選手権決勝では見事な同点弾を決めた加納。今季は攻撃陣の柱として期待される。写真:徳原隆元

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 青森山田との激闘を鮮やかな逆転劇で制した今冬の高校サッカー選手権決勝から約1か月半。悲願の単独初優勝を果たした静岡学園が2度目の頂点を目指し、新たなスタートを切っている。

 今季の核は昨季の選手権を経験した3選手。ファイナルで鮮やかな同点ショットを叩き込んだ加納大(2年)、U-18日本代表でJクラブが熱視線を送るSBの田邉秀斗(2年)、清水Jrユース出身のGK野知滉平(2年)だ。彼らを軸に4−3−3の布陣から繰り出す“靜学らしい”アタックは健在で、変幻自在のテクニックと豊富なアイデアを生かした攻撃力が今年もチームの生命線となる。ただ、そう簡単に勝てるほど、高校サッカーは甘くない。

 特に今年は王者として追われる立場だ。川口修監督は言う。
「練習試合をする度に相手から『チャンピオンチームとゲームができるんですか』と言われます。でも、それは去年の選手たちの結果で、今年は全く違うチーム。だけど、そういう見方をされている実感があるし、今年は日本一のチームだと相手に思われる」

 また、メディアなどに取り上げられる機会も増え、冬の檜舞台でスポットライトを浴びた選手が勘違いしてしまう場合も少なくない。

 そうした環境の変化は、静岡学園も例外ではない。天狗となった選手はいないが、優勝の余韻に浸ってしまった者も見受けられたと指揮官は言う。近所のコンビニに行くだけで声を掛けられる選手もおり、選手への注目度が劇的に変わった。

 そうした姿勢が出てしまったのが、1月中旬から始まった県の新人戦だ。清水国際との初戦、浜松西との3回戦は快勝したものの、以降は苦戦。清水東との4回戦、焼津中央との準々決勝は延長戦でなんとか勝ち切り、薄氷を踏む戦いが続いた。しかし、準決勝の藤枝東戦は0−2で敗れ、県下のライバルに苦渋を舐める結果に。3回戦以降はU-18代表のスペイン遠征で田邉を欠いたとはいえ、不甲斐ない出来に選手はがっくりと肩を落とした。野知も当時の状況を振り返り、チーム作りの難しさをこう話す。

「去年、全国大会で優勝したことで周りから見られているのは分かっていた。なので、今年の代も強くないといけないと思っていたのに、新人戦では良い結果を出せなかった。新人戦はフワッとしていたんです。チームを立ち上げて間もなかったので、まとまりがなかった」

 ただ、その失敗を無駄にしては意味がない。選手たちは自分たちの現在地を知る機会と捉え、敗戦を素直に受け止めた。
 
 川口修監督は言う。

「勘違いしていた選手たちはいないけど、『俺たち、今年は力がないな』と実感したと思う。準決勝は何もできず、相手に圧倒された。でも、逆にこれが良かった。選手が自分たちの力に気が付いてくれたし、そこからどう改善しようかと考えればいい」

 新人戦から1か月が経った。プレーの質が劇的に変わったわけではない。だが、練習に取り組む姿勢はチーム全体で以前と変わりつつある。リーダー候補の田邉も責任感が増し、自覚が出てきたという。

「今年は自ら言う選手が去年よりも少ない。自分が嫌われ役になってでも、きついことを仲間に言わないといけないし、率先してやらないといけない」

 現状ではまだまだ発展途上。だが、地道な積み重ねを続ければ、さらなる進化が見えてくる。

「今はうまくいっている状況とは言えないけど、チーム全体で目標に向かって意識してやっていけば、それが伸びしろ。本当に(去年の選手権を経験した)選手たちが巻き込んでチームを引っ張っていければ可能性はある」(加納)

 連覇を目指し、今季を戦う静岡学園。長いシーズンを考えれば、春先の挫折は決して無駄にはならない。

取材・文●松尾祐希(フリーライター)