「パワハラ上司は一発で退場」が実現した仕組み/アマゾン元幹部に聞く

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 2020年6月、「パワハラ防止法」が大企業に施行される(正式には「改正労働施策総合推進法」)。中小企業は2022年4月施行だ。パワハラ防止策を企業に義務づける法律だが、実際には、各企業が上司―部下の関係性を変えなければダメだろう。

 そんな中、「うちではパワハラしたら一発で退場です」と言うのは、アマゾンジャパン元経営会議メンバーの星健一さんだ。星さんの著書『Amazonの絶対思考』を読むと、そもそも上司の役割や評価システムが、一般の日本企業とはずいぶん違うようだ。「アマゾン流が正解とは言い切れませんが」という星さんに、話を聞いた。

◆上司と部下は毎週必ず、30分以上の1対1ミーティング

――上司と部下の関係やマネジメント方法で、特徴的なことはありますか?

星健一さん(以下、星):上司によってやり方はちがって、標準化されているわけではありません。ただ、ひとつ義務づけられているのが、上司と部下は毎週必ず1回、1対1のミーティングを30分以上持つ、ということ。これは「1on1」と呼ばれています。

――上司と1対1を週1回!話すことあるんですか?

星:「1on1」で上司と部下が何を話すかと言うと、仕事の進捗報告だったり、困っていることや相談事だったり、1か月に1回くらいは個人目標について話したりもしますね。「そろそろ、1か月たつから、このくらいまでは到達しておきたいね」とか、「何か困ったことある?」「何かサポートできることがある?」といったやりとりをします。

――人事評価はやっぱり、目標達成できたかどうかで判断するんですか?

星:最終的に年間目標を到達できたかどうかは、年度末に上司と部下が話し合うわけですが、アマゾンではさらに「360度評価」を導入しています。100%公平な評価というのはなかなか難しいですが、かなり客観性の高い評価システムになっていると思います。

◆「360度評価」でパワハラ、セクハラはすぐバレる

――「360度評価」というのは、上司だけでなく、同僚や部下からの評価も聞くというものですよね?

星:そうです。たとえば、私を評価するのは上司ですが、その上司は私の周りの人間――部下や同僚、仕事で関係した他部署の人など、20人くらいのフィードバックをとる。それを見て、総合的に評価をするんです。
常に360度評価なので、一方にだけいい顔をして仕事をすることはあり得ません。上司にはいい顔をするけど、部下に対しては横柄…なんてよく聞く話ですが、そういう人間はいちばん評価が低くなります。

――嫌いな上司を陥れることができますね(笑)。

星:でも、いろいろな人からフィードバックをとるので、一人だけおかしなことを言っていると、逆に何かあるだろうとわかります。こうした評価システムがあるとヘンな“政治”が働かないんですね。たとえば、どの会社でも「なんでこんなに仕事のできないヤツが部長なんだ?」みたいなことってありますよね。

――ありますあります。

星:そういうのは、アマゾンでは一切ありえない。仕事のできない人が役職に就くことはないので。全員とは言いませんが、部下は上司を尊敬していると思いますよ。尊敬される人しか残れないので。

――360度評価だと、パワハラはすぐバレそうですね。

星:パワハラしたら、もう、一発退場です! パワハラやセクハラに対してはすごく厳しいです。会議で感情的に怒鳴ったら、それだけで警告でしょうね。私もありましたが…。
ハラスメントについては相談窓口があったり、人事所属の「HRパートナー」と呼ばれている人が各事業部に必ず1人ついているので、相談しやすい環境は整っていると思います。

「HRパートナー」は、各事業部の人材的な問題を見る役割です。たとえば、どの人が高いパフォーマンスで昇進が近いとか、こんな問題が部内で起っているとか。極めて身近に人事部がいてサポートしてくれる感じですね。