「ここ数年、開幕ではスタートダッシュが切れなくて苦しいシーズンになっていた。今年は開幕でいちばん強いところとやって、勝てば自信になる。実際、勝てたのでそれはでかいと思う」(倉田秋)


倉田秋の1ゴール1アシストの活躍で、ガンバ大阪が開幕戦に勝利した

 ガンバ大阪が、2011年以来、9年ぶりにJリーグ開幕戦を白星で飾った。

 昨年の覇者・横浜F・マリノスに勝利したことは、ガンバにとって非常に大きな意味を持つ。ここ2年間は序盤から勝てずに苦しみ、そのもたつきが後半戦の残留争いに巻き込まれる要因になっていた。

 それだけにこの日のガンバからは、この一戦に懸ける並々ならぬ執念が感じられた。実際、ゲームでは選手全員が必死になって戦う姿勢を見せて勝利した。現在、もっとも強いと言われるチームに勝ったことは自信になり、勢いがつく。好スタートが切れたのは、タイトル獲得に向けてポジティブな要素だ。

 このマリノス戦は、練りに練ったガンバの作戦勝ちでもあった。

 ルヴァンカップの柏レイソル戦では、沖縄合宿から継続してきたハイプレスの練習の成果をほとんど出すことなく0−1で敗れた。危機感を感じた宮本恒靖監督は、チームとしてやってきたことをもう一度やり切ること、そしてマリノス対策として3つをポイントに挙げ、練習をしてきた。

 まず、マリノスのサイドバックを誰が見るのか、ということだった。右の松原健と左のティーラトンは、共に中央に入ってビルドアップに参加する攻撃のキーパーソンである。

 ガンバの左サイドバック、藤春廣輝は言う。

「あのふたりは攻撃を組み立て、スルーパスも出せる。フリーで持たせるとかなり危ない選手なので、誰が見るのか、練習ではそういうことを徹底していました」

 左の藤春は対面のウイング仲川輝人をマークし、右のオ ジェソクは遠藤渓太をケアすることになった。そして相手のサイドバックに関しては、倉田が松原を、小野瀬康介がティーラトンをマーク。また、藤春らサイドバックがマークした選手に対応している際の裏のスペースは、センターバックがケアしていた。

 マークする相手を決め、責任を持たせることで、選手たちは自らのタスクを果たすべく、必死になってプレーした。その結果、1失点に抑えることができた。

 2つ目のポイントだった、前線からのハイプレスも機能した。

 ハイプレスは、沖縄の1次合宿から取り組んできたガンバの今年の目玉戦術だ。90分間、前からプレスをかけ続けることを理想として、そのためのフィジカル強化と多くの練習試合をこなしてきた。

 マリノス戦でガンバの動きがよかったのは、キャンプから倉田が「きつい」ともらしていたハードな練習がベースにあったからだ。この豊富な運動量があってこそのハイプレスであり、それが見事にハマった。GKからビルドアップするマリノスだが、この日のセンターバックのひとりは、畠中慎之介ではなく伊藤槙人だった。伊藤は畠中よりはビルドアップにやや難があり、ガンバはGKと伊藤のラインを狙っていた。

 前半6分にそこにプレッシャーをかけてボールを奪い、倉田が先制ゴールを決めるのだが、それは倉田曰く「してやったり」だったという。

「前から相手をハメていくと、相手が慌てる場面があった。1点目の得点シーンもそうして生まれたし、練習でやってきたことがハマった」

 3つ目は、東口順昭からの相手の背後を突いたロングボールだ。

 マリノスは最終ラインを高い位置に上げる。そのため、背後に大きなスペースがあるが、ガンバは序盤からそこを狙いつづけ、倉田や宇佐美貴史らスピードのある選手がボールを受けてゴールに迫った。三浦弦太は「相手がロングボールを嫌がっていた」と見ていたが、それを愚直に続けたことが追加点につながった。

 34分、東口のロングボールに対して、倉田は蹴ってから出ても抜けると思ったという。タイミングとしてはワンテンポ遅れて飛び出したためオフサイドにはならず、フリーで持ちあがって矢島慎也のゴールをアシストした。

 マリノス対策が功を奏し、ガンバは優位に試合を進めた。

 練習の成果を実戦でしっかりと出せるのは選手個々に力がある証拠だが、この日のガンバはさらに違いを見せた。先制ゴールを挙げたあと、マリノスのマルコス ジュニオールがトップ下を離れて中盤をフラフラと動くのが目立つようになると、遠藤保仁が宮本監督に伝え、井手口陽介を下げてダブルボランチに変更して対応した。

 選手たちは、その状況に応じて自分たちでシステムを変更して対応していった。倉田は、「試合中の変化は難しい」と言いながらもやれたことに大きな意味があるという。

「試合中は自分らで考えてやれと(監督に)言われているんで、相手を見て、その都度いろいろ変えていった。それは簡単じゃないけど、強くなるためには今後もそうやっていかないといけない」

 マリノス対策とシステム変更で、前半はほぼ完璧な試合運びを見せた。

 しかし後半、相手にボールを保持され、押し込まれた。昨年までのガンバであれば1点取られたあと、立て続けに失点していただろう。

 だが、選手が必死になって体を張り、持ちこたえた。昨年まではきれいにサッカーして勝つというような空気が感じられたが、この日は泥臭く戦い、勝ちを獲りにいく姿勢を見せた。

「死にもの狂いで勝てた。これを1年間やっていく必要がある」

 こうした倉田のコメントからも、今年のガンバは違う、というところが見えた。だが、「課題は多い」と言う。引っ掛かっていたのは後半の試合展開だ。マリノスに一方的に押し込まれ、守備に忙殺され、失点した。

「内容的には後半が……。相手にほぼボールを握られたし、一方的に攻められた。守備をしてカウンター一発は自分らの理想ではないので、こういう強い相手にもボールを保持して圧倒できるようにしていきたい」(倉田)

 それでも、戦っている選手が現状に満足せず、さらに理想のスタイル、上のレベルを見据えている状態は、まだ伸び代があるということだ。その成長を紡いでいけば、強いガンバのスタイルが見えてくる。

 そんなに風に思わせてくれる開幕戦の勝利だった。