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日本のキャンピングカー バンコン/キャブコン主流

text:Kumiko Kato(加藤久美子)

キャンピングカーと言えば、「移動できる家」というイメージを持っている人も少なくないだろう。

確かに、本場アメリカの巨大なキャンピングカーは、モーターホームとも呼ばれる「エンジンの付いた家」のようなタイプが主流だ。

キャンピングカーに設置されるトイレ。

日本のキャンピングカーはどうだろう。

国土が狭いうえに平地が少ない日本で使うには、当然、アメリカのような巨大なモーターホームは適さない。

それで、日本のキャンピングカーは、全長5m×全幅2mhほどのキャブコン(キャブオーバーコンバージョンの意味)が主流。

小型トラックのキャブ付きシャシーをベースに架装)やひとまわり小さなバンコン(ハイエースやキャラバンなどのワンボックスやミニバンをベースに架装)にカテゴライズされるタイプとなる。

日本キャンピングカー協会(JRVA)の調査によると日本で保有されているキャンピングカーはバンコンとキャブコンで全体の約7割を占める。

日本で主流とされるキャンピングカーには、かつては多くがトイレとシャワーを備えていたのだが、近年はそれが減っているという。ユーザーがそれらの装備を望まないのだ。

「日本キャンピングカー白書」のデータでもその傾向は明らかだ。

キャンピングカーにおける、関心度が高い装備は?」というアンケートの結果を見てみよう。

オーナー関心度 「トイレ11位/シャワー13位」

キャンピングカーを製造販売するいくつかの専門店に昨今のトイレ&シャワー事情を聞いてみた。

「トイレとシャワーは、キャンピングカーにおけるかつての定番装備でしたが、近年はオーナーさんからの要望にもあまり上がって来ませんね」

出典:日本RV協会「2018年キャンピングカー白書」

「これは、軽トラや軽1BOX車をベースにしたキャンピングカーが増えてくるなど、全体的に小型化が進んでいることも理由の1つです」

「トイレやシャワーは場所を取りますしコストもかかる。それでいて使い勝手はあまり良くないと言われます」

「トイレ&シャワーを備えているキャブコンでも実際にはほとんど使われることなく収納スペースになっているケースも少なくないです。」

キャンピングカーのトイレには、ポータブル式、カセット式などいくつかタイプがありますが、当然のことながら汚物は自分で処理しなくてはなりません」

「ダンプステーション(汚物処理設備)を備えるキャンプ場があればその場で処理できますが、道の駅や高速道路のSA/PAでは捨てられませんので家に持ち帰って処理することになります」

キャンピングカーのトイレは極力簡単に、不快感を無くして処理できるよう、工夫がされていますが、やはりこの作業にストレスを感じる人も多いでしょう」

「渋滞時や災害時などでトイレが使いにくい状況では、キャンピングカーのトイレは心強いでしょう」

最新トイレ「自動ラップ式」 自動的に密封

値段は16万円(税別)と少々張ってしまうが、においもなく、処理の手間も掃除もほとんど必要ない最新式のトイレがある。

タンクを外して中の汚物を流して掃除して……という手間から完全に開放されるのが「ララップポン・トレッカーWT-4」だ。

ララップポン・トレッカー 出典:ララップポン・トレッカー

これは自動ラップ式排泄処理ユニットを搭載したポータブルトイレのこと。においを遮断する特殊フィルムで、排泄物を自動的に密封し、燃えるごみとして捨てることができる。

水を全く使わないため災害時などでも便利とあって全国の自治体や官公庁、一般企業や病院、自衛隊などに多数導入されている。

キャンピングカー専用というわけではないが、もちろんキャンピングカーの中で快適に使うことができる。(ラップするには電力が必要)

このようなトイレなら積極的に使いたいと思う人も多いだろう。

また、トイレよりもさらにキャンピングカーオーナーの関心が低いのがシャワーである。

シャワーはトイレのような緊急性が低いからか「なければなくても問題ない」というオーナーも多そう。

近年は全国各地に大規模な駐車場を備えた日帰り温泉施設が増え、ホテルや旅館などでも温泉だけの利用を可能とするところも多い。

旅先での温泉巡りがキャンプの楽しみになっている人も少なくないだろう。

高速道路のSA/PAにコインシャワーを備えるところも増えている。

シャワーに関心がないことには、もう1つの理由があるようだ。

シャワーに関心がない、もう1つの理由

しかし、実はシャワーに関心がない理由は、緊急性がない、日帰り温泉に行くので不要などの他にもう1つ重要な理由がある。

それは、「ホントに使えるキャンピングカー用シャワーが少ない」ということだ。

キャンピングカーに設置されるトイレ/シャワー。

これまで3台のキャンピングカーを乗り継いできた、キャンピングカー歴30年のKさんは以下のように分析する。

「最初から装備されるシャワー設備があまりにも貧弱(水圧が低い、湯量が十分ではない、温めるのに時間がかかる,清水タンクへの給水がやりにくい他)、で、これを使ったオーナーが、このレベルでは到底実用には向かないとシャワーを使わなくなるのです」

「そして次回買い替えるときには『シャワー無しでいい』とシャワーへの関心度が低くなっていくんですね」

「ですが、使えるシャワーなら絶対備えるべきです。行楽シーズンは日帰り温泉施設も大混雑で、サイズの大きなキャンピングカーは駐車するのも大変」

「また、泥だらけになったアウトドアグッズの汚れや大きな鍋を洗うのにも使えます」

ちなみにKさんは現在キャブコン(キャブオーバーコンバージョン)を所有しており、「電気のない場所でも水→お湯がすぐにできて、たっぷり(100L前後)使えることから、ポータブルのガスボイラーでお湯を作ってシャワーを使用しているとのこと。

トイレとシャワー。キャンピングカーの利用頻度や日程、人数などによって設置の有無から考えるのが良さそうだ。