古馬中距離路線の伝統の重賞、GII中山記念(中山・芝1800m)が3月1日に行なわれる。

 過去、ここをステップにして、ヴィクトワールピサがドバイワールド(UAE・AW2000m※現在はダート2000m)、ジャスタウェイがドバイデューティフリー(現ドバイターフ/UAE・芝1800m)といった海外GIを制覇。昨年も、ウインブライトがここを勝って、海外GIのクイーンエリザベスII世C(香港・芝2000m)を制している。

 こうした例もあるとおり、春の大一番に向けて、ここから始動する実力馬が毎年たくさんいる。ゆえに例年、GI級の馬が多数参戦し、ハイレベルな一戦となる。

 ところが、意外にもそうした有力馬の多くが、ここでは揮(ふる)わない。過去10年の結果を見ても、1番人気はわずか2勝。残りは2、3着もなく、すべて着外に終わっている。昨年も、1番人気のディアドラが6着に沈んだ。

 そして今年も、出走予定9頭と少頭数ながら、5頭のGI馬が名を連ねて、ハイレベルなメンバー構成となっている。そのうち、有力視されているのは、インディチャンプ(牡5歳)、ウインブライト(牡6歳)、ダノンキングリー(牡4歳)、ラッキーライラック(牝5歳)だが、過去の傾向からして、この4頭ですんなり決まるとは思えない。馬券検討においては、波乱も想定しておく必要があるだろう。

 では、どういった馬が穴馬候補となるのか。日刊スポーツの太田尚樹記者は、「年明け初戦になる馬が多く、状態の見極めが大事になってくると思います」と言って、ペルシアンナイト(牡6歳)の名前を挙げた。



中山記念での一発が期待されるペルシアンナイト

「ペルシアンナイトは今回、およそ3カ月ぶりの実戦。これまでの成績から”叩き良化型”のイメージが定着していて、人気を落とすと思いますが、侮れない存在だと思います」

 3歳時にGIマイルCS(京都・芝1600m)で戴冠を遂げたペルシアンナイト。そのほか、GIで2着が3回、3着が1回あって、たしかにその実績は、前述の有力4頭とも引けを取らない。 

 ただ、マイルCS以来、勝ち星はなく、一昨年のこのレースでも、1番人気で5着に敗れている。それでも、推せる理由はどこにあるのか。太田記者はこう語る。

「2年前の中山記念の敗戦は、後方待機の競馬をして、前残りのペースに泣かされた格好。上がり3ハロンはメンバー最速の時計を記録しており、決して力負けではないでしょう。

 何より、今回は仕上がりのよさを感じます。CWで行なわれた2週前と1週前の追い切りでは、いずれもラスト1ハロンで11秒5という好時計をマークし、鋭い切れ味を披露。最終追い切りでも、併走馬を楽々と突き放していました。

 同馬を管理する池江泰寿調教師も、『牧場で順調に乗り込めて、スムーズに調教をこなせた。(馬体は)太くもなく、細くもない』と評価しています。昨年のマイルCS(11月17日)でも、スローペースを追い込んで3着を確保。まだまだ衰えていません。

 3歳時には、GI皐月賞(中山・芝2000)で2着。中山との相性は悪くないと思いますし、2年前の敗戦で人気が落ちるようなら、なおさら狙い目です」

 一方、中日スポーツの大野英樹記者は、少頭数ならではの展開の妙に注目。超人気薄の1頭に目を向ける。

「マルターズアポジー(牡8歳)です。このメンバー、この頭数なら、同馬の逃げが面白いと思っています。インディチャンプ、ウインブライト、ラッキーライラックといった人気を背負う馬は、いずれも好位。それぞれがけん制し合って、仕掛けが遅れる可能性は十分にありますよ」

 とはいえ、マルターズアポジーは、ここ6戦がすべてふた桁着順。しかも、8歳馬で上がり目は見えないが、大野記者はどういった要素から同馬の激走に期待するのだろうか。

「前走のGIII京都金杯(1月5日/京都・芝1600m)では、この馬らしく飛ばして逃げたものの、14着と大敗。レース後、鞍上の松若風馬騎手が『自分の競馬をしましたが、直線では手応えが残っていなかったですね』と振り返ったように、本来の粘りを発揮できなかったわけですが、それは単純に、休み明けによる影響が出たとも考えられます。

 また、今回は小回りの芝1800m戦。かつて、GIII福島記念(福島・芝2000m)、GIII小倉大賞典(小倉・芝1800m)を勝っている実績から、最も力を出せる条件だと思います。さらに鞍上が、この馬に重賞3勝をもたらした武士沢友治騎手に戻ります。これも”買い”の材料となるひとつです」

 思えば、2走前のGIIスワンS(11着。京都・芝1400m)と、3走前のGIスプリンターズS(14着。中山・芝1200m)は、同馬にとって適距離ではなかった。4走前のGIIIエルムS(14着。札幌・ダート1700m)は、初のダート戦だったし、5走前のGIII七夕賞(13着。福島・芝2000m)も、休み明けで、緩い馬場も合わなかった。そして、6走前のGIIIダービー卿チャレンジトロフィー(14着。中山・芝1600m)は、1000mのラップが56秒5という超ハイペースに泣かされた。

 過去6戦の惨敗にはしっかりと敗因があって、今回は開幕週の馬場という点が大きな味方になりそう。そして、同馬にとって、ここが引退レースとのこと。一昨年のレースで3着と善戦した再現があるか、注目である。

「人気上位勢は皆、先を見据えた叩き台。ここが”ラストラン”というこの馬は、すべてのパワーを注ぎ込んできますから、軽視しすぎるのはどうかと思いますよ」(大野記者) 無観客での開催が決まった今週の中央競馬。まさしく波乱含みとあって、中山記念でも思わぬ結末が待っているかもしれない。その一端を担うのが、ここに挙げた2頭であってもおかしくない。