川崎から期限付き移籍で加入した知念。開幕戦に手応えも得たようだ。写真:徳原隆元

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 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、公式戦開催の延期が決まってからのクラブの対応は早かった。翌日から中断期間中の関連イベントや練習及び練習試合の見学を中止し、翌々日にはメディアの取材も非公開とした。片野坂監督は、「安全を考えたうえでの判断なので受け止め、再開に向けてコンディションを万全にし、いいスタートが切れる準備をしたい」と神妙な面持ちで語った。選手たちも同様に「これ以上感染が拡大しないためにも延期は仕方ない」と捉えている。

 あれから1週間が過ぎ、今も非公開練習は続く。「選手、監督、スタッフはいつものように試合に向けて準備をしている」とは西山GM。「2敗しているが試合内容は悪くない。チャンスは作れているし、これまでの積み上げは生かされている」。置かれた立場によって心の持ちようは変わるものだが、チーム全体に悲壮感はない。組織で戦う大分にとって、チーム戦術が成熟すればするほど強くなる。西山GMが「積み上げる時間が増えることは悪いことではない」と話したように、グラウンドレベルでの準備にはさほど支障はないと言える。

 昨季からの懸念材料であった得点力アップにおいては、多くのサイド攻撃を主軸に攻略できている。昨年よりクロスの回数はさらに増え、迫力を持って飛び込む選手も増えた。リーグ戦、カップ戦、どちらの試合も相手の守備を慌てさせた場面は数知れず、逆にピンチの回数は片手で済むほど。しかし、相手ゴールへと幾度となく襲い掛かったものの得点できず、PKとCK1本に沈んだ。勝負に勝って試合に負けた心境だろう。特にリーグ開幕のC大阪戦では、昨季リーグ最少失点のチームを相手に15本ものシュートを放ち、松本、知念のポストに当たったシュートがどちらかでも入っていたら違う結果になっていたかもしれない。

 勝負事に「タラ、レバ」は禁句だが、監督も選手も焦る様子はさほどない。知念は「ゴールは奪えていないがネガティブな印象はない、自分の形が見えてきた」と2試合の徐行運転で手応えを掴んだ。他の前線の選手も同じように漫然とプレーしているわけもなく、常に得点のイメージを描いてシュートを打っている。シュート練習では力まずにミートを徹底するなど、地に足をつけて一つひとつ練習と丁寧に向き合っている。もちろん「練習を一生懸命するだけではダメな世界。出場機会を与られなかった選手にとってチャンスでもある」(西山GM)と期待を込める。

 公式戦2連敗、そして長期中断により選手選考は横一線からの再スタートとなる。混沌とした先発争いで存在感を示すのは誰か。チーム内競争が未勝利のチームに、巻き返しの息吹をもたらしている。公式戦再開へ向け、すでに臨戦態勢は整っている。

取材・文●柚野真也(フリーライター)