ルーキーながら開幕スタメンを飾った藤田。しかしチームを勝利には導けなかった。(C)J.LEAGUE PHOTOS

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 生涯にたった一度しかない、ルーキーイヤーの開幕スタメン。東京Vの藤田譲瑠(ジョエル)チマはそのチャンスを掴んだが、結果は苦いものとなった。

 ナイジェリア人の父と日本人の母を持つ藤田は東京Vのアカデミーで育ち、昨季は2種登録で4試合に出場。今季からトップチームに昇格し、始動からのアピールが実って、23日、徳島との開幕戦で先発に名を連ねた。

 だが、東京Vはミスから崩れ、0‐3の敗戦を喫する。インサイドハーフの一角で起用された藤田も序盤こそ存在感を放ったが、戦況の悪化に伴った腰の引けたプレーが顔を覗かせるようになり、やがてピッチに埋もれていった。

「ミスが多く、それで相手のカウンターを度々食らうことに。自分の役割である攻撃のリズムを作れなかった」と反省の弁だ。

 藤田は、中盤でのパス捌き、さらにボール奪取力の高さが特長。攻守の連動性を高めるリンクマンとしての働きに加え、絶え間ないコーチングで周囲を動かし、集団をオーガナイズできる能力が魅力である。

「自分たちのリズムでゲームを運べていた時にカウンターから相手に先制を許し、以降、徳島のボールを持つ時間がだんだん長くなっていきました。その前にあった決定機を決められなかったのも有利な展開に持ち込めなかった要因のひとつ。1点の重みをあらためて痛感したゲームでした」

 徳島戦は劣勢に置かれるチームをコントロールする難しさを感じたゲームだったに違いない。

「みんな焦りが出て、個人で攻めにいってしまう場面が多かったですね。そのため全体が間延びし、より苦しくなっていきました。前のめりになりすぎて相手にスペースを与えてしまったので、今後はリスク管理をしっかりできるようにならないと」
 
 豊かな資質を備えるとはいえ、経験の浅いルーキーにその重い荷を背負わせるのは無理があろう。一本立ちできるまでは、周りのサポートが欠かせない。

 試合後のピッチ、藤田は大久保嘉人からパスを出すタイミング、及びパススピードについて厳しい指摘を受けた。

「嘉人さんからは、ワンテンポ早く、スピードのあるボールを出してくれれば、シュートを打つチャンスがあったと言われました。味方のフィニッシュにつながるパスをもっと増やしていきたい」

 鬼の形相で向かってくる大久保と対峙し、ビビらない若手などいるものか。大抵は縮み上がり、まともに口をきけなくなる。

 一級品のプロの洗礼だ。望んだところで誰もが受けられるものではなく、藤田は自身が恵まれた立場にいることを自覚したほうがいい。「ジョエルには期待しているから、自分の感じたことは全部伝える」と言う大久保。この苦難を乗り越えた先には、きっと見たこともない広い景色が広がっているはずだ。

取材・文●海江田哲朗(フリーライター)