンルームは必要なのか? こうした基本的なところに、取り組むべき課題が多々ある」。

「まさに八方ふさがりだ」

ニュースUKは人員を増やし、法務担当者とプログラマティックのスペシャリストを適切な割合で結集させた。同社は現在コンプライアンスマネージャーを採用中で、この役職がコンプライアンスを遵守しつつ、データをパートナーに提供する環境を整える役割を担う。また、コマーシャルインサイトの専門家の獲得もめざしていて、こちらは同社のファーストパーティデータをエージェンシーや広告主が解釈できる形に「翻訳」する仕事だ。従来、パブリッシャーはこうした仕事に苦慮してきたと、アイデミール氏は指摘する。

データのライセンシングのために必要な情報安全プロセスは、企業のタイプによって異なる。GDPR施行後、パートナーのコンプライアンス審査に時間が必要になったため、キャンペーンサイクルは長くなった。ある企業が別の企業にイベントトランザクションに関するデータライセンシングを行う契約は、着想から実現までに2年以上を要したと、インフォサム(Infosum)の最高売上責任者、リチャード・フォスター氏はいう。同社はテレグラフ(The Telegraph)などのパブリッシャーと提携し、データクリーンルーム業務を請け負っている。

「Googleの終末時計のカウントダウンに気づいて、ファーストパーティデータへの移行を進めたいとしても、何かアクションを起こすたび、コンプライアンスの重圧や(パートナーデータへの)信頼の欠如といった壁にぶつかる。まさに八方ふさがりだ」と、フォスター氏は語る。

適正なプロセスを実行するには

大規模なデータパートナーシップ以外にも、パブリッシャーはデータの共有によって、ブランドがパブリッシャーサイト上でオーディエンスへのターゲティングを実行できるような方法を模索している。Facebookのカスタムオーディエンスに近いソリューションだ。

「我々が接触したパブリッシャーは、例外なくこうした能力の獲得をめざしている。(Facebookのような)ウォールドガーデンがうまくやっているのに倣おうとしているのだ」と、フォスター氏はいう。「このため契約サイクルが崩れ、より長期的でクリエイティブなパートナーシップのもとでの協働が可能になった」。

データパートナーシップの増加により、問題を解決し、適正なプロセスを実行するには、時間をかけて詳細を詰める必要がでてきた。パブリッシャーが広告主に対し、Cookieプールが適切なものである証拠の提示を求めるといった、簡単なことの場合もある。それでも、クライアントに投資してもらうため、パブリッシャーはシステムをシンプルかつ魅力的なものにする役目を負っている。

「クライアントやエージェンシーは莫大な資金をもっている。我々はそれをよそで使ってほしくないだけだ」と、アイデミール氏は述べた。

Lucinda Southern(原文 / 訳:ガリレオ)