ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

 皐月賞トライアルのGII弥生賞(中山・芝2000m)が3月8日に行なわれます。いよいよここから、4月19日に行なわれる牡馬クラシック第1弾、GI皐月賞(中山・芝2000m)への勢力図が徐々に固まっていきます。

 現状では、年末のGIホープフルS(12月28日/中山・芝2000m)を制して、皐月賞への直行を表明しているコントレイルが一歩リード。これに続くのは、GI朝日杯フューチュリティS(12月15日/阪神・芝1600m)を勝って、先日皐月賞直行が発表されたサリオスでしょうか。距離さえ持てば、コントレイルにとっては強力な対抗馬となり得ます。

 ただ、今年の3歳牡馬は、それ以外が手薄な印象があります。というのも、今年に入ってからの重賞で、意外な結果が続いているからです。

 GIIIきさらぎ賞(2月9日/京都・芝1800m)ではアルジャンナが、GIII共同通信杯(2月16日/東京。芝1800m)ではマイラプソディが、ともに単勝1番台の人気に応えられずに敗戦。年明けのGIII京成杯(1月19日/中山・芝2000m)でも、人気薄のクリスタルブラックが勝利し、2着に入ったのは牝馬のスカイグルーヴでした。

 おかげで、”打倒・コントレイル”という点においては、サリオス以外に面白味のある存在が出てきていない、というのが正直なところ。それだけに、今週の弥生賞をはじめ、若葉S(3月21日/阪神・芝2000m)、GIIスプリングS(3月22日/中山・芝1800m)、GIII毎日杯(3月28日/阪神・芝1800m)といった、今後のトライアルおよび前哨戦から楽しみな存在が出てくることを期待したいと思っています。

 まずは、弥生賞。今年からディープインパクトの功績を称えて、「ディープインパクト記念」という冠名がつきました。そんな事情から、ディープインパクト産駒のサトノフラッグ(牡3歳)が、武豊騎手が騎乗することもあって、人気を集める1頭になりそうですね。

 それはさておき、今年の出走予定は11頭。少頭数の争いで、ホープフルSでコントレイルに敗れた馬たちが中心、といったメンバー構成です。その分、ここから皐月賞へ向かう馬は、相当な成長ぶり、パフォーマンスを披露できなければ、本番で上位人気を得るまでには至らないでしょう。

 ともあれ、個人的にはホープフルS3着のワーケア(牡3歳)に注目しています。

 コントレイルには3馬身半差をつけられましたが、スタート直後に外の馬が内に寄ってきた煽りを受けて接触。位置取りを悪くしてしまった、という不利がありました。上がりの脚は、コントレイルや2着ヴェルトライゼンデとはほぼ変わらなかったので、そのスタート後の不利が、そのまま結果に響いた格好です。

 ハーツクライ産駒らしく、長くいい脚を使うワーケア。反面、ややエンジンのかかりが遅い印象があります。その点については、ホープフルSのレース後、主戦のクリストフ・ルメールも公式コメントとして話していたそうで、後手、後手の展開では持ち味を生かし切れなかった、ということだと思います。

 今回は、ホープフルSよりも少頭数。スタート自体は悪い馬ではないので、前走のような不利がなければ、新馬、アイビーSと2連勝した時と同じく、それなりにいいポジションを取って、レースを運べるはずです。

 近年、毎年のようにクラシック戦線で主役を張る馬に乗っているイメージがあるルメール騎手ですが、今年は今のところ、クラシックに臨む明確な”相棒”が決まっていません。

 今回で、ワーケアにはデビューから4戦連続の騎乗となります。ここでしっかりと結果を出して、胸を張って皐月賞へ向かいたいのではないでしょうか。

 ホープフルS組はほかに、5着オーソリティ(牡3歳)、6着パンサラッサ(牡3歳)、9着ブラックホール(牡3歳)の3頭が出走。不利を受けながら、3着まで押し上げたワーケアに比べると、現状ではいずれも見劣ります。休みを挟んでどれだけの成長があるか、というところですが、この時期にそこまでの急成長を望むのは、酷なような気がします。

 とすれば、伸び盛りの馬のほうに食指が動きます。先にも触れた、国枝栄厩舎が送り込むサトノフラッグです。3連勝で弥生賞制覇となれば、皐月賞本番でも注目を集めることになるでしょう。

 新馬戦では、何となく走る気が欠けていたようなサトノフラッグ。そのため、やや淡泊な負け方を喫しましたが、2戦目の未勝利戦では、まさにガラリ一変という勝ち方を見せました。これは、馬自身のポテンシャンはもちろんのこと、国枝厩舎の調整力のすごさだと思います。

 その未勝利戦(東京・芝2000m)では2歳レコードをマークし、続く1勝クラス(500万下)では、中山・芝2000mで2分01秒4の勝ち時計を記録。使用コースは違うものの、そのタイムはホープフルSでコントレイルがマークした勝ち時計と一緒でした。ここでも、十分に勝ち負けできるのではないでしょうか。

 連勝中は、オイシン・マーフィー騎手が手綱を取っていましたが、今回は武豊騎手と新たにコンビを組みます。「ディープインパクト記念」という呼称がついた最初の年に、武豊騎手が有力なディープ産駒に騎乗するというのは、何か出来すぎている印象もありますが、期待の1頭であることは間違いありません。

 ワーケアとサトノフラッグ。今年の弥生賞は、力どおりなら、この2頭の勝負になりそうです。ワーケア以外のホープフルS組は少々頼りないですし、自己条件で掲示板に載れていない馬は、なおさら厳しいでしょうからね。

 ということで、今回の「ヒモ穴馬」には、まだ底を見せていない馬、1戦1勝でここに挑んできたオーロアドーネ(牡3歳)を取り上げたいと思います。


弥生賞での一発が期待されるオーロアドーネ

 2月頭に東京・芝1600mの新馬戦で、2馬身差の快勝を決めたオーロアドーネ。抜け出してからも、最後まで衰えなかった脚色からして、2000mに距離が延びても十分に対応できると踏んでいます。

 デビューが遅かった分、まだまだ伸びしろがありそうですし、一発があるとしたら、キャリアを重ねて能力の底が割れている馬より、こういった未知の魅力を感じさせる馬だと思います。

 また、少頭数のレースであることも、オーロアドーネにとっては好材料。多頭数で揉まれる競馬になったり、新馬戦とは違うハイペースで、出入りの激しい展開になったりすると、どうしてもキャリアの浅さが露呈してしまうからです。今回の頭数とメンバーなら、落ち着いて走れると思います。 鞍上は、今週から復帰する三浦皇成騎手。先週、ケガから復帰したばかりの浜中俊騎手がいきなり重賞の阪急杯で勝利を飾りましたが、三浦騎手もしっかりと態勢を整えてから、今回の復帰を決めたようで、大仕事への期待が膨らみます。先週の調教での騎乗を見た感じからも万全の状態にあり、楽しみです。