ハイスコアのゲームが目立つ昨今のJリーグ。今季も攻撃型チームがリーグを牽引するのか。写真:サッカーダイジェスト、徳原隆元

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 J1は攻撃型主流の時代を迎えている。

 先陣を切ったのは圧倒的なポゼッションを誇る川崎で、相手を自陣に封じ込めじっくりと料理をした。だが昨年の横浜は、さらにゴールに直結するアグレッシブな姿勢を貫きリーグタイトルを奪い取った。オーストラリアから迎えたアンジェ・ポステコグルー監督は、アマチュア末期の日産自動車時代にオスカー監督が植えつけて以来続いて来た堅守を軸とするスタイルを、クラブ史上初めて覆したことになる。

 総体的な攻撃志向を映し出すのが、ここ最近の節目のゲームのハイスコアである。今年のシーズン開幕を告げるゼロックス・スーパーカップでは、横浜と天皇杯優勝の神戸が3-3、同じくPK戦にもつれ込んだ昨年のルヴァンカップ決勝も「川崎3-3札幌」、昨年終盤の横浜は4位の川崎から4ゴール、2位のFC東京からも3ゴールを奪って頂点へと駆け上がった。リスクを冒しても前線からプレッシャーをかけ、ハイラインを保ち、GKも参加してのビルドアップを試みる横浜の圧力を、引いて受け止めるのは難しい。やはり競い合うには接近した攻撃力が不可欠で、そう考えれば優勝戦線に顔を出すチームは限られる。

 現時点の攻撃力で双璧を成すのは横浜と神戸だ。特に横浜は、仲川輝人、マルコス・ジュニオールと2人の得点王を有し、しかも前半戦は最大の得点源として機能したエジガル・ジュニオが故障離脱したのに新加入のエリキがしっかりと穴を埋めた。何より目を見張るのがフロントの機動力で、勝負どころの後半戦に向けてエリキとともに名古屋からマテウスをレンタルで獲得し、ラストスパートに後押しした。就任以来2年間をかけて浸透させたポステコグルー監督の前掛かりな指針は着実に浸透しており、今年も優勝候補筆頭に挙げるのが妥当だ。

 また現状でタレント、機動力ともに横浜に勝るとも劣らないのが神戸で、ビッグネームを招聘してビジネスを軌道に乗せた後は、有力な日本人選手の補強で骨太なチームに仕上げた。Jの金満度合いでは他を凌駕しており、昨年ビジャが引退した穴は早速ドウグラスで補填。今後も夢を売り続けるに違いない。

 ただし両チームには、ACLという難敵がある。実際アジアで強さを見せつけた後に、Jの開幕では白星を掴み損ねた。またアジアへ出ていくと懸念されるのは移動の負担だけではない。とりわけ横浜の良質な助っ人が、中東諸国のクラブから狙われる可能性もある。そして最も即座に目に留まりそうなのがチアゴ・マルチンスだろう。横浜の対戦相手が必ず狙って来る背後の広大なスペースは、ほとんどこのブラジル人DFの鋭い洞察力と出足でカバーされている。攻撃のタレントが豊富なチームの中で唯一代えの効かない選手だ。

 実は横浜連覇の予想を躊躇する理由がそこにある。一方神戸の成否のカギは、イニエスタを筆頭とするベテランの助っ人選手たちが過密日程を乗り切れるかにかかっている。現実的には主力固定で二兎を追うのは無理があり、三木谷オーナーはさらに夏場にはターンオーバーが可能な戦力を整える必要が出てくるに違いない。
 
 もし横浜、神戸の両チームがスケジュールに潰された場合は、ACL不参加組から候補を探るべきだが、鹿島はザーゴ新政権の雲行きがあまりに怪しい。そうなると自然に浮上するのが王座奪回を狙う川崎になる。川崎も明らかに転換期に差し掛かっている。どうやらクラブは生え抜きでも海外志向の若手は割り切って外に出す方針らしく、未来は大卒組に託そうと補強に力を入れて来た。すでに中村憲剛を筆頭に、小林悠、谷口彰悟、車屋紳太郎、守田英正、長谷川竜也、脇坂泰斗らが基盤を築いており、今年も大学で目玉商品だった旗手玲央、三苫薫の獲得に成功した。川崎にとっては、中村憲が離脱している今年が格好の変革のチャンスと見ることも出来る。