英病院、4時間以上待たされることも 新型ウイルス対策に懸念=BBC調査

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ニック・トリグル保健担当編集委員

イギリスの国民保健サービス(NHS)で、病床不足が問題となっている。BBCが行った調査では、重篤な患者が数時間にわたり、ストレッチャーの上で放置されている実態が明らかになった。

イングランドで昨年12月から1月に入院が必要だった患者の4分の1近くが、ベッドが見つかるまでに4時間以上待たされていた。

またこれにより、救急車で運ばれて来る人も長い時間待たされることになり、病院の外にも影響が広がっている。

専門家は、新型コロナウイルスによる感染症(COVID-19)に対応する「余裕はほとんどない」と警告している。

新型ウイルスが世界各地に広がる中、パンデミック(世界的流行)やイギリスでのアウトブレイク(大流行)を懸念する声が上がっている。

BBCは今回、NHSイングランドが公表しているデータを元に調査を行った。その結果、今冬に重篤な患者が診療を待つケースが急増していることが明らかになった。

王立看護学協会は、病院では医療従事者が、通路や空き室などで患者に酸素吸入や点滴などの措置を施さざるを得ない状況にあると説明。その上で、こうした状況は受け入れられるものではなく、またみっともないもので、患者を危険にさらしていると述べた。

NHSイングランドは、病床の需要増に苦難しているが、病院での雇用促進や待ち時間の削減に向けた投資が助けになるだろうと話した。

NHSイングランドの広報担当者は、医療従事者は「最大限の努力を払っている」と称賛した。

93歳女性、「ストレッチャーの上で6時間待たされた」

ケイト・ミルソムさんも、病院で長時間待たされたひとりだ。

93歳のミルソムさんは1月、自宅で倒れた後にロンドンのヒリングドン病院へと運ばれた。

救急車はすぐにやって来たが、病院についてからが長かった。

ミルソムさんはストレッチャーに乗せられたまま、病院の廊下で6時間待たされた。その間は、救急車で付き添ってくれた救急救命士が付き添ってくれたという。

「痛みがあった。以前に腰の骨を折ったことがあったのでとても心配だった」とミルソムさんは語った。

「スタッフの人たちは親切だったけれど(中略)みんなとても忙しそうだった」

ミルソムさんは最終的にベッドを見つけて入院。次の日に退院することができた。

NHSは、個別の案件には答えられないとした一方、病院が多忙になっている今、長い時間待たされる患者が出てきていることは認めた。

その上で、医療従事者はこうした待ち時間を「最小限に抑えるよう」努力しており、全ての患者の安全をモニタリングしていると話した。

調査で分かったこと

救急外来がこの冬、待ち時間を4時間以内に抑えるという目標を達成できていないことは、すでに報道されているとおりだ。

BBCは今回、イングランドの救急外来について、その前後の待ち時間について調査。その結果、救急外来に来てから診察を受けるまでだけでなく、診察から入院の間にも長い待ち時間が発生していることが明らかになった。

この冬だけで、19万9000人の患者が、救急部門での診察後に4時間以上、病床が見つかるまで「ストレッチャーで待たされて」いた。

これは、4年前に比べて2倍以上の人数だ。

一部の病院では、患者の半数が4時間以上待たされていることも明らかになった。

また昨年12月から今年1月の2カ月間で、救急車で運ばれた患者の7人に1人、約13万人が、到着してから病院のスタッフに引き継がれるまでに最低でも30分待たされていたことがわかった。

イングランド以外の地域でも同じような状況が生まれているものの、BBCの統計方法では直接的な比較が不可能だった。

王立看護学会は、状況は非常に悪化しており、多くの病院で看護師が廊下でも処置に当たり、患者に酸素マスクや抗生物質の点滴を施していると話した。

同学会の緊急治療協会のデイヴィッド・スミス会長は、「これは我々が患者に与えたいものではない。みっともないし、もちろん安全上の懸念もある」と話した。

「患者にとって居心地よく、容体が悪くなった時にすぐに対応できるよう、最善を尽くしている。しかしこのような状況に患者がいるのは、看護師にとってもつらいことだ」

パンデミックが起きたらどうなる?

新型コロナウイルスは、これ以上ないほど悪いタイミングで流行している。

NHSにとって、今年の冬はここ数十年で最も過酷な季節になっている。

世界保健機関(WHO)は先に、各国政府にパンデミックに備えるよう呼びかけた。パンデミックとは、世界各地で同時多発的に病気が流行する状態を指す。

中国・武漢で発生したCOVID-19はこのところ、イタリアや韓国、イランなどで急激に患者が増えている。

イギリスではこれまでに13人の陽性反応が確認された。全員がアジアで感染しており、現時点ではイギリス国内での感染例はない。

感染者は5カ所の呼吸器専門病院で治療を受けているが、必要になればイギリス全土で19カ所がさらに治療に使われるという。NHSは、緊急時対応計画があるとしている。

また、感染者が病院に来た場合に備え、すべての病院で隔離ユニットを設置することが決まった。政府は感染が疑われる場合は自宅などで自主隔離を行い、NHSに連絡するよう求めている。

イングランドの保健当局のトップを務めるクリス・ウィッティー教授は、イギリスはなお、感染を食い止める段階にあると説明。これが成功しなかった場合は、ウイルスの広がりを遅らせ、冬の間にピークが来ないようにすることだと述べた。

一方、病院を代表するNHSプロバイダーズのサフロン・コードリー氏は、医療サービスは「手一杯」の状態なので、日々の業務に「影響を及ぼさず」に新型ウイルスの大流行を制御するには追加の資金が必要だと指摘した。

シンクタンク「ナッフィールド・トラスト」のヘレン・バッキンガム氏は、10年前に豚インフルエンザが世界中で流行した時、NHSは新しい病気への対処に成功していたと語った。

しかし、医療従事者の数や病院の病床数となれば、「リソースがほとんど残っていない」のは明らかだと話した。

データ分析:ベン・ブッチャー、ウェリー・スティーヴンソン

(英語記事Sickest NHS patients 'face hours on trolleys'