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ひとくくりにされがち ヤリスフィット

text:Kouichi Kobuna(小鮒康一)

2月に入って立て続けにフルモデルチェンジを果たしたトヨタ・ヤリスホンダフィット

ヤリスはすでに多くの方がご存知の通りヴィッツの後継車であり、初代から海外で使用されていたヤリスという名前に日本仕様も統一されたもの。

ホンダフィット(上)とトヨタ・ヤリス(下)

つまり海外の初代ヤリスから数えると4世代目のモデルということになる。

そしてヤリスに数日遅れで登場した新型フィットも奇しくも4世代目となるモデル。

当初は昨年10月に発売する予定だったのだが、電動パーキングブレーキの不具合が判明して発売を延期することとなり、結果的にヤリスと同時期のデビューとなったというのが真相である。

とはいえどちらも世界戦略車のコンパクトハッチバックであり、価格帯も近く、どちらもガソリンエンジンとハイブリッドを用意するなど共通点は多い2車。

それだけにひとくくりにされてしまいがちなのは仕方のないところとも言えるのだが、実はじっくり両車を比較してみるとかなり似て非なる仕上がりになっていることに気づかされる。

それもパワーやカタログ燃費といった目に見える部分だけではなく、根底に流れるキャラクターにも違いがあるように思えるのだ。

次項からは筆者が感じたその違いをお伝えする。

WRC参戦車ベースのオーラを持つヤリス

先代モデルから世界ラリー選手権(WRC)で戦うラリーカーのベースともなっているヤリス

新型ではそのホモロゲーションモデルであるGRヤリスも用意され、東京オートサロン2020で初披露されている。

トヨタGRヤリス

ベーシックな5ドアとはそもそもボディ形状から異なる(GRヤリスは3ドア)が、その根底に流れる血は共通。

従来型で開催されていたワンメイクレースは5ドアモデルで継続開催されるので、モータースポーツの入門車という側面も持ち合わせていることは間違いない。

先代ではRSやGRといったスポーツグレードにのみの設定だったマニュアルトランスミッションも、新型では1.5Lガソリンエンジン車全グレードに用意されているのは3ペダル派には朗報と言えるだろう。

プラットフォームはトヨタのコンパクトカークラスとしては初めてTNGAを採用。軽量かつ高剛性、低重心なボディとなり、乗り心地だけではなく運動性能も大幅に向上。

トヨタいわく「軽快」かつ「Confident & Natural(運転中も車両が安定していて安心&ドライバーの意図通りに反応して自然)」な、クラスを超越した走りを実現している。

1.5Lエンジンは新世代のものとなり、ハイブリッドモデルに至ってはWLTCモード燃費で36.0km/L(HYBRID X)という驚異的な数値を実現している。

従来のトヨタ車は「80点主義」と揶揄されることもあったが、今回のヤリスは120点を目指したモデルと言えるかもしれない。

必要なエッセンスのみを凝縮したフィット

一方のフィットは、先代のやや装飾過多だったデザインには別れを告げ、非常にシンプルかつクリーンでありながら安っぽさは感じないデザインへ一変された。

モータースポーツのベース車としてのオーラを放つヤリスに対して、フィットは従来型にあったスポーティグレードの「RS」を廃止。その他のグレードにおいてもMT車は存在しないラインナップとなった。

ホンダフィット

その代わり、内外装やテイストの異なる5つのグレードを用意。どのグレードもパワートレインや安全装備には差異はなく、グレード(ランク)の違いではなく、好みの違いで選んでもらえるようにという配慮だろう。

ハイブリッドモデルはカタログ燃費ではヤリスに劣るものの、ホンダのコンパクトカーとしては初の2モーターハイブリッドシステムを搭載。

カタログ数値には現れないが、日常シーンのほとんどをモーターで走行し、優れた燃費を実現しながら走る楽しさをも提供するものに仕上がっている。

過去、リッター100ps超のハイパフォーマンスNAエンジンをリリースしていた頃のホンダファンからすると物足りなさを感じるかもしれないが、目に見える数値ではなく、実際に使ってよいと思えるクルマづくりを実践したのが新型フィットというわけだ。

もしヤリスフィットを比較するのであれば、どちらが優れているのかではなく、どちらが自分にマッチするのかという基準で選んでいただきたい。そう筆者は考えるのであった。