今季から新潟を率いるアルベルト監督。過去にバルサ下部組織の要職に就いた経験もある。写真:大中祐二

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 新潟県内で初めての新型コロナウイルス感染者が確認されたのは、2月29日のことだ。この日、アルビレックス新潟はオフ。本来ならば、2節の松本山雅FC戦前日で、開幕のザスパクサツ群馬戦に勝利した勢いに乗ってアウェーに乗り込むため、最終調整をしているはずだった。

 4日前にJリーグの延期が決まったことを受け、チームのスケジュールも変更されていた。29日、そして3月1日と2日間、オフを取ってトレーニングは再開。練習後、アルベルト監督は選手たちの取り組む姿勢を称えた。
「公式戦がないのに集中を維持するのは難しい。しかし、選手たちはしっかりプレーしてくれたし、彼らの人間性は本当にすばらしい」

 現時点で延期が決まっているのは、15日までのすべての公式戦。アルベルト監督は、18日、ホームの5節・ファジアーノ岡山戦に照準を合わせて、準備を開始した。水曜日の再開を前提に、1週間に1試合のペースでトレーニングゲーム(非公開)を組み、併せてトレーニングの負荷を上げることで、公式戦が行なわれている状態にできるだけ近い強度と緊張を保てるように、調整が図られた。

 J2降格から3シーズン目。新潟はクラブ初のスペイン人指揮官として、バルセロナの下部組織で要職を務めたキャリアを持つアルベルト監督を招へいした。コーチングスタッフも一新され、新たなチームづくりが始まった。1か月の高知キャンプで重点が置かれたのは、パススピードを速くすることでプレーのテンポを上げることと、攻撃から守備へ素早く切り替えることの2点だった。

 それらを包み込むように、ラインを高く保ち、コンパクトな陣形で戦うスタイルが築かれつつある。アルベルト監督が、ことさらコンパクトさにこだわるのは、積極的に前からプレスをはめてボールを奪うためであり、失った瞬間、ボールを奪い返しにいくためである。攻めるにはボールが必要で、ボールを自分たちのものにするため守備をする。チームの方向性が、徐々に明確になってきた。
 
 開幕の群馬戦は、強烈な風の中で行なわれた。あらかじめ地面に伏せられていた広告ボードが、あおられ、吹き飛ぶほどの強風だった。0-0で折り返した前半は風下で、放ったシュートもわずかに1本。しかし、そんな強風下で背後を突かれることにおびえ、チーム全体が下がってしまうのではなく、ラインを高く保ち続けたところに、キャンプからの取り組みが垣間見えた。80分過ぎまで試合は動かなかったが、82分に渡邉新太、86分にロメロ・フランク、88分にファビオがゴールネットを揺さぶり、3-0で勝利した。

「私はリアリスト」と自認するアルベルト監督は、「3-0というスコアに勘違いを起こしてはいけない。とても難しい状況の試合での、難しい勝利だった」と群馬戦を振り返る。重要なのは、選手たちが新たな取り組みに対し、勝利という結果で自信を増したことだ。

 チームは発展途上で、完成には数か月を要するが、アルベルト監督はその間も勝ちを重ねていかなければならないと、事あるごとに繰り返す。完成の域に、一足飛びにたどり着くことはできず、1試合ずつ戦っていくしか道はないと、選手はもちろん、メディアを通してサポーターにも発信し続けるアルベルト監督は、まさしくリアリスト。チームはリーグの中断中、「次の試合」に向け、地に足を着けて全力で準備を進める。

取材・文●大中祐二(フリーライター)