いかに弱者になって戦えるか。CLに見る番狂わせの起こし方
サッカーは繰り返すが、どの競技より番狂わせは起きやすい。弱者にはどの競技にもましてチャンスは与えられている。怖がる必要は何もないのだ。下馬評はむしろ低い方が戦いやすい。W杯のレギュレーションも、後押しする。その決勝トーナメントは、延長ありとはいえ90分1本勝負だ。ホーム&アウェーで戦う90×2本=180分の戦いより、強者に戦いにくい設定になっている。
弱者がもし先制点を奪えば、強者はCLの2倍焦る計算になる。グループリーグの戦いもCLが2回戦総当たりなのに対し、W杯は1回戦総当たりだ。6試合戦うCLに対しW杯は3試合。1試合の重みは倍になる。強者には、ほぼ絶対に負けられない戦いとなる。グループリーグもトーナメント同然なのだ。
「やってみなければ分からない」。「可能性はある」。実際、メディアに出演した解説者、評論家の多くはこうした言い方でお茶を濁した。「相手をリスペクトしすぎることはよくない」という言い回しも耳にした。相手をリスペクトする行為を、自分たちを弱者と認めることだとすれば、しすぎるとは、勝てないと諦めることなのか。
そんな人は1人もいないはずだ。それでも試合の行方がわからないのがサッカーだ。90分1本勝負となれば、それこそ何が起きるか分からない。優秀な監督であれば、俄然ファイトを燃やすだろう。必死になって工夫を練ろうとするはずだ。
実際、ベルギー戦で日本は2-0とリードした。番狂わせの主役になろうとしていた。しかし日本はその時、打つ手を持たなかった。最初のメンバー交代は後半36分で2枚同時替えだった。少なくとも時間の使い方として有効ではなかった。そして3人目の交代をすることなく、ロスタイムのラストワンプレーで逆転ゴールを許した。
よくやったことは確かだが、悔いが残る試合でもあった。西野監督は試合後「打つ手が思い浮かばなかった」と述べた。こう言っては何だが。西野さんは名将になり損ねた。その時、弱者の監督は何をすべきか。その答えが散りばめられているのがCLの決勝トーナメントだ。とりわけ、弱者4チームが揃って第1戦を制した今回は、ロシアW杯の日本対ベルギー戦と似た状況にある。森保監督を筆頭に、日本の指導者は弱者の側に立って第2戦の観戦に臨んで欲しいものである。
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スポーツライター杉山茂樹氏の本音コラム。