Jリーグの歴史において、2011年は特筆すべき偉業が成し遂げられたシーズンとして記録されている。

 その年、J2からJ1へ昇格したばかりの柏レイソルは、開幕3連勝でスタートダッシュに成功すると、その後も首位を快走。何度か順位を下げることはあっても、シーズンを通して5位以下に落ちることはなく、最後は連覇を狙う名古屋グランパスを振り切り、堂々と先頭でゴールテープを切った。

 それは、1部リーグ昇格1年目にしての優勝という、世界的に見てもほとんど前例のない快挙だった。

 あれから9年。柏が再び、ただならぬ気配を漂わせている。

 一昨季、J1でまさかの17位に終わり、3度目のJ2降格を味わった柏。しかし、2011年当時にチームを率いていたネルシーニョ監督を再び迎えると、生気を取り戻した柏は昨季、J2優勝で1年でのJ1復帰を遂げた。

 そして、J1昇格1年目の今季も、ルヴァンカップ第1節(1−0ガンバ大阪)と、J1第1節(4−2コンサドーレ札幌)で、早くも”開幕2連勝”。各メディアの順位予想では、柏を今季のダークホースとして推す声も少なくないなか、9年前を想起させる好スタートを切っているのである。

 昇格1年目にもかかわらず、今季の柏がこれほど高い評価を受ける(と同時に、それに応える結果を出している)理由は、どこにあるのだろうか。

 まず、そのひとつとして挙げられるのは、充実した戦力だろう。

 外国人選手の当たりはずれが、チームの成績に大きな影響力を持つJリーグにあって、FWオルンガ、MFクリスティアーノ、MFヒシャルジソン、FWマテウス・サヴィオら、柏が擁する助っ人は、昨季の段階で”超J2級”のレベルにあった。J2では1試合に4人まで使える外国人枠を持て余すチームも少なくないなか、柏はJ2にいながら、すでに質量ともにJ1で戦えるだけの外国人選手を備えていたのである。

 しかも、彼らが今季もチームに残留したうえ、このシーズンオフには日本人選手の補強も積極的に展開。J1、J2を問わず、他クラブのレギュラークラスを次々に獲得し、戦力は厚みを増した。昨季からの戦力アップ率で言えば、おそらくJ1でもトップだろう。

 とはいえ、選手獲得による戦力補強が、そのままチームとしての強さに変換されるわけではないことは、Jリーグの歴史のなかでいくつものチームが証明している。その意味で言えば、今季の柏をダークホースたらしめる最大の理由は、むしろ他にある。

 昨季からの継続的な強化である。

「去年から継続してやっていることで、信頼関係が生まれている。その意味では、チームの成熟度が増していると言えるだろう」

 これは、9年前のJ1でのシーズン中に、ネルシーニョ監督が口にした言葉だが、今季のチームにもそのまま通じるものだろう。

 どのチームにとっても、J2降格は屈辱的な出来事である。だからこそ、一刻も早くJ1へ戻りたいという気持ちを強くする。

 だが、2010年シーズンも、そして昨季も、ネルシーニョ監督は決してJ1昇格だけをターゲットにはしていなかった。Jリーグでの経験豊富な69歳の知将は、「昨季はJ1に復帰するというミッションを掲げて戦ってきたが、その一方で、J1復帰を見越して、若手を中心にクオリティの高い選手の補強にフロントが動いてくれた」と語り、こう続ける。

「J1を戦うための、クオリティの高いチームが準備できたと思う。J1への思い入れは格別なものがあり、選手も意欲的に取り組んでくれている」

 高い位置から力強いプレスを仕掛け、奪ったボールを素早く相手ゴールへ向かって運んでいく。昨季J2を戦うなかで、柏はそんなスタイルを確立していった。ネルシーニョ監督が、選手たちに厳しく求めていたのは、「インテンシティ」と「テンポ」。勝った試合であろうと、必要な要素が欠けていれば、それを口酸っぱく言い続けてきた。

 昨季J2での42試合をこなすなかで身に着けたスタイルは、柏が今季J1を戦ううえでのベースとなるものだ。ネルシーニョ監督は、「どの試合でも、どのタイミングでもやれるとは思わないが」とつけ加えたうえで、こう話す。

「高い位置でボールを引っかけられれば、相手ゴールの近くから攻撃を仕掛けることができる。相手は守備の準備ができておらず、有効な攻撃を仕掛けられるだけのスペースもある。高い位置からの守備は、レイソルのスタンダードになっていくと思う」

 J2を戦うなかでチーム作りを進め、上でも通用する態勢を整えたうえで、J1に乗り込む。そんなサイクルですでに実績を残していることが、昇格1年目にもかかわらず、柏の前評判を高めているのだろう。

 しかしながら、J1昇格即優勝を果たした9年前との比較で言えば、前年のJ2での戦いぶりを見る限り、今季の柏にそこまでの強さは感じられない。

 堅守をベースにしつつも、MFレアンドロ・ドミンゲスを中心に流れるような攻撃で得点を量産していた2010年当時の柏は、明らかにJ2レベルを超えていた。今すぐJ1に入っても、上位争いができる――J2での試合を見ながら、そんなことを思ったものだ。

 それに比べると、現在の柏は、戦いぶりが不安定で、やや大味な印象を受ける。実際、J2優勝時の成績を見ても、2010年が23勝2敗11分けの勝ち点80だったのに対し、昨季は25勝8敗9分けの勝ち点84。試合数が異なるため、1試合あたりの勝ち点で比較すると、2010年が2.22、昨季が2.00と、1割ほど勝ち点を減らしている。同じ優勝でも、昨季のそれは、2010年の時ほど他を圧倒した感はなかった。

 言い換えれば、9年前の再現、あるいはそれに近い結果を残すためには、昨季からのベースを生かすのはもちろんのこと、そのうえで相応のプラスアルファが必要になるだろう。

 では、9年前を再現すべく、プラスアルファとなりうる要素は何か。その可能性を秘めるのが、背番号14のストライカー、オルンガだ。


J1開幕戦で2ゴールを決めたオルンガ

 このケニア代表FWの魅力は、パワーとスピード。身長193cm、体重85kgという体格を生かし、マークにつくDFを軽々と跳ね飛ばしてボールをキープできるばかりか、大柄でありながら、DFラインの背後に抜け出す速さも備える。奪ったボールを素早く前線に預けたい柏にとっては、最適なFWだ。

 技術的にやや粗さがあるのは気になるところだが、J1の舞台でオルンガの爆発力が覚醒するようなら、柏はもはやダークホースではいられなくなるだろう。一昨季の途中に加入したオルンガは、試合を重ねるごとにチームにフィットしてきており、まだまだ実力は底が見えていない。それだけに、期待は高まる。

 オルンガは今季の公式戦2試合で、早くも2戦連発の3ゴールを記録。それでも、浮かれた様子を見せることなく、「長いリーグが終わった時に、自分がどれだけできたかが重要」と言い、決意の言葉を口にする。

「J1はレベルが高いリーグであり、J2よりも優れた相手と戦わなければならない。そのためには、自分もプレーのレベルを上げていかないといけない。ゴールできたことはうれしいが、個人よりもチームが優先。自分はチームファーストのなかでベストを尽くす。いいスタートが切れたが、個人のゴール数はそんなに重要ではない」

 継続の強さと、オルンガのプラスアルファ。偉業を再現するためのカギである。