特に印象的だったのは、ある時ショートステイで通っていたおじいちゃんに「俺さ、そろそろ逝くからさ、最後にどうしてもあなたにお礼が言いたくて、だから今日会いに来たんだよ。」と言われたことがありました。さらに、「俺ね、介護を受ける生活になってから、ずっと死にたいと思っていたんだよ。介護を受けることって、やっぱり恥ずかしいし、認めたくないし。だからずっと死にたいと思っていたの。でもね、あなたに出会えて、また生きたいって思えたんだよ。ありがとう。」と言われたことです。そしてそのおじいちゃんはその3日後に亡くなりました。
人生の最後に御礼が言いたい相手になれるって、凄いことですよね。人と深く関わり、存在が価値となる介護職だからこそ貰えた言葉だと思っています。

―そのおじいさんは最初からそんな仲良くしてくれたのですか?
仲はよかったです。
私が食事前におしぼりを配っていると、横向きに置いたおしぼりをおじいちゃんが縦にしたり、次に縦向きに置いてみると、今度おじいちゃんは横向きにしたりと。笑
とても遊び心のあるおじいちゃんでした。私の顔を見て「ニヤッ」と屈託のない笑顔は今でも忘れられません。

―そのおじいさんはそのとき病院に入院されていたんですか?
いえ、自宅で暮らしらしていて、ショートステイで介護施設に月2回、通っておられる方でした。

―体力的にも精神的にもきついという印象がありますが
体力も感情も五感もフルに使うので確かに大変です。でも、これほど魅力のある仕事が、大変じゃないはずがないと思っています。

―体力的なものは間違いなくきついでしょうね。
そうですね。あとは、労働環境の改善も喫緊の課題だと思います。。介護職て無意識に無理している方がけっこう多いんです。


BSフジ『にっぽんの要〜わかる・かわる 介護・福祉〜』収録の様子。
■高齢者に笑っていて欲しい社会で生きたい
―介護職のためにモデルを始めたとうかがったのですが
そうですね。介護を広めたくて、広めるために公共の電波を使いたくてというのがあります。働いているときに手遅れの状態で緊急搬送されてくる高齢者の方が多かったんですよね。褥瘡(じょくそう、一般的に言う床ずれ)が体の半分ぐらい。頭も肩も腰も、部分的に骨も見えている。そういう状態ではじめて介護の手が入るっていうケースもありました。結局、助からなかったケースもたくさん見てきたんです。

私たちは介護をするために、いろいろな知識や技術を身につけてきたのに、本当にSOSを出している人に届かなかったら意味がないなと思ったんですよね。重症化する前に、ちゃんと適切なケアをしていたら、絶対こんなふうにならなかったはずなのに。そういうのがたくさんあった。

介護業界は、いろいろな課題があるのですが、おばあちゃん、おじいちゃんたちに聞いたら、「やっぱり言えなかった」と・・・。「助けて!」って、言えなかった・・・。
たとえば、「ニキビができたんだよね。」とか、「風邪、引いちゃったんだよね。」と同じぐらいのテンションで「介護、必要なんだよね」「認知症になったんだよね」って、言えるような社会にしたいなって思いそのための発言力が欲しいなと思って(モデルを始めました)。(モデルになれば)公共の電波を使えますから。腹黒いかな・・・。

―ハードだったんじゃないですか?
そうですね。でも、モデルをやって、モデルのほうが楽しかったら、モデルにいこうと思っていたんです。でも、そうじゃなかった。本当に介護のためにとか、高齢者のためにとかで生きているわけじゃなくて、自分がただ楽しいから。自分が人生のクライマックスを生きる高齢者が笑っている社会で生きていきたいから、だからやっているわけです。そんな綺麗じゃないですよ。けっこうシンプルです。

―ちょっと介護から離れたいなとか、息抜きしたいなとか思うことは?
ないです。でも、介護から離れちゃうんですよ。モデルをやったり、講演したり、大学の先生もやっているし。なので、今は気分転換というか息抜きの場が介護の現場にもなっている。でも、最近はダイビングもしていますね。

今、こんな働き方をするとは思わなかったですね・・・。

―それは、講演されたり、モデルさんとして活躍したりということでしょうか
そうですね。人の前に立つなんて思わなかったですね。人前で講演するとは思わなかったです。

―いまやりたいことは?
ざっくり言うと、人生のクライマックスは豊かであってほしいなと思っていて・・・。だから生きる価値がある。今はストレス社会だし、中学生ですら大変です。学生から大変なのに大人になりたくない学生もたくさんいる。年代を問わず、みんな複雑な社会をがんばって生きているなかで、「生きてきてよかったな」言ってくれる100歳がいると、それだけで希望になる。そういう高齢者を増やしたいし、私もそういう100歳になりたいなと思います。

―そのために介護福祉士さんとしては、これからどんなことを?
そうですね。介護福祉士としては、現場は現場で引き続き頑張りたいです。発信者になってみて、やっぱり発信することの限界を感じていて・・・。世の中には、色んな人が色んなことを伝えたがっているじゃないですか・・・。介護とか、私の言うことだけを伝えるのは、おこがましいというか、難しいなと思うようになりました。でも、だとしたら誰にも何も伝わらなくていいから、それでも変えていける力がほしいと思い、確固たる根拠を示し、相手を説得できる人になりたいと考えるようになりました。なので今は、情報生産もできる情報発信者になりたいなと思っています。

―情報発信者、そしてその先を目指している?
そうですね。現場で自分が実践して、そこで変えたい場所を自分で研究して、それを伝えていく教育が必要だと思っています。マルチな感じになってしまうんですけどね。

本日は、貴重なお時間を頂戴して、ありがとうございました。


介護の素晴らしさについて語る、上条百里奈さん
BSフジ『にっぽんの要〜わかる・かわる 介護・福祉〜』の第5回「ごちゃまぜ介護」は、2月23日(日)に放送された。同番組では、学生たちが要介護者のお年寄りたちに喜でもらえることを考え、介護付有料老人ホーム「ウェルケアガーデン深沢」でイベントを実施した。要潤さん、上条百里奈さんが飛び入りで乱入するサプライズに加え、ものまねタレントのりんごちゃんがスペシャルゲストで登場した。

同番組は、介護や福祉の現状を知るだけでなく、その魅力を知りたい人にとって、有益な番組と言えそうだ。

■BSフジ『にっぽんの要〜わかる・かわる 介護・福祉〜』

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