今季クラモフスキー監督の下で新たな戦術にトライする清水。開幕戦は敗れたが、FC東京を相手に後半途中まで試合を支配した。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

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 中断期間の清水のテーマは、言葉にすると非常にシンプルだ。

「自分たちのサッカーの完成度を上げる」。これに尽きる。

 昨年までの清水はリアクションサッカーの傾向が強かったが、今季はピーター・クラモフスキー監督を迎え、昨季の王者・横浜と同様の攻撃的サッカーに大きく舵を切っている。そのため新しいサッカーを浸透・成熟させるには、やはり時間がかかる。ルヴァンカップの川崎戦やFC東京とのリーグ開幕戦を見ても、完成度はまだまだという印象だった。

 その意味では、この中断期間はプラスに作用する可能性も大いにある。クラモフスキー監督も中断期間の練習テーマについて次のように語る。

「あらゆる面で自分たちのサッカーをより良くしていくことです。攻撃でもっと脅威になれるように、守備をもっと強くできるように。ボールを持っている時も持たない時も、もっと自分たちのゲームができるようにしていきたいです」(クラモフスキー監督)

 その中でもより重点的な課題についてチェックしていこう。まず失点を減らすためのポイントについては、センターバックの立田悠悟に話を聞いた。

「公式戦でも練習試合でも、ボールの失い方が悪くて失点した形がここまで多かったので、まずはそこですね。僕ら守備陣も含めてボールの保持の仕方をレベルアップして、変な失い方をしないことが、失点を減らす意味でも重要なカギになると思います」(立田)

 自分たちがボールを持ち続けていれば失点もしない。それがクラモフスキー監督の基本的な考え方であり、横浜でも同様のチーム作りで結果を出してきた。ボールを保持しながら敵陣に押し込み、その中でボールを奪われても、即座にプレスをかけて奪い返す。選手同士の距離を近くしてショートパスをつないでいくからこそ、ボールを失った際にも相手との距離が近く、守備への切り替えも速くすることができる。理想は、90分間ずっと相手側のハーフコートで試合をすることだ。

 ただ、ディフェンスラインを非常に高く設定する分、ビルドアップにも積極的に参加するGKや、センターバック、ボランチのあたりでボールを奪われてしまうと、カウンターで一気に大ピンチに陥るリスクも大きい。個人的なひとつのミスが即失点につながるという危うさを持っているのも、このサッカーの特徴だ。横浜でも、そうした失点が今も目立っている。
 
 清水は元々ミスからの失点が多いチームだけに、それをどれだけ減らせるかという部分は懸念材料と言える。その点について、平岡宏章コーチに聞いてみた。

「ミスを減らすには、練習から本当にアラートな状態、試合に近い意識でやっていくしかないと思いますが、その意味ではかなりピリピリした中でトレーニングができていると思います。監督は練習の中でも勝ち負けにすごくこだわっていて、ボール回しやセットプレーのメニューでもポイントを数えて勝敗をつけたりしています。もちろん良いチャレンジをした中でのミスはOKですが、ケアレスなミスは練習から徹底してつぶしていくというところは追求できていると思います」(平岡コーチ)

 その成果が実戦の中で表われてくるかどうか。再開後のゲームで注目したいチェックポイントのひとつになる。

 その他にも、ディフェンスラインを高く保つためのラインコントロールの連動やGKとのコミュニケーション、ゴール前での粘り強さなど、守備面でもさまざまな課題があるが、まだまだ伸ばせる要素が多い分、選手たちも前向きに取り組めている。

 攻撃面に関しては、右ウイングの金子翔太に話を聞いた。

「(攻撃でも)自分たちのサッカーの完成度を上げるというところが大事だと思います。クラモフスキー監督のサッカーはすごく深いなと僕は感じていて、とくに僕らワイド(ウイング)の動きはかなり細かいです。動きの質で打開できるようなパターンとか動き方のバリエーションが多いですし、ポジションのとり方も、サイドバックが持った時の配置、ボールが逆サイドにある時とか、いろいろ細かくあります。自分の中で今までなかった引き出しを教えてもらっているので、そこがすごく新鮮だし、楽しいですね。これまでの2試合では、まだ出せていないことが多いですし、それが公式戦でも出せるようになってくれば、かなり面白くなると感じています」(金子)

 そこがチームとしてもっとも力を入れている部分で、その他にもうひとつのポイントを彼は挙げる。
「あとは1対1のサイドでの仕掛け、個人の突破力という部分もこの中断期間で極めていきたいです。今のサッカーだと僕らが1対1で仕掛ける場面も増えてくるので、そこの強化というのもポイントのひとつに挙げています」(金子)

 相手に守りを固められた際には、速いパス回しに加えて個人での打開という部分も重要になる。キレキレのドリブラーがいるチームではないので、そこも発展途上の部分だ。

 このような重点項目だけを見ても、やるべきことは非常に多い。この中断期間ではそれらに総合的に取り組んでいるところだ。3週間ちょっと(さらに長くなる可能性もある)のトレーニング期間で、どれだけ完成度を上げることができるのか。

 筆者個人としては、清水と横浜では選手が違うので、横浜のコピーではなく“清水オリジナル”の部分が再開後に見えてくることを楽しみにしている。

取材・文●前島芳雄(フリーライター)