憲法こそわが国の最高法であり、日本の未来を左右し得る指針です。どんな国家権力も憲法に逆らうことはできず、簡単に変えることもできません。憲法改正の判断は、最終的には国民投票に委ねられます。
「日本国憲法」改正の議論は、遠からず私たちひとりひとりに突きつけられるでしょう。そのときしっかり考えるためにも、憲法がうまれるまでのストーリーを知っておきましょう。

4コマで日本国憲法




関連用語

日本国憲法(にほんこくけんぽう)

1946年(昭和21)11月3日公布,翌年5月3日施行された現行憲法。形式上は,大日本帝国憲法第73条の改正手続きにもとづき,枢密院への諮詢(しじゅん),第90帝国議会での議決により成立した。大日本帝国憲法が民主的改革に障害であるとみたマッカーサーは,GHQの方針を牽制しうる極東委員会成立前に新憲法を制定しようと考えていた。46年1月幣原(しではら)内閣の国務相松本烝治(じょうじ)を委員長とする憲法問題調査委員会が草案を起草したが,国民主権・非軍事化の点で不十分だとしてGHQは拒絶,2月以後民政局ベースの起草が開始された。民間の憲法草案も発表され,憲法研究会の草案のみが国民主権を明示していたこともあり,総司令部に影響を与えたといわれる。同年3月6日,政府はGHQ案にもとづく「憲法改正草案要綱」を発表,多少の修正をへて日本国憲法案を得た。日本国憲法は11章103条からなり,国民主権,戦力不保持と交戦権の否認を含む徹底した平和主義,基本的人権の尊重,地方自治の保障などを内容とする。また議院内閣制をとり,司法権の独立も保障している。第9条の戦争放棄の条文と自衛隊との整合性をめぐる論議や,占領軍の押しつけ憲法であるから改憲せよとの論議もあるが,おおむね戦後日本の社会に定着している。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)

大日本帝国憲法(だいにほんていこくけんぽう)

明治中期〜昭和前期の日本国家の基本となった憲法。通称は明治憲法。ヨーロッパで憲法調査にあたった伊藤博文を中心に,おもにプロイセンやドイツ諸邦の憲法を範に起草。枢密院の審議をへて1889年(明治22)2月11日に欽定憲法として発布され,90年11月29日に帝国議会の開会とともに発効した。全76条。この憲法によれば,天皇は国の元首として統治権を総攬(そうらん)し,法律の裁可,議会の召集,衆議院の解散,陸海軍の統帥・編制,宣戦・講和,条約の締結,文武官の任免,緊急勅令の発布など広範な大権を有し(第4〜16条),憲法の条規により統治権を行使することとされた(第4条)。国務大臣は天皇を輔弼(ほひつ)し責任を負うとしているが,国民・議会への責任は明文化されていない。国民は公務への就任や請願の権利,法律によらない逮捕の否認,言論・出版・集会・結社・信教の自由や所有権の不可侵などを制約つきながら認められた。帝国議会は衆議院・貴族院の二院制で立法や予算議定などの権限をもった。大日本帝国憲法の発布により天皇を中心とする国家体制が確立されるとともに,国民の国政に参与する途も開かれ,日本はアジアにおける唯一の立憲国家となった。この憲法には君権主義と立憲主義の原理が併存し,解釈の幅は大きく,大正期には立憲主義的理解が深まったが,1930年代後半以降,軍部の台頭で立憲主義的要素は骨抜きとなった。第2次大戦の敗戦により実質的機能は失われ,47年(昭和22)5月3日,日本国憲法にかわった。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)

連合国軍最高司令官総司令部(れんごうこくぐんさいこうしれいかんそうしれいぶ)

1945年(昭和20)10月,連合国軍最高司令官マッカーサーのもとに総司令部(General Headquarters 略称GHQ)が設置された。総司令部のなかでとりわけ民政局・経済科学局は,占領改革に関する政策形成に強い指導力を発揮した。他方,対日占領はドイツの場合と異なり,日本政府の存在と機能を認めたうえで実施された。その結果,総司令部の各部局は,日本政府との非公式協議を通して占領政策を形成する側面もあった。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)

Douglas MacArthur(マッカーサー)

生没 1880.1.26〜1964.4.5 アメリカの陸軍元帥。日本占領の連合国軍最高司令官。アーカンソー州生れ。1903年陸軍士官学校を首席で卒業,30年史上最年少の50歳で参謀総長に就任。35年フィリピン軍事顧問。41年現役復帰し,新設の米極東軍司令官として第2次大戦の対日戦を指揮。45年(昭和20)8月連合国軍最高司令官に就任,日本占領政策を遂行,「青い目の大君」の異名をとる。朝鮮戦争の作戦指導のあり方をめぐりトルーマン大統領と対立,51年4月解任された。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)